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暗殺者なのに動物すら殺せない公爵令嬢ですが、神様のイタズラで勇者の護衛を任されました。魔王討伐をお願いされましたが、正直難しいです  作者: 八ッ坂千鶴
第2章 森で出会った少年

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第11話 狩り対決

不足分を加筆しました

 私の銃弾魔法研究は順調かに見えた。だけど、ある時から全く頭が回らなくなってしまう。


 属性弾は実際ある魔法の応用系であることが判明したのだが、そこから先に進むことができなくなって……。


「メウスさん。遅いなぁ……」


 行き詰まった私はアドバイスを貰うべく、メウスさんを呼んでいた。だけど、三日前から連絡が来ていないんだよね……。


 きっと何かがあったのかもしれないけど、それを考える暇なんてどこにもなかった。そう、今私はレイラから対戦を持ちかけられてしまったから。


 私が動物を大切にする人であることを知っておきながら、レイラは狩り対決を申し込んできた。だから今私は睡眠弾の開発に力を入れていた。


「ミカエラ。そろそろ出発するわよ……」


「ごめん。あと十分!」


「はぁ。これで何回目よ……。もう八回も十分だけって言ってるじゃない」


 レイラは呆れ半分な言葉を言う。うるさく感じた私は、ヘカートを持って廊下に出た。動物が殺せなくとも、レイラに勝てる。


 そう思っているのは、ものすごく浅い思考かもしれない。私は、レイラの案内で森の中に入っていく。


 木々は青々としていて、カサカサと葉が擦れる音が心地いい。ここには様々な動物がいる。そんなことを教えてくれる場所。


「レイラ。なんでレイラは暗殺者になりたかったの?」


 今まで聞きたくても聞けなかった疑問をぶつけてみる。すると、レイラの瞳が冷たく光った。


「お母様が暗殺者だったから。全盛期はものすごく強かったらしいわ。お母様の旧姓はブライアント。代々暗殺家業をしている公爵家の五女よ」


「五女? じゃあ、お母様の上には……」


「女性が四人いるわ。ブライアント公爵家は男一人産まれれば良いくらいの、女系貴族なのよ」


 貴族というものは、通常息子が受け継ぐ。そんな話を本で知った。だけど、女系の場合は養子を入れるしか方法がない。


 だからなのか……。


「ミカエラが男だったらわたしは、シャーロット家を出ることができたのにね」


「それはどうして……」


「だって、お父様はミカエラを褒めてばっかり。いつからか、わたしは蚊帳の外なのよ。あんなの家族じゃないわよ!」


 たしかにそれはそうだ。褒められてばかりの私にも、違和感しかない。こんな不平等な愛はあってはならないのに。


 だけど、一つ考えられることがあった。それは、レイラの独り立ちを望んでいるのではないかと。


 それなら、親の態度が偏るのは当然だろう。


「ミカエラはどうなのよ。お父様に褒められてばかりで嬉しい?」


「う、うーん。私もレイラと一緒かな。たしかに嬉しいんだけど、それでも、偏ってる気がする」


「やはりね」


 森の奥に進めば進むほど、空の光が弱くなる。薄暗くなった空間で、スタートポイントにたどり着いた。


「では始めるわよ!」


「は、はい!」


「スタート!」


 レイラの号令で、それぞれ行動を開始する。私は、風魔法で木の上に登ると、動物がいないか探した。


 まず最初にうさぎを見つける。子連れうさぎだ。だけど、親を撃ったら子供は生きていけるだろうか。


 子供が悲しむのではないかと、深く考えてしまう。それだけで時間が過ぎていき、子連れうさぎは姿を消した。


 私は次の標的を見つけるべく移動を再開する。次に見つけたのは蛇の群れだった。見ているだけで気持ち悪い。


 だけど、ここから撃って命中するだろうか。蛇の移動は思った以上に早く、瞬く間に見逃してしまう。


 未だに私は一匹も捕らえることができていなかった。スタート地点に戻ると、もう既に死骸の山が出来上がっている。


 全部レイラが捕らえたものだった。これは完全に勝敗が決まってしまう。私も頑張って一匹でも捕まえようと思ったが、あっという間に時間切れになってしまった。


「終了。って、ミカエラは一匹も狩りできてないじゃない!」


「ごめんなさい……。やっぱり、私……」


「まあいいわ。罰としてわたしが捕らえた獲物の解体をしてもらうから」


 魔法が使えないレイラに変わって、私の風魔法で家の庭まで運ぶ。その後私は一人で解体作業をした。


 血の匂いが集中力を切らしてくるが、これをしないと、レイラに怒られる。そうピリピリした環境での作業だった。


 それからしばらくして、領地内全域に嫌な噂が立ってしまう。私が暗殺者に向いていないんじゃないかというものだった。


 きっと、レイラが広めたのだろう。私だって、考えたくて深読みしたわけじゃない。それが、私にとって嫌な気持ちにさせることだった。


「ミカエラに悪い噂ができたみたいだな」


 狩り対決をした数日後の晩。私はお父様に呼ばれていた。これは暗殺者である私にとって、かなりの痛手であることは明らかだ。


「すみません……。上手く、決断できなくて……」


「それもそうだ。君はあの時初めて森に入って、初めて小鳥以外の生きている動物をみたのだから」


「はい……」


 もしかして、お父様は怒っているのだろうか。それだったら、余計自分を責めてしまいそうだ。


 すると、書斎のノック音が聞こえる。中に入ってきたのは、お母様だった。


「フラン。まだ寝てなかったのか」


「ええ、ちょっとミカエラに助言がしたくなってしまって……」


「助言?」


 お母様は私の向かいのソファーに座る。優しい眼差しを向けるお母様が私にアドバイスをしてくれる。それが、私に必要なのだと判断したのかもしれない。


「ミカエラは本当に優しい子。だけど、生きていく中でみんなに優しくしても意味がないのよ」


「というと?」


「生きていくには多少の犠牲も必要。全員が全員、善人ではないのよ」


 そう言って、お母様は私の目をじっと見つめる。一瞬お母さんの目付きが鋭くなった気がした。


 少し怖いけど、お母様ということがわかっているので、スルーできてしまう。それでも、真剣な表情で見る姿は思考の邪魔をした。

 

「さっきの私はいい人に見えた? 悪い人に見えた?」


「え。えーと。どちらでもないです」


 答えに迷った私にはそれしか絞り出すことができなかった。お母様は諦めたように肩を落とす。

 

「そう。じゃあ、また後日、同じ問いをすることにしましょう。エルヴィン、寝ますよ」


「わかった。おやすみ、フラン。ミカエラ」


 そうして私は、頭にモヤモヤを浮かべたまま、寝るのだった。

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― 新着の感想 ―
ミカエラの優しさが、そのまま弱さとして突きつけられる回でしたね。 動物を撃てず、狩りでは完敗。 さらに領地に広がる「暗殺者に向いていない」という噂。 だからこそ、お母様の 「生きていくには多少の犠…
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