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サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる【サブストーリー更新中】  作者: 八ッ坂千鶴
第1部 サブストーリー集

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第92話 加工場の真実

 翌日。布団を見ると、メウスだけがいなくなっていた。


 部屋を出る。そして、家の中全体を見て回る。だけど、彼の姿はない。


「メウス……」


「ん? メウスなら外にいるぞ?」


「ッ!?」


 突然声をかけられ、私は後ろを見る。そこにはレイがいた。


 黒い服に白いシャツ。黒いズボン。そして、短く切った灰色の髪。


 顔が整い過ぎていることが気になるけど、まさしくザ・男という見た目。


「なんでレイが知っているの?」


「ま、まあ……メウスに呼ばれてよ……」


 レイが少し口ごもる。その様子はあまり良くない状況のようだ。


「ついていくよ」


「あ、あ……ああ……」


 これは乗らない方がよかったかもしれない。


 だけど、解決には至らない。


「レイ。メウスのところまで案内して」


 私はレイに伝える。すると彼は歩き出した。


 瞬間、私の身体が宙に浮いた。レイの動きが速くなっていく。


 それに、私の身体が追い付こうとしていく。


「これどうしているの?」


「オレに言うなよ……」


「は、はぁ……」


 種明かしすらしてくれない。ドアが自動で開く。そこから外へ出た。


 そのままメウスの場所へ向かうのかと思ったけど、到着した場所は牛舎。


「レイ。なんで牛舎なの?」


「あ? ここにあの神がいるからだよ」


「え?」


 私は牛舎へ入っていく。そこには、牧草を運ぶメウスがいた。


 あんなにもリーファ家に帰りたくないと言っていたのに……。


「メウスおはよう!」


「おはよ。ごめん今話している場合じゃないんだ」


 メウスは忙しそうに牧草を運んでは外へ出て、また牧草を持って中に入る。


「おはようさん。ミカエラ」


「アメジスさん。おはようございます」


「おはよう。そちらにいるのはレイくんだね」


「ん」


 アメジスさんは、大きな瓶を持っていた。


 それを、牛の乳房の下に置く。最初の一回を瓶の口の外へ捨てて、搾り始めた。


「それは牛乳ですか?」


「そうだよ。リーファ家はね。肉牛から乳牛。豚や鶏。大体全ての食肉を生産しているんだ」


 アメジスさんは、生乳を瓶に入れていく。ジュジューという音が鳴り響いた。


 メウスが言ってたことは本当だったんだ。つまり、これから肉を捌くのだろう。


「アメジスさん。肉を捌くのは……ぼくしたくないんだけど……」


「すまないが、それはできない。今は人手不足なんだ」


 これは危ない展開かもしれない。


「肉を捌くの。私がやってもいいですか?」


「おや。ミカエラも捌けるのかね?」


「はい。メウスほど上手くないですけど……。できます」


 ただ、生きた肉を捌くのは初めてだった。多分できると思う。


「そうかいそうかい。では、レイくん。案内してやってくれ」


 アメジスさんは、レイに案内役を頼んだ。再び私の身体が浮き上がる。


「了解した」


 レイが歩き出す。だんだん速度が上がっていく。


 リーファ家の敷地は広かった。さすがは代々続く酪農家だ。


 精肉加工場はメウスの実家から離れたところにあった。


「ここだ。中におめぇの母ちゃんがいる」


「お母様が?」


「ああ、加工の手伝いをしている」


「わ、わかった」


 もう外にいる時点で、動物の悲鳴が聞こえてくる。


 この世界に動物を安心させるものはないのだろうか。


「入れ」


「う、うん……」


 私は加工場の中へ入った。そこでは、牛や豚、鶏が生きたまま切られ、絶命する様子。


 こんなの見ていられない。だけど、人手不足なのだから仕方ない。


 自分のために用意された持ち場へ立つ。


「ミカエラです。よろしくお願いします」


「おやおや。お嬢ちゃん何歳だい?」


「十一です」


 突然お婆さんに声をかけられた。三の形になった耳。上の部分が少し尖り、人族でないことがわかる。


 私の目の前に流れてきたのは、脚を固定された鶏。


「お婆さん。これはどう加工するんですか?」


「これはね。ここをこうして……」


 お婆さんは慣れた手つきで、鶏の羽毛をはがしていく。


 胸のあたりから一刺し、心臓を止めたあとは、内臓を取り出す。


 洗浄する場所に持っていき、綺麗に血を洗い流して、精肉として部位ごとに仕分けた。


「メウスが帰ってきたと聞いたが、困ったもんだねぇ。彼がいれば、一日で百人分の仕事が済むのに」


「お婆さん。メウスのこと知っているんですか?」


「そうだねぇ。これでもわたしゃドワーフの生まれでねぇ。ここにはもう百年近くいるのよぉ」


 やっぱりドワーフだったか。ドワーフは森に住んでいるイメージが強いけど。


 お婆さんから見て、メウスがそう見えるのなら。どうしてメウスは拒否をするのだろうか。


 次に運ばれてきたのも鶏。私は言われた通りに作業を開始する。


「ゴケェー!?」


「ギャッ!?」


 鶏の抵抗に私はひっくり返る。生きたまま加工する。それの大変さがよくわかった。


「メウスなら……どうやってたんだろう……」


 私は自分がメウスだったらのことを考えた。


 きっと彼なら、魔法で終わらせる。ナイフは絶対に使わない。


 まず私は無詠唱で雷魔法を使用し、心停止をさせた。


「ウィンカ」


 風魔法の刃で羽毛を剥ぎ取り、胸のところに切れ込みを作る。


 両手をめり込ませ心臓などの臓器を回収。指で血管を切って水魔法で洗浄。


 空間魔法で水道の方へ血の混じった水を通していく。


 メウスならこの方法を通るはず。


「お婆さん。洗浄まで終わりました」


「おや、早いねぇ。見てもいいかい?」


「どうぞ」


 私はお婆さんに確認をしてもらう。すると彼女は、両目を丸くさせた。


「初めてにしては上手いねぇ。洗浄も丁寧だ」


「ありがとうございます」


「しかし。これでは、いつに作業が終わるかわからないねぇ……」


「え?」


 『いつ作業が終わるかわからない』。お婆さんはそう言った。


 この方法は鶏だからできたこと。彼女は経験からそこまで理解できているのかもしれなかった。


 魔法に関してはまだ知識が浅い私。本当に、メウスがいないと仕事は終わらないのだろうか。


 早朝の作業で私は全部で十匹の鶏を捌いた。朝ごはんを食べて、午前の仕事が本格化していく。


「メウス……」


 そんな中でも私は彼のことが気になって仕方なかった。


 立場上、私はエレンを守らないといけない。だけど、どうしてここまでメウスが気になるのか。


「お、メウスが来たぞ!」


 加工場の外に立っていたレイが声を上げる。入口には、表情が無に染まったメウスの姿。


「残りは全てぼくがやる」


 そう言って彼は、魔法で作業員全員を壁へ吹き飛ばした。

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ぜひ第1話からご覧ください!!!!


次回はメウス目線です!

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