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暗殺者なのに動物すら殺せない公爵令嬢ですが、神様のイタズラで勇者の護衛を任されました。魔王討伐をお願いされましたが、正直難しいです  作者: 八ッ坂千鶴
第2章 森で出会った少年

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第10話 来客と魔導銃

 私の天職任命式から約一年。ヘカートの使い方を知らないまま、私は弓と魔法を極めていた。


 正直、銃を使えないのはつらかった。持っていればいるほど、前世の記憶が蘇っていく。今兄弟たちは元気にしているだろうか……。


 そんなある日のことだった。


「ミカエラ。お客様よー」


 部屋でヘカートを磨いていた時。突然私目当ての来客が訪れた。駆け足で玄関に向かうと、どこかで見た事のあるような白髪の少年。


「も、もしかして、メビ……」


「しー! 今のぼくはメウスだよ。メウス・リーファ。ここの世界では偽名を使っているんだ」


 メビウス改めメウスは、わざわざ神が住んでいる世界から、やってきたらしい。それでも少年に見えてしまうのは、不老ということか。


「ところで、ヘカートはどこかな?」


「え、えーと、さっきまで磨いていたところです」


「あ、そ。じゃあ、実物を見せてもらおうか」


「どうぞ」


 私はメウスを自室に案内した。さすがに複雑な構造をした家のマップは、頭の中に入っている。迷わず部屋に着くと……。


「メウスさん。それは私のベッドです!」


「おっと、ごめん。久しぶりに人間界のベッドを見たからついね。ちなみに君のお兄さんのベッドでもやらせてもらったよ」


 大迷惑にもほどがある。だけど、メウスにとって人間界はそれだけ輝いて見えるのだろう。


「ところで、ヘカートは?」


「そのベッドの壁側です」


「あ、そ。じゃあ、勝手に見させてもらうよ」 


 メウスはそう言うと、身体を半回転させてヘカートを持った。一気に起き上がると、何やら光を当てている。


「何をしているんですか?」


「見ればわかるでしょ。点検だよ」


「わからないですよ!」


「あ、そ」


 相変わらずメウスは『あ、そ』しか言わない。だけど、それが彼の特性なのだとすると、どことなく可愛い。


 だけど、彼の手元から銃の重要部品であるトリガー。つまり引き金はどこからも出てこなかった。


 やはり、どう扱えばいいのかわからない。


「よし、点検完了。ミカエラがしっかり手入れをしてくれていたから、故障はなかったよ」


「あ、ありがとうございます……」


「じゃ、試し撃ち行きますか……」


「え?」


 メウスはヘカートを軽々と持ち、来た道を戻っていく。私はその後ろをくっついて歩いて、家の庭へやってきた。


 外はほんのり暖かく、まるで春の陽気だった。新芽の芝生が辺り一面に広がっている。


「メウスさん。でもそれ引き金が……」


「うん、ないよ。でも故障とか紛失とかじゃないから大丈夫。これは、異世界に合わせて改造した魔導銃版ヘカートだから」


「魔導銃……」


 魔導銃と聞くと、やはり魔法で銃弾を発射するのだろうか。それだったら、たしかにトリガーはいらない。


 メウスはヘカートを構える。そもそも私は、魔法なくしてはこのヘカートを持つことはできない。


 なのに、メウスは簡単に持ち上げ簡単に構えている。軸足がブレている様子はない。そもそもスナイパーライフルは置型の場合が多い。


「じゃあ、発射するよ」


「は、はい……!」


「メルスト。バーン!」


 メウスが詠唱をすると、火球が発射された。それはまるで、実弾のように素早く的確に木へ命中する。


「じゃあ、次は君の番。さっきの詠唱句を真似してみて」


「は、はい!」


 私は、銃を持つ時に使う『エアー』を使用して持ち上げると、そのまま構えた。照準はさっきメウスが命中させた同じ木。


 深呼吸をする。銃を使うのはサバゲーをプレイした時以来。加えて、魔導銃は初めて使う。上手くいく保証はどこにもなかった。


「メルスト!」


 私は詠唱と共に熱くなっていく銃に意識を集中させる。銃口が赤く光り、だんだん白く変わっていった。


「バーン!」


 発射を意味する言葉らしいものを発すると、火球が勢いよく飛び出す。その威力に足が持っていかれそうになるが、なんとか堪えた。


 発射された火球は、真っ直ぐ飛んでいく。初めてでここまでできたのは、とても嬉しかった。しかし……。


「ミカエラ。威力調整!」


「へ?」


 私は失敗をしてしまった。火球は見事に木へ命中したのだが、そのまま大炎上をしてしまった。うわ。最悪……。


 その騒ぎを聞きつけたのか、家からお父様が走ってくる。何があったのか説明した時には、メウスが消火をしてくれた。


「お父様。申し訳ございません……」


「いいんだ。しかし、さっきの炎はなんだったんだ?」


「その……。ヘカートを使ったら威力調整を忘れてしまって。木を一本燃やしてしまいました……」


「そうか……。すごいぞ! ミカエラ。初めてそれを持った時の騒ぎはどこ行ったのやら、無事使えるようになったんだな!」


 ここでべた褒めが発動するとは。怒られると思って縮こまっていたけど、余計な行動だったらしい。


「エルヴィンさん。少々褒めすぎではないですか?」


 メウスがお父様に話しかける。だけど、当の本人の耳は届いていないようだった。この時から、私は銃弾魔法の研究を開始する。


 動物が殺せないにしろ、銃弾のレパートリーを増やさなければ意味が無い。どんな状況でも対応できる銃弾を生むのが、今やるべきことだと思った。


 しかし、魔法書を読んでもそのような項目は一切存在しない。それもそのはず、この世界に〝銃〟というものがないのだから。


「お父様。この前友達から〝メルスト〟っていう魔法を教わったのですが……。わかりますか?」


「いや、知らない魔法だな……」


「そうですか……」


 これからは独学していくしかない。それだけでも途方に暮れそうなくらい、地道な作業の始まりだった。


 そんな中素早く習得できたのは、基礎の属性弾だった。一番のお気に入りは、最初に覚えた〝メルスト〟だった。


 これは、火属性の銃弾で対象を燃やすことができる、基礎魔法とのこと。私でも簡単に使えた理由がわかった気がした。


「エルヴィンさんから聞いたけど、ミカエラは物覚えがいいらしいね」


「はい?」


「え?」


 ちなみにメウスとの会話ではこのようなものが多々あった。私でもそれくらいわかっている。そんなことを言ってくるから。


「じゃあ、ぼくはここでお暇させていただくよ。あと一ヶ月か二ヶ月ほど人間界に滞在するから」


「わかりました」


「それとこれ。ぼくの血判が押してあるから二枚分。エルヴィンさんには別に渡してあるから、今君の血判を押してもらってもいい?」


 そう言って、メウスは魔法紙を渡してくる。そこには、金色の血判が押してあった。神の血は金色というのは、格の違いを見せられたような……。


 私は魔法紙に血判を二つ押すと、片方を受け取った。これで、メウスと会話ができる。わからないことは色々聞いてみることにした。


「では、またどこかで!」


「はい!」


 私は、手を振りメウスを見送る。部屋に戻ると、銃磨きの続きを始めた。

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次回、主人公、狩り対決

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― 新着の感想 ―
ついにヘカートの使い方が明かされましたね…! 銃ではなく“魔導銃”として、この世界の魔法体系に組み込まれている設定がとても面白かったです。 詠唱で弾を撃つという発想が、異世界と前世の武器をうまく繋げ…
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