表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄されて捨てられた令嬢ですが、隣国の冷徹皇帝陛下がなぜか私を離してくれません!?  作者: Atelier Lotus


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
116/200

第113話 忍び寄る陰謀

 深夜。


 帝都は静かな雪に包まれていた。


 昼間の賑わいが嘘のように街は眠りにつき、白く積もる雪だけが月明かりを淡く照り返している。


 その頃。


 帝都の一角に建つ、とある名門貴族の屋敷では、再び密かな会合が開かれていた。


 重厚な扉は固く閉ざされ、暖炉の火だけが静かに揺らめいている。


 円卓を囲むのは十数名の保守貴族たち。


 誰もが低い声で言葉を交わし、その表情には油断の色はなかった。


 やがて、一人の老貴族が静かに周囲を見渡し、小さく頷く。


「順調です」


「皇兄殿下は、我らの話へ耳を傾けてくださるようになりました」


 別の貴族が薄く笑みを浮かべる。


「さすがは殿下だ」


「誠実なお方ゆえ、『帝国のため』という言葉を疑おうとはなさらない」


 その言葉に、室内の空気がわずかに緩んだ。


 しかし、一人だけ表情を変えない男が静かに口を開く。


「焦るな」


「殿下を操ろうなどと思うな」


「我らが欲しいのは、人形ではない」


 低く、よく通る声だった。


 部屋は再び静まり返る。


「殿下には、最後まで善人でいていただく」


「だからこそ価値がある」


「我らは、ほんの少し背中を押すだけでよい」


 誰一人として反論しなかった。


 その言葉の意味を、この場にいる全員が理解していたからである。


 一方その頃。


 皇城の一室では、クラウスが机に向かい、一枚の書類を静かに見つめていた。


 そこには、暖房器具の普及によって仕事を失った商人や職人たちの名と、彼らへの支援策が細かく書き記されている。


「何とかできないものだろうか……」


 クラウスは小さく呟いた。


 民を救うことは大切だ。


 しかし、その変化によって苦しむ者たちもまた、帝国の民である。


 その両方を救う道はないのだろうか。


 彼は真剣に考えていた。


 そこに打算はない。


 権力への執着もない。


 ただ、この国を少しでも良くしたい。


 その一心だけだった。


 だからこそ――。


 その善意は、利用されようとしていた。


 同じ頃。


 魔導研究室では、エルンスト、ミア、クロエが新たな魔導具について楽しそうに語り合っていた。


 机いっぱいに広げられた設計図。


 並べられた魔法石。


 新しい発想が次々と飛び交う。


『次は何を作るのかな!』


 リリは机の上を元気いっぱいに飛び回る。


『きっとまた、みんなが笑顔になるぞ!』


 アルも胸を張って笑った。


 その様子にミアはくすりと笑みをこぼし、エルンストもわずかに口元を緩める。


 研究室には笑い声が絶えなかった。


 そこには疑念も陰謀もなく、未来への希望だけが満ちていた。


 しかし、その穏やかな時間とは裏腹に、帝国の歯車は静かに軋み始めている。


 光が人々を照らせば照らすほど、その足元には濃い影が生まれる。


 誰も悪意から動いているわけではない。


 帝国を想う心。


 民を想う心。


 貴族を想う心。


 それぞれが掲げる「正義」は、少しずつその形を違え始めていた。


 黒幕たちは、最後の準備を進めていた。


 クラウス自身には、陰謀へ加担しているという自覚はない。


 それでも、その小さな心の隙は、確かに利用され始めていた。


 光が大きくなったからこそ生まれた闇。


 こうして、ヴァイスラント帝国を揺るがす新たな戦いの幕が、静かに上がるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ