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暗殺者なのに動物すら殺せない公爵令嬢ですが、神様のイタズラで勇者の護衛を任されました。魔王討伐をお願いされましたが、正直難しいです  作者: 八ッ坂千鶴
第2章 森で出会った少年

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第12話 魔法書の著者

 狩り対決でレイラお姉ちゃんに敗北した私は、スランプ状態に陥っていた。こういう時こそ読書に尽きる。


 お父様にお願いして馬車を出してもらい、領地内の本屋に向かった。シャーロット領の本屋は他の領地よりも大きいらしい。


「だけど、なんで他の領地に行ってはいけないのですか?」


 私はお父様に聞いた。すると、手綱を引くお父様は。


「領地の情報は機密事項なんだ。だから、勇者や護衛、商人ではない人は他の領地に行ってはいけない。いたらスパイだと思えばいい」


「スパイ?」


「ああ、そうだ」


 お父様はそう言うと、遠くを指差した。そこには、大きなお城が見える。白く立派な城は、王都にあるらしい。


「ミカエラもあと少しであの王都に行くことになる。本屋へ行くなら、王都の知識も入れるといい」


「わかりました。お父様」


 そうして私はシャーロット領の本屋に着いた。『帰る時は連絡をしてくれ』と、お父様は馬の向きを変えて去っていく。


「私が求めているのは睡眠弾開発のヒントを探すためなんだけど……」


 手元には金貨50枚。これだけあればそこそこの値段をする本が三冊買える。鈴の付いたドアを開けると、儚くチリンと鳴った。


 小さい時はこれで遊んだものだ。さすがに今はしないけど。


「おや、ミカエラさん。今日は何用で?」


 本屋の管理人をしている女性が声をかけてくる。薄いシャツを着ていて、少し汚れていた。

 

「新しい魔法書を買いに、異常状態系の魔法書が欲しいのですが……」


「異常状態系ねぇ。あそこの青年が読んでいる本がおすすめね」


 管理人の女性は、右に入った本棚で立ち読み中の青年を指差す。ライトブラウンの髪。どこかで見た事のある雰囲気だけど……。


「ありがとうございます」


「どうも。同じ本はもう一冊あるから、彼の隣で読むといいよ」


「ではそうしてみます」


 私は青年のいる方へ進む。隣に立ったが私の身長では見つけることができなかった。


 すると、隣に立つ青年が私を見下ろす。この人こんなに身長高かったっけ?


「ミカエラさん」


「は、はい!」


「もしかして、この本が読みたいのかな?」


「はい……」


 青年は本棚の高いところから、同じ本を引っ張り出し、私に渡してくれた。そこからしばらく沈黙が続く。


 私はその本の中身を見た。そこにはたしかに異常状態系の詠唱句が事細かに書かれている。


 そして、一つ気になったことがあった。それは、魔法銃弾に使えそうな詠唱句も載っていたということ。


 発売日はつい最近の日付になっていた。つまり、まだ出来たばかりの真新しい魔法書ということになる。


「ミカエラさんは、この方の著書が好きなんですか?」


 青年が小さな声で私に問いかける。


「いえ、著者はそこまで気にしてないですね。むしろ誰が書いたかよりも、どれだけ濃い内容かを重視するので……」


 好きな物は好きと言いたい。私にとってこの選び方は自分に合っていると思っていた。その代わり、青年から渡された本はかなりの重量感がある。

 

「ミカエラさんって、少し変わってますね。僕は著者買いをするんです。一種の推し活ですね」


「いいですね……。推し活かぁ……」


 前世ではアイドルガチ推しだったな。私の部屋は推しの写真でいっぱいだったっけ。今は誰に注いでいたかは忘れたけど……。


 この世界にも推し活文化があるとは知らなかった。でも、そうなると少し過ごしやすいと思ってしまう。


「この本。辺境作家のメウスさんが書いた本でね。魔法のことがものすごく丁寧に書かれているんだ」


「メウスさん? それって、メウス・リーファさんですか?」


「そうそう、メウス・リーファさん。僕大ファンで、いつか会いたいと思って……」


「その人。私の友達です」


 私の発言に青年は転倒した。そりゃそうだ、メウスはきっと私の周りにしか現れない。そんな人だから。


「よ、良かったら……、連絡先……。魔法紙で交換しませんか?」


「すみません。今魔法紙持ってなくて……」


「うぅ……」


 私は本を抱えたまま、管理人のところへ移動する。そのまま本をテーブル代わりにして、お父様に迎えの連絡を送る。


 管理人はその様子を見て何かを感じ取ったのか、私を微笑ましそうに見守っていた。


「管理人さん。これ買います」


「即断即決。相変わらずだね。ミカエラさんは」


「はい。表紙みてビビッときちゃいました!」


「そうかそうか」


 管理人さんに本を渡すと、麻袋に入れてくれる。金貨30枚。かなりの額だけど、私には大収穫だった。


 少しして、お父様が到着すると馬車に乗り込む。これで進展があればいいんだけど……。


 帰り道。夕日をバックにして、私は魔法書を読んだ。ものすごく魅力的で、スルスルと頭に入ってくる。


 指南書よりも画期的なタッチで、実用書よりも柔らかくて、なのに重要だというところは、しっかり強調のラインが引いてある。


 子供向けでも、大人向けでもない特殊な本。


「ミカエラ。馬車で本を読むと酔うぞ?」


「大丈夫です。酔いには慣れているので」


「そうか……。聞くが、その本は何の本だ?」


「異常状態の魔法が書かれている魔法書です」


 私は事前に用意していた紙をしおり代わりに挟む。お父様はそんな私の顔を見ると、正面に向き直った。


「そういえば、私が帰った時お客様が来ていたぞ?」


「お客様?」


「ああ、そうだ。どうやらミカエラに謝罪をしたいらしい」


 もしかしてメウスが来たのだろうか。それだったら話したいことが山ほどある。彼が来てくれるだけで研究が楽になるのだから。


 私はお父様に、急ぐよう伝えた。体感時間で数十分して到着すると、メウスは私を出迎えてくれた。


「ゴメンミカエラ……」

 

「メウス! 数日間連絡してくれないってどういうこと!」


 会って早々。不満が爆発してしまう私。自覚した時にはもう遅い。私はメウスのことを呼び捨てしていた。


「ほんとごめん……。上司から帰還命令出てしまって……」


「はぁ……。仕事は順調なの?」


「んー。ほんの少し?」


 ダメだこりゃ。メウスは完全に上の空。現状を受け入れる気はないらしい。


「その本って……」


 メウスは私が持っている本を人差し指を向けた。瞬間、本が宙に浮く。


「今日本屋で買ったの」


「もしかして、ぼくの本ってわかって買ったの?」


「違う……」


「そうか……」


 メウスは悲しそうな顔をして俯く。私はそんな彼を慰めつつ、睡眠弾研究の手伝いをお願いすると、みっちり教わることになった。

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次回、目的のものが完成

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― 新着の感想 ―
まさか魔法書の著者がメウスだったとは思わず、思わず「そう来たか」と驚きました。 本屋でのやり取りも微笑ましく、特に“著者より内容重視”というミカエラらしい選び方が印象的です。 睡眠弾の研究もいよい…
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