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サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる【サブストーリー更新中】  作者: 八ッ坂千鶴
第1部 サブストーリー集

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第77話 ブライアント公爵家

連続投稿です。あともう一話出します。

 お昼が終わり、再び動きだした車。道は舗装が目立ってきて、揺れも少なくなる。


 それなのに、まだティアは目を覚まさない。本当によく寝ている。


「ティア。起きないね……」


 メウスが言う。今私はエレンと最前列に座っていた。もちろん、ティアも移動させている。


「うん。重さ的には、ヘカートと同じだから持ち上げられるけど……」


 これは私だからこそできることで、銃でも少女の姿でも軽々持ち上げることができる。


 外を見る。だんだんと、牛や豚などの家畜が見えてきた。


「お母様。ブライアント領は酪農の領地でしたよね?」


「ええ、そうよ。私の実家は領主だから、管理くらいかしら? 家畜とかは育ててなかったと思います」


「そうなんですね」


 片道約五時間から六時間。メウスが命名したゼレスリシア共和国は、ものすごく広い。


 そもそも、ゼレスリシア共和国を気に入ってくれたエレンの祖父がおかしいのだが……。


 ――――――――――――――――――


「アルバス国王陛下。大変申し訳ないんだけど……」


「なにかね? メウス」


「この国。国名ないよね?」


「うむ」


「では、ゼレスリシア共和国というのはどうかなと」


「ゼレスリシア共和国か。面白い。その名気に入った。ありがとうメウス」


 ――――――――――――――――――


「国全土に告ぐ。本日より、本国をゼレスリシア共和国とする!」


 ――――――――――――――――――


 本当にあっという間だった。アルバスがここまで気に入ってくれるとは、思わなかったから。


 ゼレスリシア共和国は、中央に位置する王都とその周囲を囲う四つの領地で成り立っている。


「酪農のブライアント。農業のシャーロット。工業と知能のグラーシア。そして、水と自然のベルンライト」


「ぼくたちが生活しているのは、シャーロット領。この前行ったのはベルンライト領だったね」


「そして、今日お邪魔するのは、ブライアント領です! 全領地制覇ももうすぐですね!」


「『うん!』」


 私とエレン。メウスの関係性はものすごい深いところまで共鳴している。


 初めてエレンを自宅に誘った時。私のベッドにはエレンとメウスが占領していた。


 次の日の下半身と上半身にメウスとエレンの足と腕が乗っかっていた朝。


 私は得意魔法の風属性・上級上位〝ハイネスト〟を使用し、ベッドから落した。


「あれから、二人とも寝相よくなったよね……寝返りは相変わらずだけど」


「まあね。あれから怒られるのが怖くて……」


「そうですね。ミカエラさんはものすごく優しいので、ギャップの高低差が……」


 エレンがお世辞にも似た言葉を紡いだ。それくらい私の印象がついたなら、こちらの勝ちと言っていい。


 前で運転をするメウス。ある種のガヤと化した私とエレン。それを見守る両親とレイラ。


 メウスは『もうすぐで公爵家だよ』と、速度を落とし始める。


「いよいよ、私の実家ですね……。お姉様はどうされているのでしょう。今から楽しみです」


 お母様がそう言うと、遠くに赤い何かが見えた。無数にある赤いもの。


 近づくにつれて、その正体がわかってくる。


「お母様。あれはバラ園かしら?」


 レイラが言った。


「ええそうよ。みんなエルヴィンの書斎で嗅いだことあるでしょ?」


「『ローズの香り!』」


「皆さん正解。書斎に香るローズは、私の実家から送られてくる香水なのよ」


 それから数十分。車は大きな建物の前で止まった。どうやら公爵家に着いたらしい。


 先にお母様が降りる。小走りに中へ入ると、すぐに出てきた。


「入っていいそうです。降りてください」


 私たちは車から降りる。ここまで連れて来てくれたメウスには、感謝しかない。


 正門をくぐり、広いバラ園に入る。その先に公爵家があった。


「ここがブライアント公爵家……」


 エレンが口を大きく開けて立ち止まる。その気持ちは私も一緒だった。


 ティアを抱っこしたまま、彼の隣に立つ。ドシリ。誰が背中を押した。


「エレン。ミカエラ。行くよ!」


「は、はい……」


「うん……」


 私とエレンの間から、メウスがはみ出してくる。三人で横並びになり、歩き出した。


 ブライアント公爵家の建物は真っ白で豪奢。


 庶民的なシャーロット公爵家とも、落ち着いた雰囲気のベルンライト公爵家とも違う。


「三人とも、早く入りなさい」


 レイラがひょっこりと顔を出す。玄関をくぐると、赤く細い絨毯が一直線に敷かれていた。


「応接間はこちらのようだから。わたしが案内するわ」


「ありがとう。お姉ちゃん」


 廊下を歩く、壁は金箔が使用されていて、天井には、小さなシャンデリアが複数設置されていた。


 リザークの魔王城とも違う。こんな場所前世でも見たことがない。


「着いたわ」


 レイラが応接間の扉を開く。そこには、両親とお母様によく似た輪郭の女性が二人。


「フラン。あの子たちがお子さん?」


 黒に近い青髪の女性がお母様に問いかける。口には紫色の口紅を塗っていた。


「ええ。そうよ。お姉様」


 お母様が答える。この方がお母様のお姉さん。


 青髪の女性はすっと立ち上がり、私たちの前に立った。


 パステルブルーのドレス。ふわりと広がる白いレースが、清楚さを際立たせていた。


 彼女は、ドレスを両手で持ち上げ令嬢らしく一礼をする。


「初めまして、あたくしは、フランの姉、次女のセシル・ブライアントです」


「よ、よろしくお願いします……」


 ここまで丁寧に挨拶をされてはこちらも困る。今日の私の服装は、白とピンクのワンピースだった。


「ほら、ミリアも挨拶をしなさい」


「わかった」


 ミリアという、もう一人の女性は、薄ピンク色の髪をしていた。口紅はブルー。優しい新緑のドレスを纏っている。


「はじめまして、自分はミリアっていいます。ミカエラさん。エレンさん。それとメウスさん。寝ているのはティアさんかな?」


 彼女は、指差し名前を呼ぶ。それも全て言い当てていて、洞察力の凄さに私はのけぞりそうになった。


 数人の男性が集まってくる。彼らは追加のソファーを二つ運んできた。


「どうぞお座り」


「『ありがとうございます。失礼します』」


 応接間の窓から見える景色は、赤く染まっていた。


 これから数日の間お世話になる家。短い期間だけど、いい思い出を沢山作りたい。

読んでくださりありがとうございます


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主人公の活躍がみたい方は!!!!!


ぜひ第1話からご覧ください!!!!

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― 新着の感想 ―
メウスが国名まで名付けていたとは、あらためて規格外ですね(笑) ミカエラ、エレン、メウスの寝相エピソードからも、三人の距離の近さが伝わってきて微笑ましかったです。 3話も読めて楽しいですニコニコ
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