表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄されて捨てられた令嬢ですが、隣国の冷徹皇帝陛下がなぜか私を離してくれません!?  作者: Atelier Lotus


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
181/204

第178話 影武者

 深夜零時。


 特別拘置棟は静寂に包まれていた。


 巡回する看守の足音だけが、石造りの廊下へ規則正しく響いている。


 拘置室では、エルンスト、ミア、クロエの三人が最後の準備を進めていた。


 クロエは静かに頷く。


「では、始めるといたしましょう」


 ミアは小さく息を吸い込み、そっと囁いた。


「リリ、アル」


「お願い」


『任せて!』


 リリが元気よく返事をする。


『行くぞ』


 アルも静かに応えた。


 二人の身体が、淡い光に包まれ始める。


 その光は、ミアにしか見えない。


 やがて光が静かに収まると、ミアは思わず息を呑んだ。


「すごい……」


 目の前には、自分と寸分違わぬ姿となったリリ。


 そして、エルンストと見分けがつかないほど完璧に変身したアルが立っていた。


 髪。


 瞳。


 声。


 服装。


 立ち居振る舞い。


 そのすべてが本物そのものだった。


 エルンストはミアの表情から成功を察する。


「うまくいったようだな」


「はい」


 ミアは微笑んだ。


「私でも見分けがつかないくらいです」


 クロエも満足そうに頷く。


「これなら十分ですな」


「誰にも気付かれますまい」


 続いてクロエは、静かに杖を掲げた。


 足元へ複雑な魔法陣が広がる。


 幾重もの魔法文字が拘置室全体を包み込み、淡い光が壁や床へ吸い込まれていった。


「結界術式――幻影重層」


 低く響く詠唱。


 拘置室全体へ、認識阻害の結界が静かに張り巡らされる。


「これで外から見れば、お主たちは今までどおり拘置室にいるように映ります」


 ミアは思わず感嘆の声を漏らした。


「すごい……」


 クロエは穏やかに微笑む。


「看守が覗こうと、魔力を探知しようと違和感は覚えますまい」


「妖精たちの変身能力と、この結界術式。」


「その二つが揃って初めて成り立つ作戦なのです」


 その時だった。


 コンコン。


 拘置室の扉が静かに叩かれる。


「異常はありませんか?」


 巡回中の看守だった。


 ミアは思わず身体を強張らせる。


 しかし次の瞬間。


 リリとアルは何事もなかったかのように拘置室の中で自然に振る舞い始めた。


 看守は小窓から室内を確認する。


「異常なし」


 小さく呟くと、そのまま足音は遠ざかっていった。


 三人は静かに安堵の息を吐く。


「成功ですな」


 クロエが穏やかに微笑む。


 エルンストは力強く頷いた。


「ああ」


「これで動ける」


 ミアも力強く頷く。


「行きましょう」


 クロエは拘置室の壁へ静かに手を添えた。


 すると結界の一部が音もなく揺らぎ、隠されていた通路がゆっくりと姿を現す。


「ここから先は時間との勝負です」


「真犯人が証拠を消し去る前に、必ず見つけ出しましょう」


 ミアは最後にリリとアルを見つめた。


『任せて!』


 リリは満面の笑みで頷く。


『お気を付けて』


 アルも静かに微笑んだ。


 その声は、ミアにしか聞こえない。


 ミアは優しく微笑み返す。


「ありがとう」


 エルンストとクロエは何も言わず、その様子を静かに見守っていた。


 そして三人は、闇へと続く隠し通路へ静かに足を踏み入れる。


 こうして、誰一人として気付くことなく極秘作戦は開始された。


 拘置棟には影武者を残し、本物のエルンストとミアは闇夜へ姿を消す。


 帝国最大の陰謀を暴くための極秘捜査が、今まさに静かに幕を開けようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ