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動物すら殺せない公爵令嬢の暗殺者ですが、神様のイタズラで勇者護衛を任されました。魔王討伐をお願いされたけど、正直難しいです  作者: 八ッ坂千鶴
第5章 暗殺者として

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第48話 エレンの卒業と護衛任命式

 あれから一年後。私のところに一通メッセージが届いた。エレンと交換した文通用の魔法紙に、『この春卒業します』と書かれている。


「メウス。エレンもう卒業なんだね」


 実を言うと、今メウスは私の家に居候している。どうも、今回の件は全てメウスが計画したものであると発覚し、最高司祭から天界への出禁命令が出されたらしい。


 しかし、彼にとっては無傷のようで『人間界のベッドで毎日寝られる!』と大喜びしていた。


「もしかして……」


「計算済み」


「やっぱり。最初からこのために司祭から出禁命令が出るようなことをしたんでしょ!」


「まあねー。おかげで肩こりとかも治ったし」


「そういう問題じゃない!」


 本当にその通りのことになっていた。現在私は十歳。私が暗殺者として活動を本格始動したのは、今から二か月前。


「リザークを倒してから。ミカエラは一気に成長したよね」


「それってどういうこと?」


「だって、この前の依頼。リザークの時同様、現場に行かないで実行したみたいだし」


 それは私がリザーク以外で暗殺依頼を受けた初任務。メウスの提案で私の魔眼を有効活用しようということで、現場を確認したのち自宅から射殺した日のこと。


 ターゲットは中年くらいの強盗。アジトはレイラが突き止めてくれた。ある一種の最終試験のような空気の中、私は暗殺に成功した。


「ミカエラはすごいよ。ぼくにできなかったこと、しっかり実行できたから」


「うん……。だけど、これが本当に〝救う〟ってことなのかな? メウスは……」


「正直ね……。これが本当に救うって定義されたら、ぼくとしてはノーかな? そうだ、君のお母さんが話したいことあるって」


「お母様が?」


 私は部屋から出て一階のキッチンへ向かった。現在お母様は料理中。すぐ隣ではレイラが手伝いをしていた。


「お母様。今時間大丈夫ですか?」


 とりあえず聞いてみる。


「ええ。下ごしらえは終わりましたし、あとはレイラが焼けばいいだけですから」


「わかりました」


 お母様は奥の方から出てきて食卓の席に座る。


「ミカエラ。去年、私がミカエラに再度聞くと言ったこと覚えてますか?」


「えーと……。すみません」


 去年は色々ありすぎた。だから、本当に覚えていない。


「私の顔を見て、悪人に見えるか善人に見えるか」


「今のお母様は、どちらでもないです。善人でも悪人でもない。私のお母様である以上、お母様はお母様です」


「その理由は?」


「私はいろんな命の形を見てきました。だから、お母様を悪い人でもいい人にもしたくない。それが、理由です。物事は外見だけでは判別できません。重要なのは相手の心。この一年で沢山のことを学んできた、私の答えです」


「合格。迷いが消えたようでよかったわ。王都の一大イベントまであと一時間。行きなさい。エレンさんを待たせてはいけませんから」


 そう言って、お母様はキッチンの方へ消えていく。私は一度自室に戻り、メウスとティアを連れて王都に急いだ。


 王都の入口は人だかりができていて、門前からの入場ができないと判断。私たちはメウスの飛行魔法を利用して王城の前まで飛んだ。


「メウス。この方法ってありなの?」


「わからないけど、ミカエラは真っ先にエレンを見たいんじゃない?」


「まあ、そうだけど……」


 そうしていくうちに、着陸態勢に入った。ゆっくりと下降していく。降り立ったのは、王城の正門だった。


 メウスによれば王城の大広間で卒業式が開催されるそうで。私たちは、城の中に入っていく。


 中には背中に剣の鞘を背負った新人勇者が列になって立っていた。だけど、エレンが見当たらない。


「ミカエラこっち!」


 メウスが小声で手招きをする。私は小走りで列の先頭付近に移動した。すると、そこには他の勇者とは違う青い鞘を背負ったエレン。


 入っている剣を見るに、聖剣ゼノン・レグスレイブだった。列では、他の新人がこそこそと話している。


 他に誰がいるか確認する。新人勇者の周りにはシリルの姿。大きな槍と盾を持った青年など、沢山の人が並んでいる。


「では、卒業式と護衛任命式を開始する」


 エレンの祖父のアルバス・ベルンライトが開会を宣言した。エレンは一度後列に移動する。私と同じ十歳になったエレンは、少し身長が伸びていた。


 会場は拍手の渦に包まれる。一人、また一人と卒業証書を受け取り、エレンの後ろに移動する。


 最後に卒業証書を受け取ったのはもちろんエレンだった。同時に聖剣を引き抜き、アルバスの目の前にある台へ乗せる。


「では、聖剣の所有者を決める儀式へ移る。代表として、メウス・リーファ殿。壇上に」


「はい」


 メウスが壇に上がる。そこで、聖剣を手に持った。一瞬軽く頷いたように見えたが気のせいだろう。


 列に並んだ新人勇者が聖剣に触れていく。しかし、どれも弾かれてしまった。最終的に落ち着いたのはエレンで、会場がざわめく。


「もしかして、エレンって元々?」


 黒髪の少年勇者が言った。隣の少女もうんうんと首を動かしている。メウスによれば、今の勇者は聖剣伝説を知らない人が多いらしい。


 だが、これでエレンが本物の勇者であることが証明されてしまった。これには、他の勇者も動揺するはず。


「では、続いて護衛任命式を開始する」


 両サイドに立つ未来の護衛担当が各勇者に近づいていく。その誰もが、様々な実績を持った騎士や傭兵。


 だけど、エレンの隣には誰もいない。すると誰かが私の背中を押した。


「ミカエラ。君がエレンの護衛担当だ」


「メウス?」


「うん。元々はレイラが担当につくみたいだったんだけど。本人の希望で変更にね」


 どこから仕入れてきたのか、メウスがそう言ったので、私はエレンの隣に立つ。すると、突然耳の穴に息を吹きかけられた。


「っ!?」


 思わずピンと背が伸びる。横を見ると、エレンがニコニコ笑っていた。


「ミカエラさん。僕の護衛。お願いしてもいいですか?」


「なんで、私なの?」


「だって、初めて会った時僕を助けてくれたから」


 その言葉に初めて会った時のことを思い出した。それは、夜深い森の中でエレンが野生の熊に襲われている時。


 あの時もお兄ちゃんの言葉が私の背中を押した。もし会えるのなら、血が繋がらなくなったとしても前世と同じように接したい。


「自己紹介は終わったか?」


「『はい!』」


「では、卒業生及び護衛の退場。皆の活躍心より応援させていただくとしよう」


 私たちは王城を出て、街を凱旋する。王都の住民全員が拍手をし、その手を叩く音の雨に打たれながら外に出た。

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次回、卒業式の裏で

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