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婚約破棄されて捨てられた令嬢ですが、隣国の冷徹皇帝陛下がなぜか私を離してくれません!?  作者: Atelier Lotus


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第177話 極秘作戦

 第三公判を終えた、その夜。


 帝都シュヴァルツブルク。


 ヴァイスラント帝国最高裁判所、特別拘置棟。


 静まり返った一室では、エルンスト、ミア、クロエの三人が向かい合っていた。


 裁判の流れは変わった。


 三人の潔白は大きく認められ、疑惑の矛先は事件を計画した人物へと向き始めている。


 しかし、決定的な証拠はまだ見つかっていない。


 このままでは、真犯人に証拠を隠滅される恐れがあった。


 重苦しい沈黙を破ったのは、クロエだった。


「ここから先は、裁判を待つだけでは勝てませんな」


 老魔導士は静かに二人を見渡す。


「真実は、こちらから掴みに行かねばなりません」


 エルンストは静かに頷いた。


「だが、我々は拘置中だ」


「外へ出ることはできない」


「普通ならば、そうですな」


 クロエは穏やかに微笑む。


「ですが、一つだけ方法がございます」


 そう言うと、クロエはミアへ視線を向けた。


「ミア。」


「以前、お主は妖精には人へ姿を変える力があると話してくれましたな」


 ミアは驚いたように目を見開く。


「……はい」


 その言葉を聞いたリリとアルは、ミアの肩の上で顔を見合わせた。


『えっ?』


 リリが目を丸くする。


『私たちのこと?』


『なるほどな』


 アルは腕を組み、小さく笑った。


『そういう作戦か』


 クロエは静かに続ける。


「その力を、ぜひ借りたいのです」


「リリにはミアへ。」


「アルには陛下へ。」


「それぞれ、お姿を変えていただきたい」


 部屋が静まり返る。


 ミアは思わず息を呑んだ。


「それって……」


 クロエはゆっくりと頷く。


「拘置棟には、お二人の影武者を残します」


「そして、本物の陛下とミアには、密かに拘置棟を抜け出していただきます」


『影武者作戦だ!』


 リリが嬉しそうに羽を震わせる。


『面白そうじゃねぇか』


 アルも口元を緩めた。


 ミアは小さく微笑み、誰にも聞こえない声で語り掛ける。


「リリ、アル……力を貸してくれる?」


『もちろん!』


 リリは満面の笑みで頷く。


『任せろ』


 アルも力強く答えた。


 エルンストは、その様子を静かに見つめる。


「妖精たちは、何と?」


 ミアは優しく微笑んだ。


「任せてほしいそうです」


 クロエも満足そうに頷く。


「実に心強い返事ですな」


 しかし、ミアは少し不安そうな表情を浮かべた。


「そんなこと、本当にできるのでしょうか……」


 クロエは穏やかに笑う。


「案ずるでない」


「できます」


「この拘置棟の結界術式は、わしが設計に携わりました」


「術式には、ごく僅かな隙があります」


「そこを利用すれば、誰にも悟られることなく外へ出られます」


 エルンストは静かに問い掛ける。


「外へ出た後は?」


 クロエの表情が引き締まる。


「真犯人の証拠を探します」


「裁判所の再精査だけでは間に合いますまい」


「相手もまた、証拠隠滅へ動き始めるはずです」


 その言葉に、部屋の空気が一変した。


 守りの裁判は終わった。


 ここからは、自ら真実を掴みに行く戦いである。


 ミアは静かに拳を握る。


「私も行きます」


「もう守られているだけではありません」


「私も、この事件の真実を見つけたいです」


 エルンストも力強く頷いた。


「ああ」


「帝国の未来のためにも、この陰謀を終わらせよう」


 クロエは満足そうに微笑む。


「その意気です」


「では、作戦開始は今夜」


「真実を取り戻すための反撃を始めるといたしましょう」


 こうして、誰にも知られることのない極秘作戦が動き始めた。


 拘置棟には影武者を残し、本物のエルンストとミアは闇夜へと姿を消す。


 帝国最大の陰謀を暴くための極秘捜査が、今まさに幕を開けようとしていた。

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