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サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる【サブストーリー更新中】  作者: 八ッ坂千鶴
第1部 サブストーリー集

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第66話 ド忘れメウスとファンミーティング

感想どしどし送ってください! 諸事情あって返信できませんが作者は見てます!

 ミカエラの家を出て数分。ぼくとリザークは本屋に向かうため空を移動していた。


 飛行魔法に慣れてしまった以上、歩くのが億劫。だけど、ぼくはまだマシな方だ。


 隣で寝そべりながら移動するリザークを見れば、その差は歴然である。


「リザーク。普通に移動したら?」


「眠い」


「それはわかるけど。鳥にぶつかっても知らないよ?」


「ならば殺せばいい」


 リザークはそういうけど、ぼくとしてはあまり嬉しくない。


 リザークがこうなってしまったのも、ぼくの影響。


「リザークってさ。普通に殺すとか言うけど。本当はそう思ってないんでしょ?」


「いや。思っている」


「そんなはずないって」


 そうこうしている間に、本屋が見えてくる。着陸態勢に入り、地上へ降りた。


 今日の本屋は比較的賑やか。ざっと見ただけで、数十人はいる。


 受付に立つ女性の管理人がぼくたちに向かって微笑んだ。


「メウス先生。お疲れさまです」


「お疲れー。管理人さん」


 管理人がぼくの名前を言っただけで、客の目線が集まる。


 昔から本を出しているぼくを知らない人は、もはやほとんどいないと言っていい。


「予定忘れていませんよね?」


「予定? なんだっけ?」


「忘れて……しまわれたのですね……」


「ごめん。管理人さん」


 今日は予定がなかったはず。だけど、いつもよりも人数が訪れている。


 ぼくは、本の内容や数式を覚えるのが得意。文章を書くのも慣れている。


 だけど記憶力がそこまで良くない。アダム先輩に怒られたのもこれが原因。


「みなさーん。メウス先生がいらっしゃいましたー」


 管理人が客をまとめる。縦一列に並んだ人の波。この状況、ぼくはたしかに大事なことを忘れていた。


「メウス。これやばくないか?」


「え?」


「いや、なんかよ。そんな気がする」


 列はどんどん長くなっていく。三階建ての本屋。天井は吹き抜けで飛行魔法を使い人数を計算する。


 単純計算で約五十人以上。いや、もっといる。ぼくは何も用意していないことに後悔した。


「今日はメウスさんの作品数千作品突破記念イベントです。みなさん。準備いいですか?」


「お、おま、本千冊だと……?」


「まあね。ってことは……」


「メウスせんせーい!」


 人の列から飛び出す青年。茶髪でライトグレーの瞳。高身長で大体百七十センチ以上はある。


「レゼルさん。列から飛び出さ……」


「メウス先生! 僕ずっと会いたかったんです!」


 レゼルという青年は、ぼくの前で両腕をブンブン振り回していた。肩に下げたバッグは、リザークが持ってきたものと色違い。


 それも、白をメインとした赤い紐のバッグだった。


「その……ミカエラお嬢と仲がいいと聞きました。しかも本人から!」


「え、あ。う、うん……」


「その、えーと、サインもらっていいですか? ダメなら血判を本につけてください!」


 血判でもいいというのなら、ここはサービスするしかない。ぼくは腰のケースから針を取り出す。


「なら血判で……。今日ペン忘れてきたから……」


「あ、ありがとうございます……!」


 ナイフと針は必ず持ち歩いているもの。とはいえ、普段からセリンの工房にあるペンを借りているせいで、物忘れも酷い。


 そのため、ぼくはサインを書かない。そういう意味でも有名……なのかもしれない。


「押してほしい本見せてくれるかな?」


「は、はい! この五冊にお願いします!」


「五冊ね表紙開いて」


 レゼルは表紙を一枚めくる。血判の場所は既定位置がある。それは、ぼくが仕掛けたギミック。


 丸く囲まれた箇所。そこに押していくと、隠しページが出現するというもの。


 ぼくのファンなら誰でも知っていることだ。こうして、裏ページを見せることがぼくの最大の目的。


「よし。これで全部押し終わったね。そうだ。今度新刊出すから買ってよ」


「新刊!? もしかして、料理本ですか!?」


「さあ。なんでしょう? 料理本も可能性がなくはないけどね」


 ぼくはレゼルに対して列から外れるよう促した。次の人、次の人と血判を押していく。


 今度からはペンを持ち歩こう。そう思った瞬間後方から異様な空気が吹いてきた。


「メウス! なぜこのようなことになっている! 全ては貴公の仕業か!」


「っ!?」


 後ろを見れば金髪のがっしりとした男性が立っていた。舌打ちでもしそうなくらいの怒りの表情。


 ヤバイ、アダム先輩に見つかった……。


「やあやあーアダムさん。オレ様もいるぜー!」


「その状況こそおかしいのだ。なぜ、貴公の周りにはこのような者がいる!」


「ちょっと、リザークが驚いてるよー」


 ぼくはとりあえずアダム先輩の言葉をスルーする。ひたすら判を押して、残り四十人。


 正直今日は自分の血を使い過ぎた。だんだん意識が朦朧としてくる。


「メウス。休んだらどうだ?」


「ううん。まだやる」


 どうやらリザークもアダム先輩の言葉を無視しているらしい。


 後ろの方では、何やらゴソゴソという音。ごたごたと何かが落下した。


「我の本にも押してくれないか!」


「え?」


 ――これって。ぼくは後ろに目をやる。そこには、天井高くまで積まれた本の山があった。


「メウス! メウスが見えん! 早く押してくれ!」


「さ、さすがにこの量は……」


 ぼくは魔法で山を崩す。著者名を確認すると、たしかに全冊ぼくの本。アダム先輩はこの短い間に全巻揃えたらしい。


「どうやら、メウスの一番のファンは、アダムみたいだな」


「だね……。よし、ここは張り切って全冊に押そう! その代わり、アダム先輩。ぼくの部屋からアルコール度数五百パーセントの焼酎持ってきて」


「ご、五百パー……」


 これくらいしないと、さすがに千冊には押せない。妥当な交換条件だ。


「しょ、承知した……。場所を教えてくれないか?」


「じゃ、情報送るねー」


 ぼくは石板を取り出し、部屋の間取図からお酒をしまっている場所の詳細情報に切り替える。


 そこから、焼酎の場所を送った。別にほかのでもいいのだけれど、なんかそういう気分。


「理解した。行ってまいる」


「よろしくねー!」


 そうしてアダムが消えたところで、リザークに今朝のワインの残りを用意してもらった。


 たった一回で飲み干す。全身に血液が回る。量が増える。傷が治る。


 血染め用のワインは聖水からできている。だから、治癒能力も非常に高い。


「よし。続き行くよー!」


 アダムが戻ってくる前に、この場にいるファンへ。こんなにも楽しみにしてくれる人を大切にしたい。

読んでくださりありがとうございます


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― 新着の感想 ―
メウス本人がイベントを忘れているのに、ファンの皆さんはしっかり覚えていて並んでいるというギャップ(笑) そして一番驚いたのはアダムさん!! あれだけ怒って登場したのに、まさか本を全巻そろえた最大のフ…
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