第26話 神であるということは……※イラストあり
後書きにキャライメージがあります
メウスの白い肌がより一層白くなる。金髪のがっしりとした男性アダムは、床に穴が空くのではないかというくらい強く踏み込む。
「メビウス! 神議会に参加せずどこをほっつき歩いていたかと思えば。ここで道草を食っていたのか!」
「ちょ、アダム先輩!?」
アダムはかなり怒っているようだ。神議会がなにかは知らないけど、かなり重要なことを忘れていたようで……。
「ミカエラ……たた……」
「はぁ……。神議会がなんだかわからないけど。重要な会議のことなんでしょ? 結局、仕事してない――」
「したって! アルバス王を救ったじゃん!」
メウスは言い訳を繰り返す。これは、相当な罰を与えるしか無さそうだ。私は近くにあったナイフを手に取り、黒くなった髪を切る。
それを編んでボール状にして……。それをメウスに向けて投げた。
「や、やめ……」
相手が拒絶したとしても、容赦はしない。神としての自覚がないメウスには、これが一番の方法だから。
「すみませんでした! 先輩!」
「まあいい。次にこのようなことをしたら……。今度こそ『エル』の称号を剥奪するよう、最高司祭に報告する。いいか?」
「わかりました!」
ようやく事態を飲み込めたらしいメウス。説明している暇がないのか、大慌てで戻る準備を進めていた。しかし……。
「あれ? ぼくの石版がない……」
「メウス。王城に忘れてきたんじゃない?」
「王城……王城……そうだ! 行って――」
「待てメウス! お前はまだ病み開けなんだぞ!」
セリンがメウスを止めて、状況をアダムに説明。荷物の回収はアダムがしてくれることになる。
本人も最初は嫌がってたみたいだけど。
「メウス。アダムさんって……」
「ぼくの上司。上級階級第一位の最高神だよ。まあ、その上に最高司祭っていう、超級存在がいるけどね」
「メウスすごいですね……」
エレンが興味深そうな表情で、メウスの周囲を歩き始めた。まるで、探偵みたいに。
「メウスはどうして、神に?」
「それはね……。ぼくの功績が認められたからだよ。神になると下級存在になる。そこからはランキング制で沢山貢献してポイントを稼ぐ」
「なるほどです……。神も大変なんですね……」
「まあねー」
エレンは理解できたのか、できてないのか。それに相手をするメウスも楽しそうだった。
私は、その間髪のケアをする。まだ聖水の入った桶が二つ。どちらも穢れている様子はない。
血が濃かったのか、聖水は未だ黄金に光っていた。一つはメウスの水分補給用に取っておくとして、黒く染まった髪を洗う。
この世界にはシャワーとかがない。それなりに労力が削られるけど、そこまで進歩していないから……。
「ミカエラ。髪が……」
エレンが私の髪を指摘する。セリンが手鏡を持ってきたので見てみると、一回しか洗っていないにも関わらず銀色に光っていた。
「メウス。これどういうこと?」
「え? えーと……」
メウスが言葉を詰まらせる。その後も私は聖水で洗う。ケアを毎日すること。それが、私には不要ってこと?
ドアのノック音。荷物を取りに行ったアダムが戻ってくる。メウスは私の質問を無視して、大きな荷物を漁った。
「あった。ぼくの石版。アダム先輩。謝罪ポイントとしてですけど……。何ポイントをご希望で?」
「それよりも、話が終わってないのではないか?」
「うげッ!?」
アダムの洗礼。メウスは石版をテーブルに置き、操作を始めた。私はその姿を見て前世の兄を思い出す。
「アダムさん。メウスは――メビウスは王城で神殺しに遭ったんです。解呪は私がしました」
「すなわち、其方が今の聖女というわけか……。天職はなんだ?」
アダムが私に質問をしてきた。私は嘘を言えない。たとえ他の領地の人がいたとしても。
「暗殺者です。ですが、人を殺したことは一度もありません……」
「そうか。信じられんな。歴史書には其方がアルバス国王を殺したことになっている」
「アダム先輩。アルバス国王はぼくが逃がした。彼は無事だよ……」
こちらには明確な証拠がない。一番の証拠として使えるのは、アルバス国王の無事くらいだ。
「ミカエラ嬢。髪が戻ったな……」
セリンが言う。
「はい。これはどういう……」
「きっと聖女の血が濃いのだろう。血の濃さは力の強さでもある。どうせミカエラ嬢は生き物が好きなんだろ?」
「はい。大好きです。生き物を殺すなんて以ての外。傷ついた人を見つければすぐに助けるし、それが害のある生き物でも怪我はさせません」
私がそこまで言うと、アダムが近づいてくる。彼をセリンが止めようとするが、力が強いのか吹き飛んだ。
「ミカエラと言ったか。銀髪金眼。聖水が黒くなっていて、他の桶の水は金色……」
「はい……」
「わかった。今回の件は見逃すとしよう。最高司祭にも歴史書の修正を提案しておく」
アダムは神が住む世界に戻ろうとする。そこを、メウスが止めた。
そうだ、今から私たちはエレンの家に行く。だけど、この状況では危険。私は指名手配されているし、メウスは本調子じゃない。
「アダム先輩。エレンの家に行くまで護衛頼んでもいい?」
「護衛だと?」
「うん。ポイントはぼくの『エル』称号が消えない五万ポイント。それくらいあれば十分だよね!」
メウスは一か八かの提案をしてくれた。私はさすがに無理があるだろうと思ったが、アダムは快諾をする。
「ぼくのポイントから五万ポイント引いて……。今五十六万八千ポイントだね」
「メビウス……。計算が合わな……」
「アダム先輩に送信っと……」
「五万ポイント増えた……だと……?」
アダムは驚いた拍子に尻もちをつく。こちらもメウスと一緒で、恥ずかしいという気持ちがないらしい。
「では、出発しようか。ミカエラの髪はぼくの魔法で色を変えて……。っと鏡を見てみて」
「はい。あれ? 銀色だけど……。茶色が混じってる!」
「君の髪をフランさんと同じにしてみた」
これで対策は完了。私たちはエレンとメウス、二人の案内でエレンの実家を目指した。




