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【第2部開始!】サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第1部 サブストーリー集

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第94話 メウスの弱点

「ふぃー。完全復活!」


 メウスがコップを置いた時、酒瓶の中身は消えていた。


 本当に三百パーセントのお酒を余裕の表情で飲み干す。


 彼の身体はどうなっているのか、不思議な人。


「アメジスさんには、本当に合わないみたいだね」


「ですね……」


「うーん。このコップとこの瓶にぼくの血を入れて中和して……」


 メウスは針で指を刺し、血を一滴ずつ入れた。


 そして、くるくる回す。漂う香りは少し落ち付いた気がした。


 ――パチン!


 メウスが両手で交互に指を鳴らす。


 そのメロディーは軽快で、優しい。そしてとても心地よい。


「アメジスさん。起きる頃合いだよ」


「え?」


「うぅむ……。今まで私は……」


 本当にアメジスさんが目を覚ました。ゆっくり立ち上がる。


 そして、酒瓶に触れた。


「空になってる……。メウスさん本当に飲んだのですね」


「うん。めちゃくちゃ美味しかった。ぼくなら三本は飲めるね。よゆーよゆー!」


 メウスはもう一本もう一本と言うかのように、身体を動かしている。


 本当にお酒が好きなんだ。ってことも予想済み。実は同じものを追加で四本用意してもらっていた。


「メウス。もう一本飲む?」


「え? いいの?」


「今回は特別。好きなだけ飲んでいいよ!」


「やあああああああったーーー!」


 リーディスというお酒を用意しなおす。


 アメジスさんにはメウスなりの応急処置として、影響を弱める魔法をかけてもらっている。


「ではいただきます!」


 酒瓶のコルクを開けると、再びブルーベリーのような香りが部屋全体に広がった。


 コップに注ごうとしたところで手を止めるメウス。


 次の瞬間彼は直接口をつけて飲み始めた。


「メウスさん! そんなに勢いよく飲んだら……!」


「大丈夫大丈夫。これくらいがちょうどいいからね。うー美味い!」


「メウスはいつもこんな感じです」


 私はアメジスさんに説明をした。 メウスは止まらない。どんどん飲んでいく。


「ぷはー! ホント美味しい。もう一本いい?」


「どうぞどうぞ」


 三本目を用意する。それも、そのまま飲み干した。


 なんだか、頭がクラクラしてくる。もしかして、私……。


「ミカエラ、顔が赤くなってるよ」


「へ? そういえば、ここが痛いです……」


 私は自分のこめかみを指さす。そこがさっきからズキズキと痛い。


 アメジスさんも少しふらふらしていた。対してレイは平然としている。


 レイはやはり銃だからだろうか。それなら納得がいく。


「これはね。取り扱い注意のお酒でもあるんだ。ちょっとまってね」


 メウスは酔った様子を感じさせない足取りで、リビングの窓に近づいた。


 そして、窓を開けると境目のあたりでバチバチと音がしてくる。


 見れば小さな火の塊が浮いていて、それが火花を散らしていた。


「よし火種ができたね。これもいただきまーっす!」


「ダメー!」


「はむっ! あちち! はふはふ……。うっく……」


 火種を飲みこんだメウス。そんな彼は、ものすごく清々しい顔をしていた。


 しばらくすると、彼の腹部から燃え始める。炎は天井近くまで広がっていく。


 私はそんな彼の頭を開いて、思考情報そのものを見てみたくなった。


 メウス自身は問題ないんだろうけど、こちらとしては問題だらけなんだよね。


「メウス!」


「はーい。うー気持ちいいー」


 メウスは軽々とステップを踏んでいた。


 そういえば、頭痛が治っている。アメジスさんも、普段通りに戻っていた。


「原因は空気だよ。さっき入れ替えた時の火種はね。リーディスの香りが圧縮されたもので……」


「講釈はいいから、そろそろ仕事に戻ろう」


「は、はーい……」


 メウスのテンションが下がる。やっぱり、加工場でのメウスは偽っていたのだろう。


 それだけ、彼は優しいということ。私が助言するなら、一つしかなかった。


「メウス。加工した肉は誰が喜ぶと思う?」


「え? きゅ。急に何を言い出すの……」


「正解は、食べる人間だよ。メウスが加工した肉は、みんなが美味しく食べてくれる」


 誰でもわかること。それを改めて知ってもらうことが今回の目的。


「多分加工される動物たちは、理解しているんだと思う。自分はだれかに食べられるため生まれてきたんだって」


「う、うん……」


「私がこの世界に生れ落ちる前。メウスは言ったでしょ。弱肉強食をどう思うかって」


 そう、彼は言っていた。自分の口から弱肉強食のことを。


 今彼は、その本来の意味を忘れている。本当は、弱肉強食の意味を、定義を知りたかったんだと思った。


 メウスは強い。だけど、どこかが弱い。私なんて、そんな二面性すらなくなったに等しい。


 家族からしか好かれない性格だったから。というのも、あったかもしれない。


「今の私ならわかる。弱肉強食は生きるための、生き抜くためだけの手段なんだって」


「それは。ぼくも知ってるけど……」


「じゃあ聞くよ。メウスは加工をするとき、消費者の笑顔を考えたことある?」


「消費者……」


 メウスは暗い表情をした。沈黙は数秒間に渡って続く。


「考えたことないかも……。ずっと、仕事だけに集中していて、目の前しか見えてなかった気がする……」


「やっぱり。じゃあ、加工するとき、消費者の笑顔を想像しながらやってみて」


「う、うん……! ありがとうミカエラ。えへへ。神であるぼくが怖気づいても意味ないね」


 メウスはニコりと笑った。やっぱり、笑顔のメウスが一番だ。


「私思ったの。心のない人が加工した肉なんて、正直食べたくないなって」


「え?」


「メウス。自分で心を閉ざしてたでしょ。人の感情ってね、物にも表れるんだよ?」


 前世で使った筆箱。それは小学校の時から使っていたもの。


 昔から使うものは常に大事に使う。すると、物にも魂が宿る。


 そう、誰が言っただろうか。私にはわからないけど、最初に言ったのはメウスだと思う。


「ティアも、レイも、私やメウスが大事にしてきたから、大事にすると誓ったから人の姿になった」


「そうだね」


「でも、一つだけ人の姿になっていない銃もある。セリンが端数の部品で作った銃」


 そう、あの銃だけは人の姿になっていない。それもそのはず、私はあの銃を磨いていない。


 多分綺麗にしてあげれば、生命が宿るかもしれない。全ては私の扱い方次第。


「さ、加工作業再開! メウス。ちゃんと消費者のことを考えてやってみて!」


「うん!」


 その後作業は順調に進んだ。笑顔で、楽しく。消費者の表情をイメージする。


 たったその思考だけで、メウスの作業効率は大幅に上昇した。


 作業台には、大量の肉。心臓の肉も、後日美味しくいただくことになる。


 どうやらメウスが美味しく食べる方法を知っているようで……。


「さすがは、酪農家生まれだね」


「まあね」


 こうして、リーファ家二日目は終わった。エレンやレイラお姉ちゃんを見なかったけど、多分大丈夫!

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ぜひ第1話からご覧ください!!!!

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