第31話 思い出に満ちた世界①
◇◇◇ミカエラ目線◇◇◇
私の一日はあっという間だった。メウスが私と話したいと言ってたので、今は彼の部屋へ向かう途中。
後ろからの気配。振り向くとエレンが着いてきていた。私は振り切ろうとしたが、簡単に捕まってしまう。
「メウスと二人っきりなんて、僕が許しません!」
「はぁ……。じゃあメウスの許可を貰ってからね……」
「わかりました!」
私はメウスの部屋に着くとノックした。今日彼はお粥しか食べていない。どうやら食が細くなっているみたいで……。
「ミカエラ。ごめん……」
「大丈夫。エレンもいるけどいい?」
「問題ないよ」
メウスはベッドに横たわったまま、そう答えた。エレンを部屋に入れて、久々の三人だけになる。
「三人で話すのは、シャーロット公爵家から王都に向かった時以来ですね」
「そうだね……」
結局このメンバーで話すのは、エレンとメウスだけ。メウスは儚い声で話してくれる。エレンもそれを理解しているのか控えめ。
「ミカエラはどう思う?」
メウスが私に聞いてくる。
「なんか、今が一番な気がします」
そう答えた。メウスはそんな私に触れようとする。だけど、まだ私に魔族の力が残っているのか、彼の手は弾かれる。
「悲しいなぁ……。なんか嫌われているみたいで……」
「そうですね……。僕もあの時みたいに……」
「私もです。三人で一つのベッドで寝たい。だけど、しばらくは難しそうだね……」
「はい……」
メウスは暗い顔で床を見つめた。私はそんな彼を慰めたいと思ったけど、逆効果になるんじゃないかと思ってしまう。
この状況を切り抜けて、今回の事件を解決して。それができるまで何日かかるか。シリルやアダム。セリンは、主犯探しに奔走中。
「やることないね……」
メウスが低いトーンで切り出す。特に話すことはない。そう言っているかのように。
「メウス。今は歩けそう?」
「ううん。全身が重くて……。起きるのがやっとだよ」
「そう……」
これではメウスを連れ歩くのは難しそうだ。私はメウスの部屋を色々見て回る。
彼が寝ているベッドはセミダブルくらいあった。装飾はされてない。客人用のものだとわかる。
壁には色々な絵が飾ってあった。基本は森の絵だけど、とても綺麗に丁寧に仕上げられている。
「ミカエラさん。この絵見てください」
エレンが言った。私は彼のところへ行き、絵を見る。そこには、豪快に水しぶきを起こしている滝の絵画が飾ってあった。
「行ってみたいですね……。ここなら気持ちをスッキリできそうです。よく見てください。金箔も使われてますよ」
「ほんとだ……。メウス。これどこかわかる?」
土地勘のない私は、メウスに聞いた。のっそりと身体を起こし、絵をじっくり見つめている。
「これは……」
メウスが考えるように零す。
「龍神の滝かな?」
「『龍神の滝?』」
「うん。ベルンライト領にある観光地。桜だとか梅の木が植えられてて、人気の絶景スポットだね……。たしか、ベルンライト領全域に流れる聖水の源泉地だったはず……。あれ?」
メウスが言葉を詰まらせた。なにか思い当たることがあるのだろうけど、しばらく静寂に包まれる。そして、数分後。
「メウスさん。龍神の滝って……」
「そこに行けば、ぼくの体調が戻るかもしれない……。龍神の滝の聖水は非常に濃いんだ。だから人が飲むにはかなり離れた地域に行かないと、美味しく感じない。だけど、今のぼくなら……。源泉をそのまま……」
「メウス! ヨダレ出てる!」
「おっとごめん……。聖水依存性なってるかも……えへへ!」
メウスの冗談は冗談どころではないのは、誰よりも私が知っている。彼は、やると決めたらすぐやるタイプ。それが正直怖い。
メウスはそろそろ寝ると言い、布団に潜り込む。エレンも久しぶりにアルバスと寝たいそうなので、今日は超久しぶりな一人部屋だ。
私の部屋はシンプルな白塗りの部屋だった。部屋の窓側にチェストが置かれていて、そこには花瓶が置かれている。
「今日も色々あったなぁ……」
私はこれまでのことを思い出してみることにした。
私の前世は工藤美香というごく普通な女子高生。サバゲーを遊んでいた時に、射殺された。気がついたら、メウスに呼び出されている状況。
転生先はシャーロット公爵家だった。探偵業をしているお父様。それを支えた元暗殺者のお母様。ヤキモチ妬きの姉。
姉とは長らく会ってない。そもそも、私と彼女の距離が遠くなっていった。そんな彼女を私は気にしないことにしている。
ここに来るまでの間に色んな人と出会った。神様で辺境作家のメウス。勇者見習いのエレン。鍛冶師で獣人のセリン。
国王でエレンの祖父であるアルバス。騎士団長でハーフデーモンのシリル。エレンの母親のアイナ。
もっと言えば数えきれない人を見てきたかもしれない。この短い間に、色んな世界を歩いてきた。まだ続きがあると思ってしまう。
誰かが私の部屋のドアを開ける。入ってきたのは、眠りについたはずのメウスだった。その右手には一冊の本が握られている。
「メウス。その本は……」
「新しく作った旅の記録帳。ここの魔法陣に血判いいかな?」
「それより体調は? 寝てた方がいいよ」
「大丈夫……。だと思う……」
メウスは私の部屋のチェストに本を置いた。そこに私が血判を押す。すると、一気にページ数が増えた。
「これで、ミカエラの記録が全部載ったね……。君のデータはものすごく興味があったんだ」
「え?」
「だって、ぼくが見てきた中で、唯一生存した聖女だから。君が闇に手を染めたとしても、元の世界に戻れるように」
メウスはそれだけ言って部屋から出ていった。本のページはざっと見100ページはある。
こんなに私は過ごして来たんだと、本を枕元に置き、目を閉じた。
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②はしばらく後になります。
次回。ミカエラは……。




