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暗殺者なのに動物すら殺せない公爵令嬢ですが、神様のイタズラで勇者の護衛を任されました。魔王討伐をお願いされましたが、正直難しいです  作者: 八ッ坂千鶴
第5章 暗殺者として

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第46話 重圧

 少しの睡眠から目を覚まし、いつの間にか銃の姿になっていたティアを引っ張り出しながら布団の外へ移動する。


 先に起きていたらしいメウスは、近くの机で何かを書いていた。ティアを抱えて近くに行くと、何やら契約書みたいなもの。


「メウス。これは?」


「暗殺依頼契約書。違法暗殺はしてほしくないからね」


「たしかに……。勝手に殺すのもどこか嫌な気もするし」


「でしょ。簡単に説明すると、依頼人および依頼対象はリザーク・ヴェルム。本人記入じゃないから、代理依頼人としてぼくの名前を書いておいた。ちょうど完成したから、ここ血判を押して」


 今まで何度も見たメウスの黄金に光る血。その隣に私の血判を押す。すると二つの血判が用紙の上で動き一つに重なった。


「これで契約完了。ここから先はミカエラに託すよ」


 全ての責任はメウスの一言で重くのしかかる。私はリザークを救うため、リザーク周辺の人物に見つからぬよう暗殺をする。


 ちょうどティアが目を覚ます。なぜわかるか、それは銃身が熱を持ったから。


「温かい……。メウス。ティア起きたからちょっと触ってみて」


「うん」


 メウスが手を伸ばす。銃身を優しく撫でると白く光った。


「ふぃー。よく寝た」


「おはよ。ティア」


「おはようーミカエラー。メウスお兄ちゃー」


 メウス以上に子供なティア。どうやら、リザークの件を忘れているらしい。これから作戦決行なのに、どうしようもないスナイパーライフル。


 そんな彼女も憎めない。私の周囲にいる人はどれも憎めない存在ばかりだ。


「ティア。リザークの暗殺。手伝って」


「あんさつ? うん!」


「じゃあ銃に戻って」


「りょーかい!」


 ティアは再び光に包まれると、ゴトンと音を立てて落下した。彼女にとってはこれくらいへっちゃらなのか、普通に置かれている。


 ヘカートを持ち上げ、部屋の入口に立つ。発砲は今いる部屋で行う。エレンがまだ寝ているけど問題ないと思う。


「ティア。少し前に言ってた術式。教えて」


「了解」


 会話を通じて意識を向ける。そして、銃を構える。ヘカートは基本置き型。だけど、このヘカートはセリンの改良によって、かなり軽くなっている。


「ミカエラ。その状態でも……」


「うん。ティアと話せる」


「物に意思が宿る。本当だったんだ……」


「え?」


 メウスはそう言うと、私の後ろに立った。そっと首元が冷たくなる。思わず身体を縮めてしまい、軽く震えた。


「リザークを殺すには、今のミカエラでは難しい。ぼくの魔力とデータを全て送る。ぼくの魔力切れは考えなくてもいい」


「う、うん……」


「ぼくの手では殺すことも、救うこともできなかった。そんなリザークを救ってほしい」


 ――――――――――――――――――


『そうだ。ここはお前にかけるとすっか……。今のメウスを救えるのは、ミカエラだけだ……。頼むメウスを救ってくれ!』


 ――――――――――――――――――


 いつかのセリンの言葉と重なる。メウスは本当にリザークを救いたいんだ。だけど、そのためには一度殺さなければならない。


 私が血でこのティアを汚したくないのは、ただのエゴなのかもしれない。だけど、そのエゴに囚われてたら何も始まらない。


 一番重要な決断。ティアはやる気満々のようで、銃が熱されたように私を急かす。


 ――『美香。銃は誰かを殺すためじゃないんだ。知ってるか? アメリカの銃の扱いは決して正解とは言えない。状況証拠や証言も得られないまま殺すのは、事件の解決には至らない。アメリカは世界を支配している。だけど、そんな国が粗末に命を奪っていたら。美香は人を救うために何をする』


「ごめんなさい……。大輝お兄ちゃん……」


 久しぶりに実兄の名前を呼んだかもしれない。、私がリザークの命を奪う。それは、本当に事件解決に繋がるのだろうか。


 それが脳裏に引っかかって、魔法を唱えようとする口が止まる。


「お兄さんのこと。思い出してたんだね」


「ッ!?」


「大丈夫。君が正しいと思ったことをすればいい。答えに正解は複数あるんだ。どれも間違いで、どれも正解。ただ、踏み間違えないで。リザークが、本当に求めているものは何か。洞察力が高いミカエラならわかるんじゃない?」


「メウス……」


「頑張って!」


 メウスに背中を押され、銃を構え直す。瞬間、目元が熱くなった。見えたのはリザークの部屋。周辺に人の気配なし。


「やります」


「あたしは準備おけ」


「メウスは?」


「ぼくも大丈夫。今から魔力を送る」


 見える世界をさらに鮮明にさせていく。そして、リザークの左胸にターゲットを絞り込む。


スケルト(透過銃弾よ)! ホーリス(閃光となり)! シャフロム(無数に)! ホーミング(追従し)! バーン(穿て)!」


「発射威力を最大出力に変更! 発射!」


 ヘカートから発射される銃弾は、部屋のドアをすり抜けて飛んでいく。そして、リザークの部屋へ一直線に飛んで行った。


 遠くへ飛べば飛ぶほど威力が上昇する特殊な銃弾。それは、リザークの左胸に何度も命中する。


 苦しんでいる様子はない。左胸には大穴が出来上がり、動く心臓を射止める。


「メウス。リザークの状況を教えて」


「え、えーと……。心臓止まったみたいだよ」


「ほんと?」


「うん。ほら、契約書。血判が青くなってる」


 メウスに渡された契約書を見ると、たしかに血判が青くなっていた。任務を終えたことに、全身が重だるくなる。


 人を殺すのは非常に精神が削られる。それをクリアしたのだから、正直安心した。


 もちろん罪悪感もある。だけど、そんなことよりもリザークの苦しみを解除できたことに安堵があった。


「じゃ、帰ろうか」


「うん。シャーロット領へ」

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第5章も残り4話です。頑張る(修正)

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