第13話 睡眠弾完成
「ミカエラ。134ページを開いて」
「はい」
私はメウスに言われるがまま、買った本を読んでみる。すると、まるで暗号のような仕掛けに気がついた。
この本には正しい読み方がある。それが、メウスに教わって初めてわかった。
「メウスさん。このページ白紙ですよ?」
「うん。休憩用のページだからね」
「休憩用?」
「そう。普通に読めばみんなそのページにしおりを挟むと思う」
真っ白なページにはたしかに文字がない。だけど、このページだけ微かな魔力を感じた。
目で視認できる魔力が増えていく。ある程度経つと、頭の中に様々な詠唱句がなだれ込んできた。
「ほらね。疲れてない状態で読むと、読まずとも魔法を覚えられるようになっているんだ。普通の人はぶっ倒れるけどねー!」
「意味ないじゃないですか!」
「えへへ!」
メウスは終始楽しそうだった。私は獲得した魔法の海をひたすら泳ぐ。脳内検索で異常状態に絞ると、睡眠に関する項目が出てきた。
さらにそれを読み解いて行くと、詠唱句の特徴を掴むことができる。導き出された詠唱句は〝スウィン〟という言葉だった。
「メウス。睡眠弾の詠唱句って……」
「スウィンだよ。ついにたどり着いたみたいだね」
「はい。メウスがいなかったら、いつ覚えたのやら……」
「よしよし」
私は、ヘカートを持ち外に出た。上は一面夜空が広がっていて、黄色い月が私たちの生活を覗き込んでいる。
「メウス。撃つよ!」
「りょーかい!」
「スウィン! ショット!」
私は覚えたばかりの魔法を唱える。すると、銃口から水色の弾丸が発射された。つまり成功だ。
弾丸はたまたまそこにいた小鳥に当たり、スヤスヤと眠り始める。効果もしっかり発動している。うんいい感じ。
「ミカエラ。メウスさん。夕食できたよー!」
お母様に呼ばれたので研究は中断。ヘカートを仕舞うのはメウスに任せて、私はお母様のお手伝いをした。
食卓には、ここでは珍しい魚料理が並んでいる。遅れてやってきたメウスも、両目を輝かせていた。
「席について」
「『はい!』」
私が椅子に座ると、メウスも隣に座った。彼と食べるのはこれが初めてだ。だけど、ちゃんと食事マナーを守れるのか心配だった。
お父様とお母様。レイラも座って、五人で食べる。
「レイラ、なんでメウスさんの隣に……?」
「き、聞かないでよ……」
狩り対決をきっかけに、私とレイラの仲は崩壊の道に進んでいる。そこを取りまとめてくれるのも、メウスの役割になっていた。
神様もお忙しいこと。それよりも、彼の仕事が最優先だと思ってしまう。言い合いを繰り返す私とレイラを無視して彼は、黙々と食べていた。
「フランさん。この魚はどうやって仕入れたんですか?」
「そうね……。ブライアント領に湖があるでしょ。そこで大量に捕れたから、実家から送ってもらったのよ」
「なるほどそうですか。この料理味付けも程よい感じで、とても美味しいですね」
「ありがたいお言葉。感謝します」
そんなメウスはいつの間にか食べ終わっていた。彼から、研究の続きをしようと言われ、私は急いで完食させる。
味は結局わからなかったが、メウスのおかげでイメージすることはできた――と思う。食器を片付けると、自室に直行した。
「ミカエラ。他に覚えておきたい魔法ってある?」
「今のところはないですね……」
「あ、そ」
私は睡眠弾だけで十分だと思っている。それ以上覚えることも大事だけど、これだけでかなり場面を攻略できると思っていた。
暇になったらしいメウスは、宙に浮きながらヘカートを見ている。私のヘカートとは、あと少しで丸二年の付き合いになるのに……。
「ごめんね。一年間使ってあげることができなくて……」
「あはは! ミカエラって、物にも謝るんだね。物思いにも程がある」
「だって、このへカートは前世からお世話になっているんだもん!」
「確かにそうだね」
雑談したあとは、一緒にお風呂に入った。正確には、メウスが勝手に入ってきたのだが……。
服を着替え部屋に戻ると、メウスがベッドの奥の方を陣取っていた。どこまで私が好きなのやら……。
私はヘカートを回収し、手元に持ってくると、厚めの普段着に着直す。そのまま、寝静まっている空間をのそのそ歩き外へ出た。
街灯がないこの農村地帯は、異様な静けさに包まれている。森を目指して歩くと、霧が立ち込めていた。
「きっと大丈夫」
私は一人森の中に入る。怖いけど、克服するなら動物が寝ている時間。そこを狙った方がいい。
時間稼ぎも楽だし。こちらも動きやすいから。
霧に満たされた森は、不気味なほど静かだった。。まずは寝ているうさぎ。銃声を聞かせたらすぐに逃げるだろう。
次に蛇。こちらは地中に寝ているらしく、見当たらなかった。私はどんどん奥へ入っていく。
だけど、それと共に帰り道がわからなくなってしまった。どこを歩いても木しか見えず、密集しているせいで周囲一帯が真っ黒だった。
すると、体感時間30分歩いた時だった。
『だ、誰か! 誰か助けて!』
割と近いところからの悲鳴。私はその声のする方へ走っていく。
風と木々を掻き分けたどり着いたのは、熊に襲われている少年だった。
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次回、メウス目線。メウスの天敵どう排除する?




