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暗殺者なのに動物すら殺せない公爵令嬢ですが、神様のイタズラで勇者の護衛を任されました。魔王討伐をお願いされましたが、正直難しいです  作者: 八ッ坂千鶴
第3章 王都にて

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第26話 神であるということは……※イラストあり

後書きにキャライメージがあります

 メウスの白い肌がより一層白くなる。金髪のがっしりとした男性アダムは、床に穴が空くのではないかというくらい強く踏み込む。


「メビウス! 神議会に参加せずどこをほっつき歩いていたかと思えば。ここで道草を食っていたのか!」


「ちょ、アダム先輩!?」


 アダムはかなり怒っているようだ。神議会がなにかは知らないけど、かなり重要なことを忘れていたようで……。


「ミカエラ……たた……」


「はぁ……。神議会がなんだかわからないけど。重要な会議のことなんでしょ? 結局、仕事してない――」


「したって! アルバス王を救ったじゃん!」


 メウスは言い訳を繰り返す。これは、相当な罰を与えるしか無さそうだ。私は近くにあったナイフを手に取り、黒くなった髪を切る。


 それを編んでボール状にして……。それをメウスに向けて投げた。


「や、やめ……」


 相手が拒絶したとしても、容赦はしない。神としての自覚がないメウスには、これが一番の方法だから。


「すみませんでした! 先輩!」


「まあいい。次にこのようなことをしたら……。今度こそ『エル』の称号を剥奪するよう、最高司祭に報告する。いいか?」


「わかりました!」


 ようやく事態を飲み込めたらしいメウス。説明している暇がないのか、大慌てで戻る準備を進めていた。しかし……。


「あれ? ぼくの石版がない……」


「メウス。王城に忘れてきたんじゃない?」


「王城……王城……そうだ! 行って――」


「待てメウス! お前はまだ病み開けなんだぞ!」


 セリンがメウスを止めて、状況をアダムに説明。荷物の回収はアダムがしてくれることになる。


 本人も最初は嫌がってたみたいだけど。


「メウス。アダムさんって……」


「ぼくの上司。上級階級第一位の最高神だよ。まあ、その上に最高司祭っていう、超級存在がいるけどね」


「メウスすごいですね……」


 エレンが興味深そうな表情で、メウスの周囲を歩き始めた。まるで、探偵みたいに。


「メウスはどうして、神に?」


「それはね……。ぼくの功績が認められたからだよ。神になると下級存在になる。そこからはランキング制で沢山貢献してポイントを稼ぐ」


「なるほどです……。神も大変なんですね……」


「まあねー」


 エレンは理解できたのか、できてないのか。それに相手をするメウスも楽しそうだった。


 私は、その間髪のケアをする。まだ聖水の入った桶が二つ。どちらも穢れている様子はない。


 血が濃かったのか、聖水は未だ黄金に光っていた。一つはメウスの水分補給用に取っておくとして、黒く染まった髪を洗う。


 この世界にはシャワーとかがない。それなりに労力が削られるけど、そこまで進歩していないから……。


「ミカエラ。髪が……」


 エレンが私の髪を指摘する。セリンが手鏡を持ってきたので見てみると、一回しか洗っていないにも関わらず銀色に光っていた。


「メウス。これどういうこと?」


「え? えーと……」


 メウスが言葉を詰まらせる。その後も私は聖水で洗う。ケアを毎日すること。それが、私には不要ってこと?


 ドアのノック音。荷物を取りに行ったアダムが戻ってくる。メウスは私の質問を無視して、大きな荷物を漁った。


「あった。ぼくの石版。アダム先輩。謝罪ポイントとしてですけど……。何ポイントをご希望で?」


「それよりも、話が終わってないのではないか?」


「うげッ!?」


 アダムの洗礼。メウスは石版をテーブルに置き、操作を始めた。私はその姿を見て前世の兄を思い出す。


「アダムさん。メウスは――メビウスは王城で神殺しに遭ったんです。解呪は私がしました」


「すなわち、其方が今の聖女というわけか……。天職はなんだ?」


 アダムが私に質問をしてきた。私は嘘を言えない。たとえ他の領地の人がいたとしても。

 

「暗殺者です。ですが、人を殺したことは一度もありません……」


「そうか。信じられんな。歴史書には其方がアルバス国王を殺したことになっている」


「アダム先輩。アルバス国王はぼくが逃がした。彼は無事だよ……」


 こちらには明確な証拠がない。一番の証拠として使えるのは、アルバス国王の無事くらいだ。


「ミカエラ嬢。髪が戻ったな……」


 セリンが言う。


「はい。これはどういう……」


「きっと聖女の血が濃いのだろう。血の濃さは力の強さでもある。どうせミカエラ嬢は生き物が好きなんだろ?」


「はい。大好きです。生き物を殺すなんて以ての外。傷ついた人を見つければすぐに助けるし、それが害のある生き物でも怪我はさせません」


 私がそこまで言うと、アダムが近づいてくる。彼をセリンが止めようとするが、力が強いのか吹き飛んだ。


「ミカエラと言ったか。銀髪金眼。聖水が黒くなっていて、他の桶の水は金色……」


「はい……」


「わかった。今回の件は見逃すとしよう。最高司祭にも歴史書の修正を提案しておく」


 アダムは神が住む世界に戻ろうとする。そこを、メウスが止めた。


 そうだ、今から私たちはエレンの家に行く。だけど、この状況では危険。私は指名手配されているし、メウスは本調子じゃない。


「アダム先輩。エレンの家に行くまで護衛頼んでもいい?」


「護衛だと?」


「うん。ポイントはぼくの『エル』称号が消えない五万ポイント。それくらいあれば十分だよね!」


 メウスは一か八かの提案をしてくれた。私はさすがに無理があるだろうと思ったが、アダムは快諾をする。


「ぼくのポイントから五万ポイント引いて……。今五十六万八千ポイントだね」


「メビウス……。計算が合わな……」


「アダム先輩に送信っと……」


「五万ポイント増えた……だと……?」


 アダムは驚いた拍子に尻もちをつく。こちらもメウスと一緒で、恥ずかしいという気持ちがないらしい。


「では、出発しようか。ミカエラの髪はぼくの魔法で色を変えて……。っと鏡を見てみて」


「はい。あれ? 銀色だけど……。茶色が混じってる!」


「君の髪をフランさんと同じにしてみた」


 これで対策は完了。私たちはエレンとメウス、二人の案内でエレンの実家を目指した。



挿絵(By みてみん)


ミカエラの母 フラン・シャーロット


挿絵(By みてみん)


エレンの先生 シリル・ヒューストン


次回。エレンの実家に向かう途中で……

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