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暗殺者なのに動物すら殺せない公爵令嬢ですが、神様のイタズラで勇者の護衛を任されました。魔王討伐をお願いされましたが、正直難しいです  作者: 八ッ坂千鶴
第1部 第1章 私の新しい家族と天職

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第9話 任命パーティと決意

 私は今見ている光景が現実だとは思えなかった。私は暗殺者で、みんなに祝ってもらう立場ではないのに……。


「長らくお待たせしました」


 お父様がそう言うと同時に、会場は拍手喝采。どんどん熱が上がっていく。お父様はさらに続けた。


「本日はお忙しい中集まって頂きありがとうございます。私の下の娘が無事に八歳となり天職を授かったことを皆様にお伝えすべく、このような場を用意して頂けたこと、誠に感謝いたします」


 お父様はものすごくご機嫌な様子だった。だけど、ここにいる人は見知らぬ人がほとんど、加えて姉のレイラが見当たらない。


 私は姉を探しに行こうと思ったが、いつの間にかいたお母様に捕まり身動き封じられる。


「お母様……!」


「レイラが気になるんでしょ。彼女なら今日は任務があるからといって、ここにはいないですよ」


「そんな……」


 私のせいかもしれない。最近お父様は私に付きっきり、レイラのことなんて考えているのかすらわからない。


 だけど、お母様はすぐに帰ってくると言ってくれた。それだけが安心できて嬉しい気持ちになる。


「ミカエラ。私の方は一通り終わった。君も自己紹介するといい」


「わかりました。皆様初めまして、レイラの妹のミカエラ・シャーロットです。本日は私のためにお越し頂きありがとうございます」


「「おおー!!」」


 みんなの顔が眩しい。ここまで祝福されるとなると、私はどのような感情を抱けばいいのやら……。


「ミカエラ。今日の席はあちらです」

 

 お母様が私を案内してくれる。テーブルの両サイドは全部埋まっていて、私の席は誕生席だった。


 私はそこに座ると、料理が運ばれてくる。今日はチキンレッグや、サラダ。他にも沢山の料理があった。


 暗殺者であることを飲み込めていない私が、このような場所にいてもいいのだろうか。正直不安……。


「お嬢さん。天職任命おめでとさん」


 そういったのは、薄紫色の髪をしたおばあさんだった。手にはワイングラスを持っていて、中に透明な液体が入っている。


「これが気になるのかい。そりゃ目がいいわね……。だけど、お嬢さんはまだ八つ。白ワインを飲むのは十年先だよ……」 


「お義母さん。ミカエラお嬢は頭が良いから、それくらいわかるはずだよ」


 おばあさんの言葉を遮るように、ライトブラウンの髪をした青年が割り込む。私の噂は領地全体に行き渡っているようだった。


 噂をまとめると、私は聡明で天才児とされているらしい。それだけで子供扱いを大きく逸脱しているのではと、考えてしまう。


 私はすぐ右に座るお母様に『この人は?』と聞いた。どうやら、領民の中ではちょっと変わった痴呆おばさんらしい。


「薄紫髪の方は絶対に怒らせないでください。怒ったら、パーティが台無しになるので……」


「わ、わかりました……。お母様……」


 私はナイフを使ってチキンレッグを切る。香ばしい匂いが漂うのに、口に入れても味がしない。私の舌はどうかしたのだろうか……。


 これでは楽しいパーティも楽しめない。サラダにドレッシングをかけても、結果は一緒だった。味を感じられない。


「ミカエラ。大丈夫か?」


「は、はい……」 


「その様子じゃ、大丈夫ではなさそうだな……。早めに皆へ天職の品を見せて、すぐ寝るといい」


 お父様が私を気遣い、半ライスだけでも食べるよう付け加えた。私は言われるがままに従い、銃を取りに行く。


 廊下の道は完全に暗記していた。すぐさま階段へ着くとゆっくり上り、自室に移動する。


 魔法でヘカートを持ち上げ部屋から出ると、知らぬ間に帰っていたレイラが仁王立ちをしていた。


「ミカエラ。それ何よ?」


「え、ヘカート……だけど……」


「へかーと? なにそれ。聞かない名前だし、そんな鉄の塊でどう戦うのよ」


「わからない。だけど、私なら使えると思う……」


「ふーん。ちょっと持ってみてもいいかしら?」


「う、うん……」 

 

 私はレイラにヘカートを渡す。魔法がかかる設定は私が持っている時だけ。案の定レイラの身体は真下へ落ちた。


「こ、こんな重い武器……。まるで熊以上だわ……」


「ごめん。これ私用になってるみたいで……」


「あらそう。じゃあ、失礼するわ。貴方のパーティには参加しないから」


 そうして、レイラは自分の部屋へ歩いていく。再び魔法を付与してヘカートを持つと、急いでパーティ会場へ移動した。


 パーティはさらに激しさを増していて、テーブルの料理もほとんど消えている。この短時間に何があったのか知りたいくらいに……。


「ミカエラ。遅かったな」


「はい……。レイラと鉢合わせになってしまって……」


「そうか……」


 私はヘカートを大事に抱えながら、誕生席に座る。先程のおばあさんが私の武器に反応しかけたが、青年が制した。


「では、ミカエラ。君の天職を説明してくれ」


「いって……いいんですか?」


「もちろんだとも、領地内でもしっかり共有しなければ意味が無い」


「わ、わかりました」


 私はヘカートを持って立ち上がる。


「皆様に私の天職を説明します。私の天職は姉と同じ『暗殺者』です。同時に、神から神具として、この銃を受け取りました」


「「銃?」」


 どうやら、お父様やお母様と一緒で、異世界に住む人々は銃の存在を知らないらしい。それもそのはず、これは前世の武器だから。


「この銃というものは、中に弾丸を込めて発射するだけというシンプルな、機械弓です。弓よりも真っ直ぐ飛び、矢が届かない場所まで射抜きます」


「それは、実演してくれないのかね?」


 一人の老人がそういう。私は『この銃には重要なパーツがないのでできません』と答えた。これが失敗だったのか、空間が冷める。


 私は、ヘカートをみんなに見せて回った。冷たい銃身はかなり好評で、冷めきった空気は何とか持ちこたえる。


「そろそろ、自室で寝るといい」


「わかりました。お父様」


「早々としてしまい申し訳ございませんが、本日のパーティはこれにてお開きとさせて頂きます。今日は奮って参加してくださり、ありがとうございました」


 こうして、私の天職任命パーティは終わった。私は、ヘカートを部屋に戻すと着替えを持ってお風呂へ走る。


 湯船に浸かると、今まで起きた出来事が全て浮かんできた。初めてここで生まれて、この世界のことを沢山学んできた。


 それだけで頭がいっぱいになるのに、レイラの顔が棘のように刺さる。そして、全く抜けない。


 私を庇ってくれた時。それは本当に嬉しかった。おかげで、自分に合ったことを沢山探すことができた。


 未だに私は、暗殺者であることに納得できていない。それをすぐに受け入れたレイラが、すごく偉大だと思っている。


 私だったら。私一人だったらきっと投げ出していただろう。だけど、私には目指す物が見えた。そんな気がした。


 お風呂から出て着替えると、私は書斎へ向かった。そこではお父様が一人書類とにらめっこをしていて、忙しそうな様子。


「お父様。失礼します」


「おお。ミカエラか。お風呂入って少しは落ち着いたか?」


「はい。なんとか」


「そうか、なら良かった」


 お父様は机に置かれたティーカップを啜る。そして、ソファーの方へ移った。私もソファーに座り、お父様の顔を見る。


「お父様。ようやく私が目指すものが見えました」


「そうか、それは良かった。君が目指したいものを是非とも教えて欲しい」


「はい」


 私は、ポケットから手紙を取り出す。それは、夢でメビウスがテーブルに置いていった紙だった。


「私が目指すもの、それは勇者を護衛することです。そして、魔王を倒す。勇者と生きて帰ることです」


「そうか。私やフランと同じ道を歩むことにしたんだな」


「はい。これが、私に与えられた使命です。しかし、それを行うには克服しなければいけないことが沢山あります」


 そう話したあと、私は決心を固めた。まずは、動物を殺せるようになること。それが私が護衛任務を全うするための第一歩だと。

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次回、人間界にあの人が……

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― 新着の感想 ―
ついに勇者を護衛し、生きて帰るという目標が見えてきましたね。まさにここからが本当の物語の始まりですね…! これまで積み重ねてきた出来事が、この決意に繋がったのだと思うと、とても熱いプロローグでした。…
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