表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる【サブストーリー更新中】  作者: 八ッ坂千鶴
第1部 サブストーリー集

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/88

第62話 新魔法は数字の旅

 セリンの家にはぼくの本が全冊ある。そこから、直近に出した魔法書を全部出して、白紙のページを開く。


「よし。一斉解読開始」


 ぼくが神語で詠唱すると、本に書かれた文章が浮き上がり全て頭の中へなだれ込んだ。


 全部で二十冊。登録されている魔法は全部で二万。これくらいの処理なんて、超簡単だった。


「よし、参照完了っと」


「ほんとオマエはやってることが雑だな。俺だったら端から端まで読んでるぞ」


「価値観の違いだよー」


 脳内に入ってきた情報から現代に役立ちそうな魔法だけを選定。


 やはり、最近使う頻度が増えた光魔法『ライティス』が有力だろうか。


 この魔法には殺傷能力がない。ただ周囲を照らすだけのショボい魔法だ。


 それでも、ミカエラが頻繁に使うようになった。そろそろ上位互換を作る頃合いかもしれない。


「よし。今日はこれにしよう!」


「メウス。どうかしたか?」


「えーとね。ライティスって魔法の上位互換を作る」


「は? あの役立たず魔法をか?」


 セリンはぼくの判断に疑問を抱いたのか、興味なさげな顔で聞いてきた。


「最近たくさん使ってくれる人がいるからね」


「さては、ミカエラ嬢だな?」


「イエス!」


 ものわかりが良すぎて嬉しい。ぼくは早速専用の魔法紙を用意する。そこから先は数字とのにらめっこ。


 使用するペンは、セリンの工房にあるものを借りる。ペンは普段から持ち歩いているわけではない。


 そして、執筆場所はいつもここと決めていた。


 まずは基本魔法となる『ライティス』の数値を書く。そこからさらに、魔法分析を加え桁数を増やす。


「ここに五桁いれて……この部分はこの数値で……」


「また、数字かよ……」


「楽しいよ?」


 どんどん桁数を増やしていく。そこから、新しい数字を書き加える。


 完成した魔法を最初に見せる人は、もう決まっていた。そう、リザーク。


 今はセリンの工房で魔法を作ってるけど、実際に使うのはリザークの魔王城だった。


「メウス。目が痛くならないのか?」


「大丈夫。数字ほど縋れるものはないからね」


「お、おう……」


 その間にも、桁数が増えていく。これは一種のプログラミング。数値で組む魔法術式。


 まだ、まだいける。今日の手応えは抜群だと思えるくらい、筆が進んでいく。


「よし。あとは理の改変数値を書き加えてっと」


「お、完成したか!」


「セリンには見せないもんねー」


「やっぱり、親友優先なんだな」


 ぼくは無言でセリンの工房を出る。次に向かうのは近くの洞窟。そこで動画を撮ろうと思っている。


 今リザークの意識が回復したという連絡は来ていない。復活の知らせが来ていない。だから、最初に見られるよう準備しておく。


「洞窟……洞窟……あった。お邪魔しまーす」


 薄暗い空間、ゆっくり足元を注視しながら奥へ入っていく。


 地上の光が見えなくなった時、ぼくは石板を取り出し魔法で宙に浮かせる。


「記録モード起動」


 ――記録モードを起動します。


「よし」


 ――録画開始まで、残り十秒。九。八。七。六……。


「撮影開始!」


 ――撮影を開始します。


「ヤホーリザークー! 見えてる?」


 撮影時。最初に自己紹介をするのが決まり。多分本人は呆れて見ているかもしれない。


 ここから先は、今まで作った魔法の紹介。まず最初に披露するのは――。


「この状態じゃ見えないよねー。ってことでライティス(灯せ)!」


 ぼくは周囲を明るくさせる。その後もう一度石板に向かって手を振った。


「最初に見せるのは、水魔法だよー。リザーク水魔法好きだよね。たしか、三番目に好きなんだったっけ」


 突然バサバサという羽音。洞窟の奥から蝙蝠が飛んでくる。


 ここは、小動物の住処になっていた。足元には蛇などの抜け殻がある。


「水魔法の前に、蛇の抜け殻見る? あー。嫌だよね。リザーク蛇苦手だしー」


 まるで独り言を言っている感覚。トーク能力には自信がある。


 天井から水が滴る音。耳障りほどではないが吹き付ける風音。


「レスティア」


 魔法を唱える。レスティアは、水柱を発生させる魔法。


 これだけで、地面から水源を探せる。もちろん空気中からも。


「リメス ディサイア」


 次に使ったのは闇属性魔法。リメスは闇の球体を生成し、ディサイアはそれを増大させる増殖魔法。


 これで、ライティスの上位互換を使う事前準備が終了。


 ライティスの効果を切る。空間が真っ暗になり、石板もライトを光らせていた。


「ライトオフ」


 ――ライトをオフにします。視界不良にご注意ください。


 ここからが本番だ。ぼくが新しく作った魔法。これが正しく機能するか。


 ぼくは気持ちが高揚していて仕方なかった。いよいよお披露目。リザークが見たらどう思うかな?


 ここで、リザークとの思い出を振り返ってみる。


「リザークは、よくぼくの家に来ていたよね。一緒に家畜へ餌をあげたり。一緒に食事をして遊んだり」


 この場所には、ぼくしかいない。だけど、リザークのことを思い出すだけで寂しくなかった。


「首席間違いなしだったリザークだったけど。ぼくが首席卒業しちゃった。毎回だけど、ごめんね」


 ぼくは一つ。また一つと言葉を紡いでいく。そうしているうちに、目じりが熱くなってきた。


「まさかこうなるとは思わなかったんだ。泣いてちゃだめだよね」


 ザクザク。入口の方から足音が聞こえてくる。誰かが入ってくる。


 ぼくは、静かに待った。鼻につくような、レモングラスの香り。


 足音はすぐ後ろで止まる。誰かの手がぼくの目元に触れた。


「誰?」


「さあ。誰かなー?」


 聞いたことのある声。そして、大きな手と魔族の吐息。


「もしかして……リザーク?」


「大正解! オレ様ふっかーつ! 会いに来たぜ!」


 ぼくはすかさずライティスで明るくさせた。恐る恐る後ろを見てみる。


 漆黒のマントに城を基調とした服。黒の長ズボン。ぼくよりも身長が高い彼は、たしかにリザークだった。


 頭に生えた角は新調したのか傷一つない。そして彼は、ぼくが作り販売した拡張型バッグを肩に下げている。


 そうか。知らぬ間にミカエラの手で命を終わらせられてから半年以上が経ってたんだ。


「メウス。セリンの野郎から聞いたぞ。新しい魔法を作ったんだってな」


「うん。見る?」


「おうよ!」


 苦しんでいた時とは違う。ものすごくハキハキとしていて、顔色もいい。


 そんな彼が、ぼくは嫌いで、嫌い以上に大好きだった。

読んでくださりありがとうございます


いいねは賽銭箱に大事にしまっておきます

リアクションも別の賽銭箱に入れておきます


星は1から5どれでも大丈夫です


下の評価ボタンからぽちっとしちゃってください!


最高の励みになります!


ついでにぜひブクマもお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
今回は、メウスとリザークの関係性が本当によく伝わってくるお話だと思いました!! 魔法を完成させたら「最初に見せたい相手」がリザークだというところに、個人的に二人の長い友情を感じますね。 まるで現代で…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ