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婚約破棄されて捨てられた令嬢ですが、隣国の冷徹皇帝陛下がなぜか私を離してくれません!?  作者: Atelier Lotus


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198/199

第195話 責任転嫁

 帝国最高裁判所。


 最終公判。


 法廷は、重苦しい沈黙に包まれていた。


 決裁指示書。


 管理台帳。


 文書鑑定報告書。


 会計監査報告書。


 関係者たちの証言。


 そして、極秘保管庫から発見された命令書。


 積み重ねられた証拠は、すべて一人の人物を指し示していた。


 ――宰相グレゴール。


 裁判長は静かに問い掛ける。


「宰相グレゴール」


「これらの証拠について、なお異議はありますか」


 グレゴールは険しい表情のまま沈黙を続けていた。


 法廷中の視線が、一斉に被告席へ集まる。


 長い沈黙の末、グレゴールはゆっくりと顔を上げた。


「……ある」


 低く響く声。


 そして次の瞬間、グレゴールは鋭くレオンハルトを指差した。


「すべてはレオンハルトの独断だ!」


 法廷が大きくどよめく。


 レオンハルトは驚愕の表情でグレゴールを見つめた。


「宰相閣下……」


 震える声が漏れる。


 しかし、グレゴールは冷たい眼差しを向けたまま、容赦なく言い放った。


「私は何も知らなかった」


「暖房器具計画の改竄も、公文書の差し替えも、会計帳簿の改竄も、すべてレオンハルトが勝手に行ったことだ」


「私は報告を受けただけにすぎん」


 その言葉に、法廷は騒然となる。


 誰もが耳を疑った。


 長年、自らの右腕として重用してきた外務大臣を、保身のために何の躊躇もなく切り捨てたのである。


 レオンハルトは顔面を蒼白にし、言葉を失った。


「……そんな」


 信じ続けてきた主君。


 命令に従い続けてきた相手。


 そのグレゴールが、今、自分一人へすべての責任を押し付けようとしている。


 レオンハルトの拳は、小刻みに震えていた。


 クラウスは二人を静かに見つめる。


 その瞳には、深い失望の色が浮かんでいた。


 裁判長は法槌を静かに打ち鳴らす。


「法廷内は静粛に」


 しかし、法廷のざわめきは容易には収まらない。


 帝国を長年支えてきた宰相が、自らの罪を逃れるため、忠実な部下へ責任を押し付けた。


 その光景は、法廷にいるすべての者へ大きな衝撃を与えていた。


 そして、その時だった。


 俯いていたレオンハルトが、ゆっくりと顔を上げる。


 その瞳から迷いは消え、代わりに静かな決意が宿っていた。


 帝国最大の陰謀は、今まさに内側から崩れ始めようとしていたのである。

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