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婚約破棄されて捨てられた令嬢ですが、隣国の冷徹皇帝陛下がなぜか私を離してくれません!?  作者: Atelier Lotus


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202/212

第199話 世界が見守る結婚式

 暖かな陽光が帝都シュヴァルツブルクを優しく照らしていた。


 その日、ヴァイスラント帝国は建国以来かつてないほどの祝祭ムードに包まれていた。


 皇帝エルンストと皇妃ミア。


 二人の結婚式が執り行われる日である。


 皇宮へ続く大通りには朝早くから多くの国民が詰めかけ、色鮮やかな花々と祝賀旗が街を華やかに彩っていた。


「皇帝陛下、万歳!」


「皇妃陛下、万歳!」


「お二人とも、おめでとうございます!」


 帝都中に祝福の声が響き渡る。


 一方、皇宮では世界各国から訪れた王侯貴族たちが次々と到着していた。


 北方諸国。


 南方連合。


 西方自由都市同盟。


 東方諸王国。


 エトワール大陸各地の要人たちが、この歴史的な婚礼へ参列するため、一堂に会していた。


 ローズフィールド王国からも国王夫妻をはじめ、第二王子ヘンリーと、その妃メアリーが姿を見せる。


 暖房器具事件の真相は、すでに世界中へ知れ渡っていた。


 会場のあちこちでは、小声で囁き合う声が聞こえてくる。


「皇帝陛下は本当に無実だったのか」


「国家反逆罪さえ捏造だったとは……」


「帝国の司法は見事だ」


「まさか宰相が首謀者だったとはな」


 誰もが驚きと感嘆を隠せない。


 この結婚式は、一人の皇帝と一人の皇妃の婚礼であると同時に、帝国が再び平和を取り戻したことを世界へ示す祝典でもあった。


 一方その頃。


 皇宮の一室では、純白の花嫁衣装に身を包んだミアが静かに鏡の前へ座っていた。


 その隣では、皇太妃クラリッサが優しい笑みを浮かべながら、純白のベールを丁寧に整えている。


「本当に綺麗ですよ、ミアさん」


 穏やかな声に、ミアは少し照れたように微笑んだ。


「ありがとうございます、お母様」


 その一言に、クラリッサは目を細める。


 そして、ミアの両手をそっと包み込み、慈しむように微笑んだ。


「もう、あなたは私の娘です」


 その一言だけで、ミアの胸に積もっていた寂しさが、静かに溶けていくようだった。


 気づけば、一筋の涙が頬を伝っていた。


「……はい、お母様」


 震える声でそう答えると、クラリッサはミアをそっと抱き寄せる。


「幸せになるのですよ」


「はい」


 短い返事だった。


 けれど、その一言には、これまでの悲しみを乗り越え、新しい家族と共に歩んでいく幸せが込められていた。


 一方、別室では正装に身を包んだエルンストが静かに窓の外を眺めていた。


 その背後には、正装姿のクロエが静かに控えている。


「陛下」


「いよいよですね」


 エルンストは穏やかに頷いた。


「ああ」


 短い返事だった。


 しかし、その表情には穏やかな笑みが浮かんでいる。


 そんな姿を見つめ、クロエも優しく微笑んだ。


「先帝陛下も、きっと今日の日をお喜びになっておられることでしょう」


 その言葉に、エルンストは静かに目を閉じる。


「……そうだな」


 その時、部屋の扉が開いた。


「邪魔をしてもいいか?」


 クラウスだった。


 クロエは一歩下がり、恭しく一礼する。


「それでは、私は失礼いたします」


 そう言い残し、静かに部屋を後にした。


 入れ替わるようにクラウスが弟の前へ歩み寄る。


「緊張しているか?」


 兄の問いに、エルンストは小さく笑う。


「少しだけ」


 その答えを聞いたクラウスも穏やかな笑みを浮かべた。


「お前にも、そんな顔ができるようになったんだな」


 そう言うと、弟の肩へそっと手を置く。


「今日は、誰よりも幸せになれ」


 エルンストは静かに頷いた。


「ありがとうございます、兄上」


 兄弟は穏やかな笑みを交わす。


 かつて法廷で向かい合った二人の間には、もう迷いも隔たりもなかった。


 やがて皇宮中へ、祝福の鐘が高らかに鳴り響く。


 結婚式の始まりを告げる鐘である。


 その鐘の音を聞きながら、大聖堂の天井近くでは、誰にも見えない二つの小さな影が嬉しそうに羽を羽ばたかせていた。


『いよいよだね!』


『やっとこの日が来たな!』


 リリとアルは顔を見合わせ、満面の笑みを浮かべる。


『今日は最高の日にしよう!』


『もちろんだ!』


 二人は祭壇へ向かうエルンストとミアを、誰にも見えないまま優しく見守っていた。


 世界中が見守る中、皇帝エルンストと皇妃ミアは、新たな人生への第一歩を踏み出そうとしていた。

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