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サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる【サブストーリー更新中】  作者: 八ッ坂千鶴
第1部 サブストーリー集

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第81話 頼めるのは多分この人

 食堂での朝食は、ミリアと私の服装の話題で盛り上がった。


 ミリアは私が作ったティーシャツとズボンを気に入ってくれたようで、全員に自慢をしている。


「ミカエラ。本当に作ったの?」


 お母様が問いかける。私は大きく頷いた。


「はい、私がミリアさんのために仕立てました」


「それにしても、よくできているわね」


 レイラがそう言って一口分に絡めたパスタを口へ入れる。


 心配になったのが約一名。レイラとは対極的に、メウスがズルズルすすっている。


「メウス! もう少し綺麗に食べて!」


「いやいやいや。こういう食べ方もありでしょ!」


「『絶対無し!』」


 メウス以外全員の意見が合致した。ここまで気持ちよく言えるのはとても快感。


 それでも、考えを改めないメウスは、再びズルズルとすすり始める。


 彼のテーブルにスープが飛び散る。これでは迷惑以上に大迷惑。


「ミリアとミカエラも食べなさい」


「『はい』」


 私はフォークを持って、パスタをくるくる絡めた。


 パクりと口に入れる。今日は海鮮スープパスタで、出汁がよく馴染んでいた。


 次にパン。家では黒パンやチーズナンが当たり前だけど、ここのは丸パンのようだった。


「いただきます」


 私はパンを食べる。香ばしい麦の風味が口いっぱいに広がって、転生後初の柔らかいパン。


 二個目。三個目と食べていき、あっという間に満腹となる。


 ここでも、約一名問題のある人がいて……。


「執事さん。おかわりください!」


「なんと! これでも足りないのですか!?」


「はい。最近空腹になる速度が速いので……。普段僕はこれの三倍食べてますし……」


 暴食のエレン。またはブラックホール胃袋のエレンだった。


 どれだけ食べても満腹にならない。食べたものはどこへ行くのやら。


 彼はペン回しをするようにフォークを回転させる。どうやら、まだ余裕があるらしい。


「エレンさん。これでは我が家の食糧が尽きてしまいます……」


 セシルが注意をした。しかし、誰かの腹の音が聞こえてくる。


「まだ入りそうです!」


「本当に……化け物ね……」


 女系貴族のブライアント公爵家。ここに節度を守れない男子が入ると、問題が発生する。


 そんなことはわかっていた。だから、シャーロット家の視線はたった一人に向けられる。


「メウス。食材調達と調理お願いします」


「え? ぼく?」


 我が家で一番のお金持ち。料理の知識もあり高速で作れる腕前。


 こういう時こそ、猫の手ならぬ神の手も借りたいというものだ。


「うーん。仕方ないなぁ……。ちょっと残金確認してくる」


「お願いします」


 メウスは食事をすぐさま終わらせ、部屋に戻った。


 この状況にブライアントの人はポカンとしている。


「ミカエラさん。なんでメウスさんに頼んだのですか?」


「それはね。メウス、あれでも料理上手いんです。しかも、全作業を魔法で終わらせます」


「魔法……ね……。味はどうなのですか?」


「再現度は非常に高いですね……。そうだ。実は特殊保存で持ってきたものがあるんです」


 私は空間に円を描く。すると、白い空間が開いた。


 そこから、メウスが開発したタッパーもどきを取り出す。


「ミレスさんの肉じゃがを再現したものです。セシルさん。ミリアさん。味見してもらっていいですか?」


「ええ」


「はーい!」


 タッパーを開けて、中身を皿に移す。それをセシルとミリアに渡した。


 二人同時に食べ始める。そして。同時に目を見開いた。


「美味しい……」


 先にセシルが感想を言う。ミリアも『うんうん』と言って首を縦に振った。


「これ、隠し味にオレンジジュースを入れたものです。ちなみにかなり前に作ったものですけどね」


「か、かなり……前……」


「はい。メウスが新しく作った空間を操る魔法を使用し。長期保存を可能にしました」


 セシルが手を止めた。対するミリアは、全部食べ終わっている。


 さすがは四女のミリア。作った日を食欲が上回ったらしい。


「ミカエラさん。これ健康には問題ないんですよね?」


「はい。問題ないですよ。空間の中は時間というものが存在しないので」


「は、はぁ……」


 ここで、メウスが戻ってくる。その結果は……。


「五十人前なら作れるよー。じゃ、厨房借りるねー。エレンなにかリクエストある?」


「じゃあ。チーズナンを四枚用意してください」


「それだけでいいの?」


「はい」


 エレンのリクエストを聞いたメウスは、厨房へ入っていく。


 今回はそこまで凝ったものじゃなくていいらしい。


 それにしても……。


「エレンさん。朝からチーズナンを食べるのですか?」


 私が予想したことをセシルも抱いたようだ。


「はい。僕の大好物です。一日ずっと食べていられますね」


「ありえない……。嘘はついてない?」


「ついてないですよ」


 ここにお母様が挟まる。


「エレンは見た目からして華奢だけど、ものすごく食べるんですよ」


「フランがそういうのであれば、信じるしかありません」


 全員が食べ終わった後。メウスが大皿を持って厨房から出てきた。


 そこには、ホカホカ焼きたてのチーズナンが四枚。トロリと溶けたチーズが、見ている人の腹を重くする。


 なのに……。エレンは目をキラキラさせていた。


「やったー! メウス。ありがとうございます!」


「どうも」


「だけど、この緑色のブツブツはなんですか?」


「あ、あー。ぼくの手違いで、普通のチーズじゃなくてブルーチーズにしちゃった」


 ここでやらかすことか。とツッコミたくなるのを抑える自分。だけど、エレンの反応は予想を裏切った。


「ブルーチーズのチーズナン! 僕の大好きな組み合わせです!」


「え?」


 そうして、エレンはチーズナンにかぶりついた。


 前世で私が食べられなかったブルーチーズ。それを、この年齢で食べられること自体がすごい。


 ナンはどんどんエレンの腹の納められていく。そして、ものの数分で食べきってしまった。


「ふぅー。お腹いっぱいです。だけど、二時間後にはまた空くかも」


「エレンは本当によく食べるな……」


 今まで沈黙を貫いていたお父様が、少し引き気味な言葉を発する。


 それに、みんなが苦笑し朝食は終わった。


 今日はこれからブライアント領の見学がある。色々勉強をしていこうと決めた。

読んでくださりありがとうございます


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ぜひ第1話からご覧ください!!!!


次回は明日20日20時頃更新です!!!!!!

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― 新着の感想 ―
また飯テロかい!! パスタを豪快にすするメウスに、全員で「絶対無し!」となる場面には……やっぱりどの世界観にも、パスタのズズズーはNGなのかなって思いました。
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