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サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる【サブストーリー更新中】  作者: 八ッ坂千鶴
第1部 サブストーリー集

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第89話 気難しい人

 昼頃、墓石の前に座り私たちはトランプで遊んでいた。


 怪我もしないゲーム。それは、ブライアント公爵家の人にも伝わる。


「負けましたー。手加減してくださいよー」


 ミリアが身体を後ろに倒して嘆く。


「ミリア。貴方が下手なだけよ」


 それに反応するセシル。


「そういうセシルお姉様も負けてべそかいてたじゃない」


 メリンも負けていなかった。この三人では五分五分というところだろうか。


 こちらもものすごく盛り上がっている。


「レイ。顔に丸見えだよー」


「アネキこそ、しっかりやれよな」


「やってるってー。レイが負けたらミカエラお姉ちゃんに頼んで丸ハゲにしてもらうから」


「だから丸ハゲは……!」


 ここでメウスのナイフを再び取り出す。レイの真後ろに立って、肩目掛け振り下ろした。


「った……! ミカエラやめろ、心臓止まるじゃねぇかよ!」


「そう言っても、レイは銃だから心臓ないよね?」


「は?」


「はい?」


「いや、銃にも心臓部の構造があってだな……。んーと……」


 レイはカードを地面に置く。そして何かを考え込む仕草をした。


 すると、メウスが歩いてくる。この展開は……。


「ミカエラ。ぼくのナイフ……。ってあれ?」


「ごめん。勝手に持って行っちゃって」


「いや大丈夫。なんだけど……。レイ。だっけ? 君強くない?」


「は?」


 メウスはカードを指さす。そこには、バラバラのカードが並んでいた。


 これのどこが強いのだろうか……。すると、レイは改めて自分のカードを見た。


「たしかに強いな……。勝ち確だ」


「だよね。ってことで、この勝負はレイの勝ちということで」


 メウスの一言で勝敗が決まってしまう。どうしてレイが勝ち確の札を持っていたのか。


 それは、誰もわからなかった。それから、二ゲーム三ゲームと続く。


「なんだかおもしろくなーい……。レイが強いんだけど……」


「あ? アネキなんか言ったか?」


「なんでもない」


「なんだよ……。まあ、オレは……」


 レイの表情がおかしい。彼は本気を出していない?


 だけど、それでも全戦全勝。この強さは異常だった。


 私はまだ彼の能力を知らない。だからこそ、不安が募る。


「ミカエラお姉ちゃん?」


「なんでもないよティア。レイはご飯いる?」


「いやいい」


「そう」


 なんだか、距離を置かれた気がする。少し寂しくなった。


 ティアは、誰かがいつの間にか持ってきていたらしい紙皿にご飯とおかずを乗せて食べている。


「メウス。この紙皿は誰が持ってきたの?」


 私は一番心当たりのある人物に聞いた。すると。


「アダム先輩に頼んで、ぼくの部屋から持ってきてもらったんだ」


「ほんと、メウスはなんでも持ってるよね」


「まあねー。これでも冒険家だし?」


 その時どこからか鋭い視線が飛んでくる。それを辿ると、レイがギロリと目を細めていた。


「レイ……どうしたんだろ……」


「まあ時間が解決してくれると思いますよ」


 エレンが料理を持って隣に座る。今日のお昼は、ブライアン産の魚を使った漬け刺身だった。


 昨日獲った魚を公爵家にあった醤油で漬けて、一晩寝かせたもの。


 作り方は事前にお母様へ伝えていた。しかし、どれくらい上手く漬かっているかはわからない。


「レイくんも食べな……」


「いらない……」


 お母様の誘いに即答するレイ。本当に大丈夫なのだろうか。


「だけど、ティアちゃん」


「いらないったらいらないって言ってるだろ。このババア!」


 これはヤバイ。お母様が傷ついて……。


「あら。少し言葉は強いけど、孫ができたみたいで嬉しいわ」


 いなかった。


「オレはいらない。そもそも、なんで同じ銃のアネキが食ってるんだよ!」


「だって。美味しいんだもん。あたしこの刺身大好き!」


 食事を喜ぶティア。それを不思議そうに見つめるレイ。


 この構図がどことなく特殊で、楽しい。


 墓石の近くには炊飯器。この世界には似合わない、家電製品。


 動力はメウスの魔力。お米はシャーロット公爵家お得意先のコメ農家産。


「あたしおかわりしてくる!」


「ティア。食べすぎ注意だよ」


 私がティアに注意する。すると彼女は、皿を持って炊飯器の前に座った。


「わかってるって。エレンお兄ちゃんも食べるよね?」


「もちろんです」


 エレンも立ち上がり、ティアの横へ座った。紙皿には山盛りにご飯が盛られている。


 この世界で初めて食べた白米はベルンライト公爵家にて。


 そこから、私が両親にお願いしたんだけど、なかなか実現しなかった。


 元々の生まれが日本人である私には、毎日パンなのはキツイ。


 それから解放してくれたのも、多分エレンの実家だと思う。


「自分の分も残してー!」


「ちょっとミリア!」


 セシルがミリアの腕を掴み止める。全身を大きく動かして逃れようとするミリアだけど、力に負けているようだ。


「セシルさん。ミリアさんはまだお腹空いているようですし」


 私はセシルに一言伝えた。すると、彼女はミリアへの拘束をほどく。


 解放されたミリアはと言うと、走ってご飯を盛り付け始める。


 そして、お母様が用意した漬け刺身もどんどん売れていく。


 昨日エレンが釣り上げた五百人前近くあったザトウクジラ級巨大魚の刺身は、残り少なくなってきた。


「ミカエラ。刺身食べないの?」


「え、あ。食べる!」


 様子を見ることに集中していた身体を動かし、刺身を数枚回収する。


 ポトリ、刺身から醤油が垂れる。白米に数回バウンドさせて、口へ入れた。


 ほどけるように溶けていく。成功したようで、これなら消えるのも納得がいく。


「フラン。美味しいな……」


「ええ。これもミカエラのおかげよ」


「えへへ。どもです……。お母様、お父様」


 私は刺身をおかわりした。ご飯が茶色くなるまでバウンドを繰り返す。


 そうしていくうちに、私の白米はまっ茶色になった。


「ここでかき込む!」


 ご飯を勢いよく口へ入れていく。この食べ方したかった。


 私は令嬢だし、公爵家だし。こんな食べ方は許されないはずなんだけど。


 誰も注意をしてくれない。よっしゃ最高。


「ミカエラ。美味しそうに食べるね」


「ですね……」


「あって、ほのほうがおいひいんらもん」


 私は口に溜まったお米を飲み込む。お墓の前で食事をするのは、なんか楽しい。


 ところでレイラお姉ちゃんはどうしたんだろ。私は周囲を見回す。


 すると、レイラは森で捕まえてきたらしい、兎やイノシシを担いでもってきた。


 今日の夕食も豪華になりそうだ。

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主人公の活躍がみたい方は!!!!!


ぜひ第1話からご覧ください!!!!

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