表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる【サブストーリー更新中】  作者: 八ッ坂千鶴
第1部 サブストーリー集

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/87

第60話 私の大好物

 今日の朝ごはんは、私の大好きなもので溢れていた。


 牛肉のステーキに新鮮野菜のサラダ。そして過去にメウスがリクエストしてくれた、カボチャの野菜シチュー。


 おかわりは多めに用意してくれているらしい。さすがにステーキは一つで十分だけど。


「そういえば、ミカエラは七つになった時にはナイフとフォークを使えてたな」


「懐かしいですね……エルヴィン。私もびっくりしましたから」


 お父様とお母様が昔を思い出しながら話している。あの時私は食べるのに夢中だった。


 ナイフとフォークの使い方は、前世の思い出から引っ張り出しただけ。


 たったそれだけで褒められるとは思わなかった。それも、もう四年前の話。私はもう、十一歳だ。


 今年の秋には旅に出る。この家にいられるのはどんどん短くなっていく。


 ふと、食卓の窓から外を見る。そこには昔私が燃やしてしまった木が立っていた。


「あの木、少し成長したね」


 メウスがぽつりとつぶやく。


「うん。もう、焦げ目が見えなくなってる」


「だね。ミカエラの成長も、あの木がきっかけだった」


 初めて今住む現実世界でメウスと会った時。私は引き金のないヘカートの使い方に悩んでいた。


 魔導銃と知った時は驚いたけど、今は使い慣れた愛銃だ。


 そんなティアと言えば、エレンの隣に座っている。今はフォークでステーキを刺し、豪快にかぶりついているところだった。


 さすがに、ナイフの使い方が分からなかったかと、苦笑の渦を巻く。


「ねぇ、レイラお姉ちゃん」


「なによ?」


 ちょうどサラダに手を付けようとしていたレイラに話しかける。そして、昨夜モヤモヤしていた質問をした。


「昨日お姉ちゃんが、シリルさんの皮膚に関して話してたけど……」


「ええ。あれは本当よ。あの人、割と切れ者ね」


「それって、先生を褒めて……」


 エレンが追加の問いかけをした。


「褒めてないわよ。たしかに、あの人は切れ者ね。ただ、戦闘経験が少なく見えたわ」


 たしかに、シリルとレイラが戦っている時、完全に押されていた。


 だからと言って、シリルも騎士団長。本気を出していなかっただけかもしれない。


「レイラは褒め下手だよね。いつも、チクチクしてる」


「それクソ神様が言う言葉?」


「あ、相変わらずぼくのこと『クソ』呼びするんだね」


「クソはクソでしかないわよ」


 この状況はあまり好ましくない。だけど、これもまた一つの日常。


 メウスは深いため息をつくと、シチューをひと掬い。口に運んでまたため息をつく。


 本人としては嫌なのかもしれない。だけど、そういう第一印象がついてしまったなら、変えるのも大変だ。


 メウスのことだから、態度を変えるという考えはないと思う。それが彼の性格だから。


「でも、なんでレイラさんは龍神の滝にいたんですか?」


 エレンが疑問を語る。言われてみれば、レイラはシャーロット領と王都しか移動できないはず。


「さあ、どういうことでしょうかね。わたしはリザークからクソ神様を殺すようお願いされていた。正確にはクソ神様側からの依頼だったわね」


「そーいえばあったねー。そこで、レイラに神殺しの剣を用意するよう言ったからね。事前情報なしでの勧めだったけどー」


「まさか、神を一回斬っただけで耐久値は半分って、後出しにもほどがあるわ」


 メウスは物知りだ。私の知らないことも知っている。それだけで頼りになる存在。


 この場合、メウスが神殺しの剣の真実を事前に伝えていれば、メウスは完全に死んでいた。


 きっとそのための保険を入れてたのだろう。どこも『クソ』ではない。しっかりとしている……のか。


「ミカエラは、ぼくといてどう思う?」


「え、えーと……」


「あたしおかわり!」


 ティアが口をぐちゃぐちゃにしながら、追加のステーキを要求する。


 こんなに食べる銃は――いや考えてはダメ。普通ではないけど、これが彼女の普通なんだ。


 私は急いで料理に手をつける。話してばかりで硬くなった肉。ナイフを入れても切れない。


「火入れ直そうか?」


 メウスが問いかけてくる。


「でも、さらに硬くならない?」


「大丈夫。ぼくならできる」


 私は自分のステーキをメウスに預けた。彼はその上に手をかざす。この姿は前にも見たことがあった。


 それは、エレンの実家でのこと。砂糖を入れ忘れた肉じゃがに甘味を追加したあの時。


 あの時は緑色の光が舞っていた。今回は赤い光が降り注いでいく。


「よし。これでできた」


「ほんと?」


「うん。試しに切ってみて」


「わ、わかった」


 メウスからステーキの皿を返され、私はナイフで切ってみる。するっ。刃がすんなり入っていった。


「柔らかくなってる。それになんか……肉汁がすごい……」


「特別大サービス!」


「ありがとう」


 柔らかくなったステーキを口に入れる。中でホロホロと溶ける肉質。そして、甘い肉汁。


 こんな美味しいステーキは初めてだった。ものすごく好きな味。


「お姉ちゃん。私を成長させてくれてありがとう」


「礼なんていらないわよ。だけど、これからは自分の力で頑張るのよ」


「わかっています。でも、私にはもう迷いはない。お父様も、お母様も。こんな出来損ないの私を育ててくれて――」


 一瞬お父様の口角が下がった。ように見えただけかもしれないけど、見間違いではない。


「え、えーと。育ててくれてありがとう」


「二分の一成人式。だね」


 メウスがフォローにならないフォローを入れる。


「一年遅れだけどね」


「『あはは!』」


 私の楽しい誕生日会はこれで終わった。本当にこの家族、この仲間には感謝しかない。今後も頑張らないと!

読んでくださりありがとうございます


いいねは賽銭箱に大事にしまっておきます

リアクションも別の賽銭箱に入れておきます


星は1から5どれでも大丈夫です


下の評価ボタンからぽちっとしちゃってください!


最高の励みになります!


ついでにぜひブクマもお願いします!


次回場面変わって、メウスとリザークの過去編です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
相変わらず賑やかな会話の中に、自然と美味しそうな料理が並んでいて……読んでいたらお腹が空いてしまいました(笑) メウスのさりげない魔法でステーキがさらに美味しくなる場面も、「そんな魔法が欲しい!」と…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ