表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる【サブストーリー更新中】  作者: 八ッ坂千鶴
第1部 サブストーリー集

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/100

第93話 虚無の代償

 ◇◇◇メウス目線◇◇◇


「残りは全てぼくがやる」


 こう宣言した時。見える世界が暗転した。


 これからすることは、自分の心理に反する行動。


 自分の心が壊れる前に、壊れた状態にしておく。


 誰もが出来れば苦労はしない。だけど、ぼくには無理だった。


 まず自分の腕を切る。痛みを感じない。痛みとの決別を確認する。


 しばらくして、全部の作業台に加工待ちの家畜がならんだ。


 防音魔法を自分に付与する。悲鳴なんて聞きたくもない。


 ぼくは全部の魔力を右手に集中させた。一瞬で……、一発で終わらせる。


 ――バン!


 破裂音が耳をつんざく。そこまで防御はできていなかったか。


 ただわかること、この状況であれば可能だ。


「全魔力制限解除。一括投下。作業時間を〇・一秒に設定。発動……」


 自分の声だけが脳内に響く。途端、動物たちは一瞬にして加工肉に変わった。


 ◇◇◇ミカエラ目線◇◇◇


「すごい……」


 私はとんでもないものを見てしまった。


 一瞬で作業台全てに並んでいた牛や豚、鶏が肉片に変わる。


 これが、メウスの能力。お婆さんが欲しがる気持ちも少し理解できた。


「メウス……」


 彼が何をしたか。それはわかっていた。本人としてはしたくなかったこと。


 次に捌く牛たちが並ぶ。それも一瞬で肉片に変えてしまう。


 私が名前を呼んでも、反応しない。彼は、集中している。


「ミカエラさん。貴方には教えてなかったねぇ」


 お婆さんが私の隣に座る。彼女は手に飲み物を持っていた。


「一つお前さんに」


「ありがとうございます」


「メウスはねぇ。ものすごく優しい子なのよぉ」


 知ってますなんて言えない。私はこれまでのメウスを見てきた。


 ゼレスリシアの国王アルバスを救った時も、彼は身を挺して庇った。


 だけど、今の彼には瞳に光がない。生気を持っていない。


 まるで、道具のようだった。


「一度ああなると、意識が戻るのに時間がかかるのよぉ」


「意識?」


「もうすぐ、かしらねぇ。久しぶりに見たから、彼の体力がどこまで持つか、やけどねぇ」


 お婆さんはコップの飲み物を口へ流し込む。


 メウスの作業は終わらない。まだ。まだ続いている。


 本当に、彼の意識がどこへ行ってしまったのか。


 それが心配になるほど、狂気に満ち溢れている。


「メウス!」


 私は名前を呼ぶ。だけど、届いていない。届かない。


 こんなこと、上位神である彼がやるべき行動じゃない。


 もう、見たくない。こんなにも血塗られた彼を見たくなかった。


「メウス……」


 もう、彼は戻ってこない。そう思った時。


「い、痛い……」


 メウスが嗚咽を漏らしながらひざまずいた。


 私は急いで彼の元へ向かう。魔力残量を確かめるが、完全に空っぽだった。


「だ、大丈夫?」


「大丈夫……じゃないかも……。レイいる?」


 メウスはレイを呼んだ。すぐに駆け付けた彼に、メウスは家まで運ぶよう伝える。


「ちょっと、私も一緒に行ってきます!」


「はいはいぃ」


 私はレイの移動能力を利用し、メウスの実家まで移動する。


 中に入り、リビングのソファーへメウスを座らせる。


「メウス……」


「ごめん。ミカエラが何か言ってたのは気づいてた」


「え?」


 メウスは、私の叫びに気づいていた。そう言っているのだろうか。


「だけど、あのタイミングで自我を戻したら、おかしくなるんじゃないかって。怖かった」


「じゃ、じゃあ、なんで加工場に来たの!」


「助けを求めていたから……かな?」


 メウスはきっと、私の絶叫に反応してきたのだろう。


 それなら理解ができる。それにしても魔力を全消費してまであんなことをするなんて。


「メウスは馬鹿だな」


「ちょっとレイ!」


「いやいいんだ。こいつはこいつ。だからな」


 レイが意味深の言葉を言う。確かに、人によって感じ方は違う。


 だけど、メウスは自身の本心に抗って、加工作業の手伝いをした。


 あとからお婆さんがやってくる。かなり汗をかいているようだ。


「メウスさん。大丈夫かい?」


 お婆さんが問いかけた。


「ま、まあ。少し回復したよ」


「そうかいそうかい」


「ただ。ちょっとお酒入れたいかも……。手持ちのお酒はもうないしなぁ……」


 こんな状況でもお酒に逃げられる彼がすごい気もするが……。


 残虐に、残酷に生き物を加工して、それでもう立ち直っている。


「メウスさん。もう仕事は終わりで?」


「アメジスさん。まだ仕事が残ってるよ」


「しかし、その様子では……」


 メウスの顔を見ると、右口角からヨダレが流れていた。


「アメジスさん。昨日お酒飲んだ? どこかにあるんでしょ?」


「いや、ないですよ。それに、こんな真昼間からお酒など……」


「ぼくはものすごく喉が渇いているんだ。お酒が飲みたい。できれば二百パーセントのやつ」


 展開的にも良いのかもしれないが、ここで出てくる度数じゃない。


「に、二百……。そんなお酒は……。普通ではありえな……」


「そう……。魔力回復には時間がかかりそうだね……」


「魔力回復?」


 アメジスさんは、何を言われたのかわからないらしい。


 この人も、リヴァーチェ伯爵家令嬢ファリアと同じ道を辿ってきたのかもしれない。


 魔法とは無縁の生活。つまりは、リーファ家は魔法への関心度が低かった?


「まだ頭がガンガンしてる……。こんな時にお酒があれば……」


 メウスは相当疲れをため込んでしまったらしい。


 ここでしっかり用意できれば、彼は即時回復して現場復帰する。


 だけど、そんな余裕……。私は天界には行けないし……。待って!


「私アダムさんと連絡先を交換してます」


「いつの間に!?」


「はい。昨日道が分かれる時に、魔法紙で交換したんです。ちょっと連絡してきます」


 私は急いで自室に戻った。アダムと交換した魔法紙を用意する。


 そこで『メウスが高濃度のお酒を欲しているので、彼の部屋からお酒を持ってきてほしいです』と書く。


 すると、すぐに『承知』と返信が来た。数分後、アダムがメウスの居場所をもとにやってくる。


「ミカエラ。これを」


 持ってきたのは、透明の液体が入ったお酒。前世では見たことのない酒瓶に入っていた。


「ありがとうございます。えーと度数は……」


「確認してこなかった。しかし、彼の飲むお酒は決まっている。問題ないだろう」


「ですね。アダムさん。突然の連絡すみませんでした」


 私はすぐにメウスのところへ戻った。アメジスにコップを用意してもらう。


「そのお酒……。ぼくの部屋から?」


「はい。アダムさんに頼んで持ってきてもらいました」


「そのお酒は、晩酌用で買った三百パーセントのやつだね」


 これで三百パーセント。


「種類は……?」


「リーディスっていう。この世界特有のお酒だよ。飲める人は世界に指折り数えるくらいしかいない特殊なお酒なんだ」


「なるほど」


「日本酒とか、ウイスキーとか。そういう原料のあるものじゃなくてね……。ぼくも作り方知らないんだけど……」


 メウスが自分でコップに注ぐと、ブルーべりーのような香りがした。


 直後。バタンという音がする。床を見れば、アメジスが倒れていた。


「あはは。彼にはキツイ匂いだったのかもね」


「だね」


「ってことでいただきまーす!」


 そうして、メウスはリーディスというお酒を一瓶、全て飲み切るのだった。

読んでくださりありがとうございます


いいねは賽銭箱に大事にしまっておきます

リアクションも別の賽銭箱に入れておきます


星は1から5どれでも大丈夫です


下の評価ボタンからぽちっとしちゃってください!


最高の励みになります!


ついでにぜひブクマもお願いします!


主人公の活躍がみたい方は!!!!!


ぜひ第1話からご覧ください!!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
メウスが自分の心を守るために、あえて「自我を壊した状態」で作業するというのがかなり衝撃的でした(笑) それでも助けを求められたから動いたというところに、改めてメウスの優しさを感じました!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ