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【第2部開始!】サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第1部 サブストーリー集

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第99話 新たな物語の始まり

 大地の月十月一日。私たちは荷造りをしていた。


 このあとすぐにグラーシア領へ移動する。ライガンのメンバー証も用意済み。


「ミカエラ。エレン。ライガン。それとティアとレイ。準備いい?」


「大丈夫そう?」


 メウスの言葉に私が重ねる。それに全員が頷き車に乗り込んだ。


 天気は晴れ。それも雲一つない快晴。大地の月の空は基本こういうことが多い。


 雨量も少なく、作物も育たない。だけど、雨を必要としないものは沢山獲ることができる。


「ミカエラ。みんな。これ、十日分の弁当」


「ありがとうお母様。では行ってきます」


 私は弁当を空間の中に入れる。場所を占拠しない空間魔法が非常に便利だった。


「ちゃんと、帰ってくるのよ」


「はい。では、行ってきます」


「『行ってらっしゃい!』」


 メウスの運転で車が動きだす。まずはベルンライト領を経由しないといけない。


 情勢のことはいくつか聞いてある。どうやら、ブライアント領からのルートは警備が厳重らしい。


 つまり、メンバー証であるネックレスがあっても入れない可能性がある。


 メウスの意見としては、グラーシア領とブライアント領は犬猿の仲のようで。


 車はどんどん南下していく。こういう時こそ、飛行魔法を使えばいいのに……。


「なんで飛行魔法を使わないの?」


「それはね……、ちょっとね……」


 さすがにこの人数は無理があるらしい。ライガンに協力を求めてみるけど、彼は飛行魔法を使えないようで。


 結局一番の足になるのは、この車だけ。だけど、初めて王都に行った時よりは楽だった。


「ベルンライト領に入ったら、そこから西に移動するよ。グラーシア領は南西にあるからね」


「シャーロット領とは正反対の位置なんだね」


「そうだね。ライガンも行くのは初めて?」


 メウスがライガンに聞く。すると彼は頬を指で掻きむしった。


「いや、行ったことはありませんね……。わたくしも興味はあったのですが……入れさせてもらえず」


「そうなんだ……」


 車は順調にベルンライト領へ入っていく、そこから西に進んでいった。


 お昼の時間。お母様がなぜ十日分の弁当を用意したのか。


 それは、配分がエレンに傾いているから。


 彼は一人で数人分食べてしまう。ちなみに、今の時期が通常の倍入るらしい。


「いただきます!」


 十日分の食事。全部で五十食分。内訳は、エレンに二十五食。ライガン二十三食。私とメウスは一回分。


 食事は約三十分ほどで終わる。再び車に乗ると、グラーシア領の境界門に向かって進み始めた。


 ◇◇◇東京都◇◇◇


「おい、工藤! 工藤起きろ!」


「う、うぅん……」


「起きないと講義終わっちまうぞ!」


 講義……。講義……。伏せた顔を上げる。そこには、大学の広い講義室。


 俺は寝てしまっていたようだ。工藤大輝。二十歳。


 自分の最愛の妹、美香を失ってから、俺の兄弟の仲は複雑に絡み合っていた。


 ここは、国立大学付属の小中高一貫校。俺は小学校の時からお世話になっていた。


 とはいえ、ここは国立というのもあり、小学校入学試験がある。倍率も非常に高い。


「工藤。ほんと最近笑顔ないよな……。ここしばらくお前が笑ってるとこ見ていないぞ?」


「あ、ああ……。ちょっとな……」


 しばらく前。あのベッド神が美香と合わせてくれた。


 これが現実に起きたこととは、正直思えない。だけど、そこにはしっかり美香がいた。


 俺は、そんな彼女が、妹が羨ましかった。


 どんな時でも冷静で、誰も傷つけない。そんな彼女が、ものすごく自慢で、心の支えだった。


 だけど、彼女をある事件で失ってからは、まるで心が崩壊したように……。


 救えなかった俺のせいだ。あの時俺が……。


 ――――――――――――――――――


「ぐへへ。引っかかったな! こっちにはこいつがあんだよぉー!」


「お兄ちゃん!」


 サバゲーで美香は襲われた。相手が持っていたのは、所持が禁止されているはずの拳銃。


 俺は動けなかった。助けたい気持ちよりも、恐怖に押さえつけられた。


 ――バン!


 発砲音。それを、美香は左胸で受けてしまった。一瞬だった。


 たった一つの尊い命が、陽炎のような炎が、一回吹いた風だけで消えてしまった。


 ――――――――――――――――――


「美香……」


 助けられなかった自分が情けない。もっと、俺が強ければ……。


「お、おい! 工藤あれを見ろ!」


 俺の友人である大学生が、上空を指さす。だけど、何もない。


「何もないが……」


「いやいや、外を見ろって!」


 この大学には、同じ敷地内に高校と中学校がある。ちなみに、小学校は別の敷地だ。


 俺は講義室の外を見る。窓が狭すぎて、上空がよく見えない。


「もしやおれ、夢でも見てんじゃないか?」


「は?」


「いや、あの円形の幾何学模様っていうか……」


 円形の幾何学模様……。マジか……。


「みんな。この敷地全て飲み込まれるぞ! って、いない……?」


 騒がしかったはずの部屋は、閑古鳥が鳴いていた。


 隣にいたはずの仲間もいなくなっている。


 ――『大輝くん。ぼくなら君を救える。今からこの魔法陣を鎮める』


「この声は……!」


 ――『飛ばすよ!』


「ちょ、おい! 待て! なんも説明を……!」


 俺が抗議をしようとしても、時間の流れは止まらない。


 全身が温かい光に包まれる。目の前にとある人物。それは、俺のベッドを複数回占領した神だった。


「君には才能がある。その力で……。おっと、言い過ぎたね。そろそろ転移完了。だから、待ってて」


 神はそう言って消えてしまった。本当に今日はおかしい。俺は幻想の中にでもいるのか?


「ま、なんくるないさ。きっと大丈夫だ」


 俺は光の通路が抜けるまで、何も考えないことにした。きっと、彼は俺のために行動してくれている。


 本当に、救ってほしい人のために……。

この話で、第1部は完全完結となります。


長々とサブストーリーに付き合ってくださりありがとうございました。


次回は、第1部・第1部サブストーリーの総集編となります。


宜しくお願いします!!!!!!!!

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