第51話 両親の馴れ初め①
サブストーリー集スタートです!!!
エレンが卒業したあと、その日から彼は私の家に留まるようになった。そんなある日のこと。
「メウス! あの日の屈辱、果たさせていただきますよ!」
私の家に来て数日。今までメウスが張り合い対象にしていたエレンが、二人の立ち位置を逆転させようとしていた。
「ババ抜きで勝負です!」
「な、何いきなり……!?」
ちょうど私のベッドで寝ようとしていたメウスは、少し驚いた表情をしていた。すると、カタカタと物音がする。
「あたしも! ばばぬき? やってみたい!」
「ティア、ババ抜きできるの?」
「わっかんない。でも面白そう!」
「ティアも参加するなら、四人分に配らないとですね。メウス。とらんぷ? 用意お願いします」
「わ、わかったよ……」
メウスは渋々とトランプを用意した。カードを切って、四人分に分ける。私とエレン、メウスでやるのは、一年ぶり。
ティアを入れて四人でやるのは初めて。この状況で誰が強いのかは、見当もつかない。
「ねぇねぇ。ばばぬきってどうやるの?」
「ティアそこから……?」
「まあ、やりながら覚えればいいよ」
「わかったー!」
私よりも頭が良いだろうティアなら、すぐに理解すると考えた。子供っぽさが色濃い彼女だけど、そこそこ理解力があるんだよね。
少し前。お父様のお手伝いで、堀周辺の草むしりをしていた時。私の不注意で穴に落ちかけた。そこをティアに助けてもらっている。
手で銃の形を作ると、『エアロスフィア』と唱え私の身体を宙に浮かせる。その感覚はメウスの飛行魔法と近いようで、違った。
「エッヘン! あたしはミカエラのためのティアだからね!」
前回も聞いた同じ言葉を耳にした時。ティアは手持ちの同じ絵札を弾いていく。問題はここからだ。
ジャンケンをする。しかし、ティアはそれを知らない。なので、最初に私とメウス、エレンの三人でやってみた。
メウスとエレンが仲良くパーを出し、私だけチョキ。一番手になった私の判断権限で、右隣に座るティアのカードを取った。
「えーと、じゃあ……。あたしはメウスお兄ちゃんのを取ればいいのね!」
「そうだね。メウスあとはお願い」
「え、ぼく?」
「それしかないでしょ。ほら」
私の急かしに、メウスはティアにカードを見せる。一枚取ったティアは、偶然にも絵札が揃ったのかカードを弾く。
「ティアが残り四枚……。ミカエラが六枚……。メウスが三枚……。僕が五枚……」
エレンが目を泳がせながらメウスにカードを見せた。ババを持っている可能性が高いのは、どうやらエレンらしい。
動揺しているのか、持つ手が震えている。周囲をキョロキョロしているのは、理想通りに回って欲しいからか。
「じゃ、取るよ」
「は、はい……!」
エレンの持ち札が一枚減る。しかし、残念ながら揃わなかったようで、メウスが『次!』と叫んだ。
私はエレンにカードを見せる。一枚減ると、引きが良かったのかペア札が弾かれた。
沈黙は約二十分に及んだ。一番上がりはティアで、次に私が二抜けする。ここからはメウスとエレンの一騎打ち。
「エレン、ババ抜き上手くなった?」
そんなメウスの質問にエレンは無視を貫く。部屋は尋常ではないくらいに緊張感に包まれて、頬がピリピリと痛くなる。
まるで、この部屋一帯に麻痺トラップが仕掛けられているような。そんな感覚。残り三枚。メウスが引き、エレンが引く。
そして、ループ五回目。エレンの番。ギョッとメウスの顔が青ざめた。
「僕の勝ちですね」
「うーーーーー! 負けた……」
メウスに勝てたのがうれしいのか、エレンは目の前に散らばったトランプを回収。シャッフルして配り直す。
「エレンもう一回するの?」
「はい! ババ抜き楽しいです!」
「あたしも!」
そこで、突然部屋のドアがコンコンと叩かれた。ちょうどカードを配っていたエレンの手が止まる。
「誰?」
『わたしよ』
「お姉ちゃん? 入って」
部屋のドアが開かれる。レイラは暗色が好きなのか、昼も夜も黒系や紺色系を着ていた。正反対に私は明色系が好きなので、基本カラフル。
「今日も。黒っぽいね」
エレンがボソッと言った。
「仕方ないわよ。わたしの好みなんだもの」
「は、はぁ……」
「それでどうしてお姉ちゃんはここに?」
「両親が来なさいって。大事な話らしいわよ」
「『大事な話?』」
一瞬頭が真っ白になった。カードはティアが片付けてくれることになったので、他メンバーは一階の食卓へ移動する。
だけど、なぜ食堂ではなく食卓なのだろう。前者ならわかる気がする。しかし、後者は基本料理が並べてあるテーブルを指す。
「レイラ。なんで食堂じゃなくて食卓って呼ぶの?」
「そうね……。諸説あるけど、この世界では食堂というものが手に届かなかった。一般貴族では手の届かないものだったのよ」
「うん」
「そこで、みんなが集まるテーブル。つまり食卓を食堂と同義として扱うようになった。そう言われているわ」
つまりは、今では私たちの食の場も食堂と言えるほど立派だけど、昔からの名残で食卓と呼んでいるのか。
「それはそうと。なんで、クソ神様と、ミカエラのパートナーも来ているのよ」
「クソ神様とは聞き捨てならないね。ぼくも立派な……」
「『出禁食らってるでしょ!』」
「すんません。調子乗りました……」
メウスは少し気まずそうな顔をして、しゅんと蹲る。
シャーロット家の階段や廊下は明かりが少なく薄暗い。
お父様にも、もう少し光度が欲しいと言っているけど、そこまで余裕はないらしい。
「本当にここ不気味な光加減だよね……」
「そうね……」
「ライティス」
私は移動が楽になるように魔法を唱えた。少し眩しいくらいの光に、みんなの顔が照らされる。
「ミカエラ。魔法使いこなしてるね」
そう、メウスが言った。エレンも嬉しそうな表情でじっと私の手を見つめる。
「さすがはリザークに認められただけあるわね」
「えへへ。お姉ちゃんほめ過ぎ!」
「褒めてないわよ。それに変な笑みしないでもらえる?」
レイラにいろいろ言われながら、私たちは食卓についた。
「お父様連れてきました」
「ありがとう。ミカエラは私の前に座ってくれ。メウスとエレンもいつもの位置に」
「『はい』」
メンバーが全員揃ったところで、台所からお母様が出てきた。
「フラン。つまみありがとう。今日はみんなに、私とフランの馴れ初めについて話したい」
「あら、私とエルヴィンの馴れ初めについて話されるのですか?」
「あはは、恥ずかしいか! まあ、私が話したいだけなのだがな……」
お父様はそう言いながら三つのワイングラスにワインを注ぐ。私とエレンにはリンゴジュースが配られた。
お母様とお父様の馴れ初め。今後に役立つと思い耳を傾けることにした。
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