第27話 数字の本音
転生/転移 (ファンタジー)ランクインしました。
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私たちは、敵に見つからないように気をつけながら、ゆっくりと進んでいた。
最初は着いてこないと言っていたセリンも、メウスが心配なのか同行している。
セリンの精錬道具や簡易鍛治セット。メウスが持ってきた荷物はすべてアダムが持っている。
「そんなに持って大丈夫なんですか?」
エレンがアダムに聞いた。
「問題ない。これくらい軽い方だ」
無表情でそう言うアダム。だけど、その言葉は呆れが混ざっていた。元々メウスの荷物は本人に持たせる予定だったようだが……。
「なんで、力が……」
本人も不明な身体の脱力感があるようで、王都に向かう際軽々と持ってた荷物が重く感じると訴えた。
「まだ身体が回復してないんだと思う」
「まあ、そうだね。だけど、ぼくの計算が外れるなんて……」
「そもそも寝ながら計算を――」
「普段からそうしてるよ……。石版に貯まるポイントも、相手の出るタイミングも、言葉の流れも全て……」
メウスは悔しそうにぼやく。ただの当てずっぽうにも見える。それも、自分が勝手に定めた数字で。
しかし、先程メウスがアダムに五万ポイントを付与した時、アダムは拍子抜けに尻もちをついていた。
「メビ――」
「アダム先輩。今はメウスって呼んで」
「は、はぁ……。ではメウス。なぜ貴公はそんなのも計算に、数字にこだわるのだ?」
アダムはそんなメウスの思考に不満があるのか、強めに聞いている。上下関係としてこうなっているのかもしれない。
実際、アダムはメウスよりも順位が二つ上の神だ。後輩の面倒を見るのも、彼の仕事なんだと思う。
「数字にこだわってるんじゃない。数字を見たくないから、自分で先の数を導き出しているだけだよ……」
「それが誤算になったというのに、なぜ認めようとしない」
「認めようとしてないんじゃない。計算外なのは計算外なんだ。ぼくが作った偽物を攻撃したのは、黒髪だった。だけど、ミカエラは銀髪だよ。どこかで暗躍している人がいるかもしれないんだよ?」
メウスが右手の人差し指をクルクル回しながら言い訳をする。黒髪。たったそれだけでは証拠にもならない。
メウスが書いた『勇者魔王伝説』には、人口に合わせた髪の色の分布が書かれていた。あれは旅の記録も入っている。
そこには、黒髪は全体の九十パーセントと書かれている。つまりは、この世界にいる人間のほとんどが黒髪という計算。
「メウス。他にわかることある?」
「ごめんミカエラ。それしか情報がないんだ……」
「そう……」
私は、空を見る。この世界には何人の人が暮らして、何種類の人種がいて。どれだけの魔法が存在するのか。
今いる地域以外にも、街や国があるのか。それが気になっている。だけど、今はそれを考えている暇なんてない。
目の前のことを終わらせる。それが一番だ。
「メウス。エレンの家まであと何日かかりそう?」
「わからない。頭が回らないんだ。しばらくは数字に縋ることもできないと思う……」
「メウス。なんか自信失ってるみたいだから、ミカエラさんもあまり無理させないであげた方がいいよ」
エレンが私に教えてくれた。メウスは本当に調子が狂ってしまっているみたいで、今後上手くいくかすらもわからない。
「無理するからだろ。この! ミカエラ嬢がいなかったら、メウスは死んでたんだぞ?」
セリンが怒りを隠しきれない様子で言いつける。メウスは肩をすぼませて、トボトボ歩いている状態。
こんな中でも、シリルだけが冷静だった。周囲を警戒しつつ見回して、水の球体を器用に動かしながら真っ直ぐ進んでいる。
「シリルさん。その球体は?」
気になったので聞いてみる。
「これですか? これは遠視用の魔法ですよ。これがあるだけで遠くのものも見えるんです。ボクの得意な魔法でもあります」
「すごいですね……。そんな魔法あったんだ……」
「これも、メウス様のおかげですよ。この世界の新魔法のほぼ全てがメウス様が編み出したもの。ボクでは到底できない技です」
メウスの人気は魔族でも話題になっている。それだけ彼は世界に貢献していて、そのギャップに驚かされる。
改めて空を見る。そこには、薄曇りの中に光る月があった。今日は頼りない三日月だ。明るく照らす訳でもなく、中途半端は光を放つ。
セリンがここで野宿をしようと言い出す。幸い、メウスの荷物にテントが四つあったので、それを全て設置した。
今回メウスはアダムとセリンの二人と寝るらしい。仕方ない。今彼は私に触れられないのだから。
寝袋の追加はアダムがしてくれた。神の世界にあるメウスの部屋から、足りない分を補充してくれる。
「メウス。寝袋はこれで大丈夫なんだな?」
「うん。ありがとアダム先輩」
「礼などいらん。しかし、食料をどうするか……」
直後、誰かのお腹が鳴る。犯人はエレンだった。彼は年齢にしては大食漢で、野宿で食べられる量でも足りないらしい。
「ぼくの荷物に携帯食料ない?」
「けいたいしょくりょう? 一体なんのことだ?」
アダムが疑問符を浮かべ、メウスに聞いた。
「緊急時に食べるものだよ。少ない量でも腹持ちはいいからね」
メウスは『自分で探す』と言って、荷物を漁った。しかし、見つからないのか難航しているようで……。
「携帯食料が盗まれてる……」
「『え!?』」
結果、食べ物がない状態となってしまった。アダムに携帯食料を取ってきてと言っても、本人は理解できてないためお願いもできない。
加えて、ここには川もなかった。いるのは、ウサギなどの小動物くらい。そういえば、昔ウサギ肉のシチューを食べていた。
本当は可愛いウサギを殺したくない。でも、今の私たちには食べ物がない。
これが、弱肉強食というものなのかと、食物連鎖というものなのかと思い知らされる。
「ウサギ狩りをして、食料を調達するのはどうでしょうか? 私が見える範囲では、ここ周辺に群れが十。総匹数は六十はいると思います」
「ミカエラ……」
先に反応したのはメウスだった。私は動物を殺したことがない。殺すのを躊躇ってしまう癖がある。
だけど、今だけはその気持ちを押しやって、みんなで食べるものを増やしたい。生きるには、そうするしかないから――。
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次回!!!!!ミカエラ、初狩猟!?




