エピローグ そして未来へ
――数年後。
ヴァイスラント帝国には、誰もが笑顔で暮らせる穏やかな日々が訪れていた。
皇宮の庭園。
暖かな陽光が降り注ぎ、色とりどりの花々が優しい風に揺れている。
皇帝エルンストと皇妃ミアは、手を取り合いながらゆっくりと庭園を歩いていた。
その前を、一人の小さな皇女が楽しそうに駆け回っている。
「お父様!」
「お母様!」
無邪気な笑顔。
澄んだ笑い声。
その姿に、エルンストとミアも自然と笑みを浮かべた。
「転ばないように気を付けるんだよ」
「はーい!」
元気いっぱいの返事が庭園へ響き渡る。
少し離れた場所では、皇帝補佐となったクラウスが穏やかな表情で、その光景を見守っていた。
「平和とは、こういうものなのだな……」
その隣では、皇太妃クラリッサが愛しい孫娘へ優しい眼差しを向けている。
「本当に大きくなりましたね」
その表情には、もう悲しみの影はなかった。
さらに少し後ろでは、クロエが皇女を優しく見守っていた。
「皇女殿下、お転びになりませんよう、お気を付けください」
「もう、クロエったら!」
皇女はくすくすと笑いながら駆け回る。
その姿に、クロエも優しく微笑んだ。
「ふふっ……陛下も幼い頃は、今の皇女殿下と同じように駆け回っておられましたね」
エルンストは少し照れくさそうに苦笑する。
「……その話は、ほどほどにしてくれ」
「あら、事実でございますよ」
クロエの言葉に、その場は温かな笑いに包まれた。
青空には、誰にも見えない二つの小さな影が仲良く舞っていた。
『幸せそうだね!』
『だから言っただろ!』
リリとアルは顔を見合わせ、嬉しそうに笑う。
ミアはそっと空を見上げ、優しく微笑んだ。
「ありがとう」
二人の妖精は満面の笑みで何度も頷く。
エルンストはミアの手をそっと握り返した。
「これからも共に歩もう」
ミアも優しく微笑み返す。
「はい」
二人は手を取り合い、未来へ向かってゆっくりと歩き始める。
青空の下、皇女の楽しそうな笑い声が庭園いっぱいに響き渡った。
こうして、婚約破棄されて捨てられた令嬢でしたが、隣国の冷徹皇帝陛下と共に、誰もが笑顔で暮らせる帝国を築いていくのでした。




