第80話 レッツソーイング!
朝。男性陣を外へ追い出し、私は着替えをしていた。
二日目の服は、お母様に作ってもらったティーシャツとズボン。もちろん作り方と設計図は私が用意した。
「昔着ていた服が、こんな感じにまた着られるなんて……」
小さくなったお気に入り。ワンピースを仕立てるには長さが足らず、その回避方法で提案した。
多分公爵家では浮いてしまうかもしれない。だけど、それでよかった。
部屋を出る。すると、入れ替わりで男性陣が戻ってきた。
「メウス。エレン。着替え終わったよ」
「うん。その服つぎはぎだけど似合ってるね」
そう言ったのはメウスだった。もちろんエレンもジロジロ見てくる。
「ティーシャツって、涼しそうでいいですね……。僕も家に古着があるので、作ってもらいたいです」
「でしょ。今度一緒にベルンライト公爵家へ行きましょ」
「『はい!』」
男性陣を部屋に入れて、私は廊下を移動した。
今気になっているのは、ミリアのその後。あれからしっかり眠れただろうか。
大食堂の入口に着くと、そこには紫色のドレスを着たミリアがいた。
「おはようございます!」
「おっはよー! ミカエラちゃん。どう? 似合って……。その服何?」
「これはティーシャツです。涼しくていいですよ」
「てぃーしゃつ……。自分も同じのほしー!」
ミリアは、そう言って私の服を眺める。異世界人は基本新しいもの好きだ。
こんなこともあろうかと、メウスが用意してくれた拡張型バッグにミシンを入れてきた。
もちろん、裁縫道具やメジャーもある。出先で裁縫ができるようにするためだ。
「では、私が作りましょうか?」
「え? いいのー?」
「はい! でも、ドレスをティーシャツにはできないので、着られなくなった寝巻を使わせてください」
私はそのままミリアの部屋へ案内された。彼女から、不要な寝巻を数枚もらう。
まずは採寸。ミリアの腕の長さ、上半身の長さ。胴周りの長さ。そして、襟首の長さを計測する。
「これをもとに、材料を切っていきます。つぎはぎにはなりますが、いいですか?」
「うん! どんなものでも大丈夫!」
私は採寸した情報を魔法紙に書き込んでいく。そして、魔法で不要な寝巻に目印を付けた。
前世ではチャコペンという道具でやっていた作業。
それが、魔法で完結できるのがどれだけ嬉しいことか。
「ここをこう切って、ここが袖の部分になりますね」
「袖……」
「で。ここをこう切って。胴回りを隠すようになるので、幅は約一・五倍です」
「幅は約一・五倍」
「はい、前の長さとその長さの半分。少し大きめなものだと約二倍行くかいかないかくらいですね」
私はミシンを用意する。ここには電気というものは存在しない。
だけど、私が使うミシンは別物。一般的に普及している足漕ぎ式ミシンとは違い魔力稼働型ミシンだった。
「このミシンは使用者の魔力で動きます。私の魔力なら多分五着くらいは作れますね」
「すごい! ミカエラちゃん。物知りだねー」
「よく言われます……」
まずは、胴部分の縫い合わせをする。最終的には裏返しになる。
ガタガタガタ。ミシンの針が上下し、縫い糸でつなげていく。
前世で家庭科の授業が得意だった私。よく弟の服も作ってたっけ。
縫い合わせたら、今度は袖部分をつなげ円柱状にしていく。それを合計二本作った。
「胴体部分と袖。両方裏返しのままにして、袖がつくところに全部入れる」
そう言って、袖を現在ノースリーブ状態の服に差し込んだ。
「なんで全部入れるのー?」
「それはこれからのお楽しみです。ここを縫い合わせて。反対側も同じように」
「ふむふむ」
「で、服全体をひっくり返せば、ティーシャツの完成です!」
全てを表に返したティーシャツ。ミリアは私よりも肉付きがいいので、少しだけ大きめに作った。
「すごーい!」
「じゃあ、同時にズボンも作りますね。えーと……」
「どーしたのー?」
「実は、ズボンは初めてで……。ちょっと考えさせてください」
頭の中ではイメージできている。なのに、ズボンはティーシャツよりも簡単に見えて構造が複雑。
短パンなら楽に作れる。だけど、今回作りたいのは長ズボンだった。
「よし。こうしよう!」
私はミリアの腰回り、お尻周り、腰から尻下のところと脚の付け根部分、脚の付け根部分からくるぶしまでをはかる。
そして、ティーシャツを作った時と同様、魔法紙に書きだした。
綺麗に切られている布。それに再び線を引く。そして、採寸した数字よりも長めに布を切り縫い合わせた。
先に腰回りをくっ付ける。足を入れる場所は穴が空いた状態。
「ミカエラちゃん。何してるのー?」
「ちょっと集中させてください」
私はミリアに向けて黙っているよう伝えた。大きい穴が一つ、筒を付ける穴二つ空いた腰部分は裏返したまま。
次はズボンの筒部分。ティーシャツと同様円柱状にするが、脚は下へ細くなるので、そこも上手く作る。
筒も裏返しにしたままで、腰部分の接続部と筒の広い方を縫い付けた。
「もう片方の筒も同様にくっ付けて……裏返せば……! できた!」
「すごーい。これ、てぃーしゃつと同じ原理で作ったんだよねー?」
「はい! ダメ元でやってみたら、なんかできちゃいました!」
まさかこんなにも単純で簡単にできるなんて思わなかった。
早速ミリアは着替え始める。頭からかぶるだけのティーシャツ。下から履くだけのズボン。
まるでステンドグラスのような柄は、とても似合っていた。
「すごい。歩きやすい!」
「でしょ。ミリアさん。自慢しに行きませんか?」
「うん!」
ミシンと裁縫道具を片付け、私とミリアは部屋を出た。
使用人がいる中歩く道。彼らの視線は全て私たちに向けられている。
食堂に入ると、セシルさんが目を丸くさせていた。
「ミリア。その服どこで?」
「さっきミカエラちゃんに作ってもらったのー。どう? どう? 似合ってる? 似合ってるよね!」
大はしゃぎのミリア。私も作ってあげてよかったと思えてくる。
今日の朝ごはんは久しぶりのパンだった。添え物として、パスタも置かれている。
また、服を作ってみたい。そう思いながら、私は席についた。
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予定変更して次回からは『フラン編』後半戦です。次回更新は20時頃です




