第47話 暗殺依頼の真実
それから数日後。私はリザークの様子を見て傷跡が塞がれてるのを確認した。メウスによれば意識が戻るまでに半年かかるらしい。
一人一つの命。なのに、リザークはたった一回の死では去ることができない。それがどれだけつらいことか。
「ミカエラ。荷物の整理は終わった?」
メウスが私に質問をする。
「もう少し。あれ?」
「どうしましたか?」
私の隣で剣の手入れをしているエレンも不安そうに言う。
この城にはなぜか編み物のキットが置いてあった。メウスによれば、リザークは新商品収集と同時に小物づくりが趣味らしい。
そこで私は編み棒と毛糸を拝借して、ティアに帽子を編んであげたんだけど……。
「ティア」
「なに?」
「ティアの帽子どこに置いた?」
「身に着けてるけど……」
そう話すティアは現在銃の姿をしている。試しに軽く投げて人の姿になってもらうと、頭に黄色いニット帽をかぶっていた。
「ほんとだ……」
「メウスお兄ちゃん! エレンお兄ちゃん! どう似合ってる?」
ティアは少し前から上機嫌だった。それはそれで嬉しいけど、人の姿になれば城内を走り回るので困っている。
「荷物の準備は終わったみたいだね」
「あー! メウスお兄ちゃんあたし無視したー!」
「あはは。ごめん。ティア似合ってるよ」
「ありがと。メウスお兄ちゃん」
ティアのテンションはどんどん上がっていく。すると彼女の方へエレンが近づき、ニット帽を軽く直した。
「ティアさん。ここ埃ついてます」
「ミカエラの拭き忘れかな?」
「いえ、先程ついたものかと……」
「うふふ。エレンお兄ちゃんもありがと~」
「どういたしまして」
最近もう一つ気づいたことがある。それは、エレンの口調について。最初エレンは公爵家出身で祖父が国王だからだと思っていた。
だけど、可能性があることとして、シリルの口調を真似しているのではと、思い始めている。
すると、誰かが部屋のドアを叩いた。作業をする手を止め、ドアを開けるとそこにはアダムとセリン。シリルの三人。
「皆さん。準備できましたか?」
シリルが言った。
「はい。ちょうど終わったところです」
「そうでしたか。では、帰りましょう」
荷物を持って、城から出る。雪は完全に溶けていた。近くにいた魔族に聞くと、降り積もった雪の原因はリザークらしい。
「皆様おかえりになられるのですね……」
一人の老魔族が言った。彼は、魔族になったリザークを昔から知ってる人物らしい。
「今回は、リザーク様の魔力暴走を止めていただき、ありがとうございます。敵視していたワタクシめも、非はありますので、改めて謝罪を――」
「その……。リザークさんの魔力暴走って?」
「はい……。リザーク様は、元々人間でいらっしゃいます。魔族になるには、親の魔族の力を制御する精神が重要なのです。しかし、リザーク様は、皆様がお連れしているメウス様の忠告を破り、曖昧な精神。不完全な精神で魔族の道を歩まれました」
「それでリザークは……」
「はい。他の魔族はリザーク様を見捨てたのですが、ワタクシは放っておくことができず。時折魔力の波長に負けて苦しむ姿を……。何度も、何度も見てきたのです」
老魔族の瞳がうるうると濡れ始める。そのリザークの姿が、とても見ていられないほど辛かったのだろう。
「リザーク様は、人目につくところで自分に課された無数の命を失うことを嫌いました。だから、彼の命が消える直前は、毎回自害することを望んでおられました。そこで、ワタクシと長い付き合いであるシリウス様が、腕利きの暗殺者がいると」
「シリウスさん?」
「それって、ボクのおじ様ですか?」
シリルが私の言葉に重ねて言う。
「シリルさん。それって……」
「はい。ボクはシリル・ヒューストン。シリウス・ヒューストンの孫です」
「なんと! それなら話が早い」
老魔族は、嬉しそうな顔をした。
「シリウス様がお連れしたのは、レイラ・シャーロットという黒髪の少女でした。彼女が、ミカエラ様。貴女のお姉様ですね」
「はい……」
「実は、リザーク様。体調不良になる前、ミカエラ様のことを沢山話されておりました」
どうやら、レイラは私のことをリザークに話していたらしい。だから、彼は消えかけて暴走した命の灯を私に託したのだろう。
「しかし、不安点も多かったと……」
「不安点?」
「はい。レイラ様が『わたしの妹は人を殺せないどころか、動物すらも難しい』と。ですから、自身の命をミカエラ様に託して、上手く行くか。そこを非常に悩まれてました。この件に関しましては、メウス様とエレン様もお聞きになられてるかと」
「そうなの?」
私の問いかけに、メウスとエレンが頷く。
「ぼくたちは、ミカエラならできるって信じてたから。その時にリザークの具合がね」
「はい! そうなんです!」
「つまり、あの時のメウスの言葉って……」
「そう。きっとミカエラは前世のお兄さんのことを思い出すと思ってた。これもぼくの計算で導き出した答え。違和感なかった? 君が作戦を決行した時」
たしかに、廊下には誰もいなかった。
「廊下に誰もいなかったのって」
「はい。リザーク様の希望で、城内の出入りを制限していたのです」
死を望む魔王。本当に私に賭けていたのだと気づく。ちょうど、メウスが手配したペガサスの馬車が到着した。
馬車に乗ると、老魔族の後ろに若いメンバーが集まってきた。沢山の魔族に見送られ、シャーロット領へと向かう。
その旅は一瞬で、自宅付近の野原に着陸した。ペガサスは首をこくりと動かし、すぅーっと消えていく。
「皆さん。私の家はこちらです」
私は自分の家にみんなを案内した。入口にはお父様が立っている。隣には、レイラも並んでいた。
「お父様! お姉ちゃん!」
「ミカエラ! おかえり!」
お父様が駆けてくる。私を強く抱き、肩が冷たく濡れた。
「お父様。泣かないでください」
「仕方ないだろ。もう一ヶ月以上もいなかったんだぞ。ミカエラ。大きくなったな。シャーロット領では嬉しい知らせでいっぱいだ……」
「あ、ありがとうございます……」
相変わらず親バカなお父様。この騒ぎを聞きつけ、お母様も家から出てきた。
「ミカエラ。おかえりなさい。エルヴィン、ミカエラが困っていますよ」
「すまないフラン。それにしてもかなり人数がいるな……」
「お初にお目にかかります。先日はおじ様がお世話になりました、シリル・ヒューストンです」
すかさず自己紹介をするシリル。
「セリン。王都で鍛冶師をしている」
「……」
どうもアダムは自己紹介をする気がないようで、一人メンバーから外れ天界に帰ってしまった。
「セリンさん。シリルさん。私らの娘がお世話になりました。とても嬉しく思います」
「それでは、今いる皆さんで食事をするわよ。今日はわたしが作るから」
レイラの手料理。何が出るかワクワクしながら。私たちは家に入った。
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次回、エレンがついに学校を……。




