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暗殺者なのに動物すら殺せない公爵令嬢ですが、神様のイタズラで勇者の護衛を任されました。魔王討伐をお願いされましたが、正直難しいです  作者: 八ッ坂千鶴
第4章 ベルンライト領にて

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第30話 メウスの過去

初のキャラ名ナンバリング回です

この話から恋愛パートに入ります

 ◇◇◇メウス目線◇◇◇


 ぼくの家はブライアント領の辺境にあった。のどかで、澄んだ空気で満たされた場所。そこで、両親は酪農をしていた。


 乳牛から肉牛までを中心に、羊や豚、鶏も飼育していた。自宅から離れた場所は、家畜の臭いに満たされていて、今でもそれが気に入らない。


 五歳の時、ぼくは初めて包丁を持った。父上から豚の解体を頼まれ、耳を劈く絶命の声が耳を塞ぎたくなるほど、嫌いだった。


 食物連鎖。弱肉強食。それが、ぼくにとってあまり好きではない言葉になった。ぼく自身生きていくためには犠牲は必要だと、心のどこかで覚えていた。


 家畜を食肉に変える作業。この世界には人体に安全で安楽死できるような薬品なんてない。絶命の音に慣れる必要があった。


 だけど、ぼくにはそれが出来なかった。動物を食べるなんて、自分には難しいくらい悲しかった。


「メウス、もっと力を入れて」


 父上が優しく言う。だけど、ぼくは上手く作業を行うことすら……無理だった。


 それでも、期待に応えるため解体作業を手伝った。やがて、ぼくは感情を失った。


 七歳の時、ぼくは食肉やミルクを売るための交渉術を学んだ。言葉を上手く使うのはとても難しい。だけど、それだけが取り柄だっった。


 八歳の時。ぼくに天職が授けられた。父上と母上は酪農家の天職を希望していたようで、ぼくは親の意思に従うことだけを考えていた。


 しかし、ぼくに与えられた職業は勇者だった。父上と母上は神からの手紙を引きちぎった。だけど、ぼくはそれから解放される。


 ぼくは、王都にある勇者養成学校で暮らし始めた。平民で辺境で貧相な服装しかしないぼくは 貴族出身の勇者見習いに沢山罵られた。


 毎日のようにいじめに遭い。毎日のように食事の邪魔をされた。その年まで平民の勇者見習いは一人もおらず、ぼくが異質とされる始末。


 それでも、ぼくは這い上がって数字で世界を見つめる毎日を過ごした。ぼくは、そんな生活が退屈に感じなかった。


 今の自分に足りないパラメータを洗い出し。新しい魔法を沢山作り。そして、他の貴族に自慢した。


 ぼくが編み出した魔法は、貴族組には使えなかった。やがてぼくの異質さは際立ち、別の意味で孤立した。


 三年間の在学期間のうち、二年間を一位の成績で通過した。卒業時には首席となり、二位とは大差をつける状態。


 ぼくは晴れて正式な勇者になった。旅をしていく中で、ぼくは聖剣と出会う。その守り人は他の卒業生も挑戦したと言った。


 しかし、その生徒は聖剣を台座から抜くことが出来なかったと言った。さらに詰めると、その生徒はぼくに反感を持っている人物であることが判明した。


 ぼくは聖剣を引き抜こうとしたが、ビクともしなかった。だけど、その聖剣がぼくに応えたのか、自ら手に乗った。


「お前さんが本物(・・)の勇者ということかい」


 守り人は言った。

 

「本物?」


 ぼくは質問をする。


「三十年に一度本物の勇者が現れると言われててね。お前さんはどこの出身だい?」


「ぼくは……。平民です……。それも辺境の……」


「なんと!?」


 ぼくが聖剣を手に入れたことは、世界中で話題になった。聖剣はぼくが今も持っている。今は神の世界に大事に飾っている。


 本物の勇者はぼくだけでいいと思っていた。それでも、ぼくは不安を隠せないでいた。


 〝『勇者は魔王を討伐しなければならない』〟


 その条約に似た項目がぼくにとって苦痛だった。なぜ魔王を殺さないといけないのか。その答えは今も見つかっていない。


 ぼくは魔王を殺さなかった。いや、殺せなかった。魔王の鼓動が数字で見えてしまったから。


 魔王も魔族も生きている。そう知って、命を奪うことができなかった。ぼくは、誰かを殺すことを、本来持っていた真理に反していると気づいたから。


 魔王の反乱は交渉術でクリアした。それからは、長く平和が続いた。ぼくは、勇者養成学校の祝賀会に招待された。


 聖剣なんて、持っていけなかった。またいじめられる。それが嫌だったから。稼いだお金で家を買い。実家から遠く離れた土地に建てた。


 そこで、ぼくはひたすら本を書いた。数字で世界に枯渇しているものを調べ、時には世界中を回って地図作りもした。


 世界の形が可視化されていく中で、ぼくは理解してしまった。この世界は全てポイントでできていると。


 辺境作家生活をして数年後。ぼくの前に金髪の男性が現れた。ぼくの上司になるアダム・エル・フォーレンだった。


「メウス・リーファ。其方はこの世界を良くしたいか?」 


「え?」


「其方はこの世界の理を書き換え、そしてより良いものに変えたいか?」


 ぼくは、知らず知らずのうちに頷いていた。それからしばらくして、ぼくに変化が訪れた。


 製本をしている時、ぼくは誤って指を切ってしまった。それは初めてのことではなかったが、普段見ている赤ではなく金色に光っていた。


 数日後、アダムが再びぼくの前に現れた。手には石版を持っていて、ぼくを天界に案内すると言った。


 天界はものすごく広く、ぼくのために用意された部屋もあった。神殿も作られ、自分が神になったんだと実感した。


 ぼくは、神としての生活を謳歌した。時々現れる転生者と沢山話し、そして本を沢山作った。


 数年が経ち、ぼくは本名であるメウス・リーファから、メビウス・デュクスに改名した。前者を人間界で使い、後者を天界で分けた。


 それから、さらに年数が経ってぼくは一人の少女と出会った。それは、後に聖女となる工藤美香だった。


 聖女の文献は少なかった。ぼくも別の聖女と出会ったが、無茶をするぼくを救うために犠牲となった。


 ぼくは美香を本物(・・)にしたいと思った。だけど、彼女はぼく以上に純粋無垢で、何に対しても優しくする子だった。


 今では無理なお願いをしたと思う。彼女の成長が見たくて、ぼくは彼女と行動すると決めた。


 そして、今ぼくは――。

読んでくださりありがとうございます


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次回、メウスを放っておけないミカエラは……

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