第49話 魔会議
◇◇◇リザーク目線◇◇◇
「もう。あれから一年が経つのか……」
オレは魔会議の会場前でミカエラたちと会った時のことを思い出していた。あの時あの場所でミカエラが古き生命を消してくれなかったら、今この姿で過ごせていないだろう。
魔族になった今となっては、メウスの忠告通りになってしまっている。オレの知識不足も危ういまでに。
魔会議の会場は、多くの見張り魔族でごった返していた。かなり厳重な警備。毎年二回行われる魔会議だが、前回オレは参加できなかった。
「うふふ。リザークさん少々お痩せに?」
一人の魔族婦人が、陰口でも言うかのようにオレを茶化した。
少し頭にくるが気にしない方が勝ちだ。ここは、感情的にならないよう我慢をする。
「そういえば、リザークさんは前回ご参加なさりませんでしたね。何か急用でも?」
「いや、なんでもない。日頃の疲れが溜まって寝ていただけだ」
「あらあら、そうですか」
「それよりも、早く行かねば始まってしまう。リーシアも参加するのであろう?」
婦人にしか見えないリーシアは、北西の魔王。薄紫色の髪を持つ彼女は、人間界に溶け込むのが非常に上手いことで有名だった。
ミカエラの噂を教えてくれたのも、彼女。それが、友人であるシリウスを通じ、レイラを通じて実際に会うことに成功した。
まさか、メウスまでもが関わってくるとは思わなかったが、オレが大事に至らなかったのは全て彼のおかげでもある。
会場には王国の周囲に城を構える魔王が勢ぞろいしていた。オレを入れて全部で六人。その中でオレが最上位に君臨している。
しかし、ミカエラとメウスが本物の存在である以上。オレは本物なのか、偽物なのか。
「これより、魔会議を開会する」
オレの付き人である老魔族が宣言をする。すると、翡翠色をした女性が口を開いた。
「こちら。南西の魔王ラディル・ヒューストン。リザークさん、息子から話を聞きましたよ」
「そうか。もう届いていたんだな……」
ラディルはこの前オレの城に来たシリルの母親。どういうわけか、魔族と相いれない人間と結婚し、子供を作った人物。
南西のメデューサと呼ばれるほど冷酷で、その異名ゆえに怒ると敵対相手を石化させてしまう。
もちろん彼女にも呪いがかけられている。オレの呪いが無限の命と苦痛であると同時に、彼女は寿命が迫るごとに身体が石化してしまうのだ。
しかし、そんなことは滅多にない。それが、ものすごく羨ましいくらいに。
「リザークさん。去年非常に大変だったみたいね」
「そうだな……」
ラディルはそれ以上のことを言わなかった。次に手を挙げたのは、深紅の髪をした男性魔王。
名前は確か。
「アークス。お前とは話したくないのだが……」
南東の魔王アークス・ブレイス。魔王の中で一番若い新人だ。彼はどういうわけかオレにつっかかってくる。
「いいじゃんいいじゃん。リザーさん」
「リザーじゃない。リザークだ。クが抜けている」
「えー。可愛いじゃん!」
「うるさい!」
大声を出して制止するオレンジマーガレットの髪をした男性ファルクス。彼は北東の魔王で最年長。極度の聴覚過敏らしく、オレと同様アークスが苦手な彼は小さな火球をアークスに向けて放った。
「皆さんお静かに、本題がまだよ」
唯一平常心を保っているリーシア。それとは対照的に無口な南の魔王は、オレですら名前を知らない。
「リーシアのアネキは、相変わらず冷たいねぇ。いいじゃんいいじゃん!」
「アークスさん、全ては貴方のせいですからね!」
「ベー。耳がキンキンしちゃうー。面白いからイイケドネ!」
リーシアの指摘を前にしてもヘラヘラしているアークス。魔王の中で最上位のオレが無理やり静かにさせることは可能だが、手が動かない。
「仕方ない。アークスを抜いて会議を進行するとしよう」
「その方が最適ね議長さん」
とリーシア。ラディルとファルクス。他アークス以外が頷く。
「本日の議題は、前回と同様と聞いたが……。リーシア。前回の議題はなんだった」
「そうね。新しい本物の勇者が現れたらしいわ」
「そうか。もう卒業式も終えたらしいな」
「ええ。確か名前はエレンだったはずよ」
エレン。どこかで聞いたことがある名前。一緒に会話した記憶さえある。
「その者の護衛は誰だ?」
「ミカエラ・シャーロットという出来損ないの暗殺者ね。過去に殺した人は一桁しかないわ」
やはりそうだ。銀髪金眼の令嬢と、亜麻色髪の少年。
「わたしたちは、その二人を対象にこの世から消すことにしたわ。しかし、その者にはとても厄介な人がいるのよ」
「メウス・リーファだねぇ! ぼくちんもあの子大嫌い。寒気がするよー」
そこまで情報をリークしているのかと、オレを助けてくれたメンバーの名前を呼ばれる中で恐怖を覚えた。
このままでは、仲良くなった人たちが危ない。彼らがいなければ、オレの安全圏が失われてしまう。
もう、この魔会議の参加者の中で、世界を平和に導いたメウスの真の実力を知る者は少ない。
いるとしてもオレとファルクスくらいだろう。一人例外を挙げるとすればラディルくらいだろうか。
「では、その方向で事を進めるとしよう」
こうでも言っておかねばこれから先何があるかわからない。賛成をしたものの心の中では反対をしていた。
帰り際、オレはラディルに呼ばれ彼女の城に立ち寄った。南西の魔王城前には城下町がある。人間の行き来も激しいこの地域は、人種差別反対派の魔族が暮らしている。
「リザークさんも、おかしいと思われたんですね」
「ああ。まさかな……」
「ええ。そうですね。リザークさんも、ミカエラたちに恩返しがしたいのではないでしょうか」
「そうだな……」
オレにどのような恩返しができるかわからない。また迷惑をかけてしまうかもしれない。
一人帰路につく。人間界上空。王都周辺は七色のカーテンに包まれ、賑やかにパーティーが行われていた。
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