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いつも側にいてくれたね  作者: 摘美花-ツグミカ-
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ねじれる噂 **夏芽**

更衣室で着替えようと思いながらも手が動かなくて。


直生、早く来て。


直生が来てくれたら遥生と直生を見間違えたんだと分かってもらえる。


「湯川くん! 聞いたよ。可愛い彼女と手繋ぎデートしていたんだって?」


「マジないよ。湯川くんに彼女がいるなんて、ここにいる全員知らなかったんだからー」


そんな女の子たちの会話が聞こえたから、直生か遥生が来たんだと思って、更衣室のカーテンを少し開けて撮影室を覗いてみた。


そこには直生が立っていて、女の子たちに囲まれている。


「ごめん、僕は遥生じゃないから」


「湯川くん、何言ってるの? 噂になってるよ。さっきまで一緒にいた子は彼女なんでしょ?」


「えっ? 遥生が女の子と一緒にいたの?」


「湯川くん面白いこと言うね。もう何人も見てるんだよ。いまさら隠そうとしたって無駄だよ」


「えっと。僕は遥生じゃなくて双子の兄で・・・」


直生が困り果てているから黙って見ていられないよ。


「直生っ!」


そこにいた全員が私の方へ振り向いた。


「あっ! 夏芽。そこにいたの。探したよ」


女の子たちが私と直生を交互に見て、私に質問してくる。


「直生、って誰?」


「湯川くんとあなた、知り合いだったの?」


直生は全く何が何だか理解していないようなので、私が説明しなきゃだめだよね。


「あのね、そこにいるのは湯川直生です。湯川遥生の双子のお兄さんなの。遥生とそっくりだからよく間違えられるんだよね。ね、直生」


「う、うん、そうなんだよね。僕は遥生じゃないよ」


『うっそ―! 湯川くんって双子だったの?』


女の子たちが全員驚いて。


それはそれでまた大騒ぎになってしまった。


「夏芽、そんな所にいないで出てきてよ」


直生が助けてっていう顔で私を見るから、まだ着替えていない撮影用のドレスのまま直生の前に出て行った。


「うわ、夏芽。どうしたのその衣装。とっても可愛い」


やった! 直生にまた可愛いって褒められた。


「うふふっ。直生ありがとう。褒めてもらって嬉しい」


私と直生の会話を唖然と見ていた女の子たちが黙っているはずもなく、


「本当に湯川くんの双子さんなんですか?」


「ええーっ、双子揃って超イケメン」


やっぱり直生もすぐに人気者になるね。


「そっか、それならあなたは湯川くんのお兄さんの彼女さんなんだね」


え? 私が直生の彼女?


「違います。私は直生の彼女じゃないですよ。誤解です」


「そうなの? じゃあ、お兄さんは今フリーなんですか?」


積極的な女の子が直生に迫っている。


「い、いや。フリーとかって。えっと・・・。」


直生が女の子たちに囲まれて返事に困っていると、その中の一人が


「でもさ、弟の湯川くんには彼女がいるしさ。もうお兄さんの方がいいよね」


「遥生には彼女なんていないよ。聞いたこともないし、それに遥生は・・・」


直生はそう言って私の方をチラっと見た。


その直生の目線を女の子たちが見逃すはずもなく、皆が一斉に私を見る。


「お兄さん、違いますよ。湯川くんの彼女はこの子じゃなかった」


「そうだよね、すごく良い雰囲気のお似合いの2人だったよね」


何人からも私は否定されて、そしてメイクをしてくれた子からも


「あなた今日はまだ湯川くんに会っていないんだよね?」


確かに今日はまだ遥生に会っていないし見かけてもいない。


「う、うん。遥生には会っていないけど」


こんなにたくさんの人が遥生と彼女が一緒にいる所を目撃しているなら。


それは誤解なんかじゃないのかな。


本当に遥生には彼女が・・・。


私の心が揺れたことを直生だけは察してくれた。


「夏芽、僕は分かっているから。大丈夫だから。ね、だから泣かないで」


「私、泣いてなんかないよ」


「そんな顔しないで、夏芽」


私、涙なんて出ていないし悲しくなんてないもん。


悲しくなんて。


どうして直生は私の気持ちが何でも分かるの。


直生にも遥生にも私の気持ちなんて言ったことがないのに。


私が遥生のことを好きだって、どうして直生は分かるの。


「な、おき・・・どう、して。私、わたし」


言葉が上手く出ない。


何かを喋ったら涙が出てきてしまう。


「夏芽、大丈夫だから。何かの間違いだから。だから泣かないで」


そう言って直生は私の泣き顔を包み込むように抱きしめて皆から隠してくれた。


「夏芽、とにかく遥生を探そう。本人に会って確かめよう」


「うん。そうだね」


直生には廊下で待っていてもらい、衣装から着替え髪もシニヨンを作り直して、私たちは1年F組の教室を後にした。



「あれ? あの子。さっき髪を下ろしていたし衣装を着ていたから見間違えてたのかな。湯川くんと一緒にいた子もシニヨンだったし、あんな感じの服を着ていたかも」


「さっきはあの2人は付き合ってないって否定していたけど湯川くんのお兄さんとあの子が付き合ってるんじゃないの」


「そうだよね、あの2人が手を繋いで歩いてたんだね。今だって私たちの前で抱き合ってたもん」


「そっか。そうだよね、湯川くんにはホストの衣装を着てもらってたはずだもん。やだ、私たち湯川くんとお兄さんを間違えたのかもね」



こうして今度は直生と私の噂ができあがった。

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