第25話 次の目的地
この話で半分になります。
私が目覚めた時には、日は落ちていた。体感時間で九時間は寝ていたようだ。
初めて聖女としての行動をした。その影響かもしれない。
いつの間にか私の身体はベッドに横たわっていて、起き上がるとメウスが駆け寄ってくる。
「おはよう。昨夜はごめん……」
「大丈夫。それよりも、メウスとまた一緒にいられるのが嬉しくて……」
「こちらこそ。君はぼくと似てるのかもしれないね」
メウスは身体を伸ばしながら、私が寝ているベッドに座った。私が解呪したことで、動けるまで回復できたみたい。
「メウス。退避している時に私が質問してたことだけど……」
「あ、アルバス王のことね。彼なら大丈夫。侵入者が来る前に避難させたから」
「じゃ、じゃあ、私やシリルさんと一緒にいたアルバス国王は……」
「ぼくが作った偽物だよ。声に関しては、本人の口の動きに合わせるリアルタイムトーク。ただ、今回は計算外だったなぁ……」
そう言いつつ、メウスは使わなかった聖水を手で掬い、一気に飲み干した。私の血が入っている金色の聖水は普通の人には濃すぎる。
だけど、神だからできることなのだろう。かなり気に入っているのか、本人は喉が渇いたタイミングで飲んでるらしい。
「この聖水。昔飲んだのに近いね……。まさか二度も飲むことになるとは」
「二度?」
「うん。何年前だったかな? 君より前の聖女とも同様なことがあったんだ。つまり、ぼくが瀕死状態になったのは初めてじゃないってこと!」
「いや自信持って言わないで貰えます?」
「えへへ」
メウスのテンションは異常に高い。彼にアルバスの場所を聞くと、エレンの実家で籠ってもらってるようだ。
次に向かう場所はエレンの実家に決まった。
「これじゃ、金稼ぎもできねぇな……」
「どうしたんですか?」
「いや、俺たちがいるベルンライト領以外に行けなくなっちまったんだよ……。武器の材料は十分あるが……」
「難しい状況……」
「ああ」
悔しいのかセリンは赤くなった鉄板を強くハンマーで叩いた。瞬間火花が散る。メウスはその様子が不安なのか……。
「セリン。そんなムキになったら、失敗するよ?」
「まあな……。一旦休憩すっか……」
一発で気持ちを鎮めさせた。そういえば、エレンが私の髪のことを言っていた気がする。
私は改めて姿見の前に立った。白銀の髪は黒く染まり、そこから邪悪な魔力を感じる。きっと、メウスにかけられた呪いだ。
だけど、私にはメウスが受けていたような苦痛はなかった。いつの間にかメウスが隣に立っていて、私の髪に触れるとバチンという音がする。
「しばらく、ぼくはミカエラに触れられそうにないね……」
「どうして?」
「ぼくは神様だよ? 魔族の魔力とは相性が悪いんだ。今のミカエラには魔族と同系統の魔力がまとわりついている。だから、ぼくが触れると弾かれる」
「は、はぁ……」
メウスのベラベラ喋る解説に、頭を抱えていると、別の視線を感じる。
「復活したら、ミカエラの隣で寝たかったんだけどなぁ」
「メウス! ミカエラさんは僕のものですからね!」
また始まった。メウスとエレンによる私の取り合いが。正直言って大迷惑なんだけど……。
だけど、私から魔族の魔力が抜けるまでは、エレンが私を独り占めすることになる。
そのため、メウスは諦めモードだった。
「メウス。この髪治るの?」
「うん治るよ。その代わりしっかりケアすれば、だけどね。髪を洗う時は聖水を使うこと」
「それだけでいいの?」
「正確には、黄金の聖水だけどね。別にぼくのを使ってもいいんだけど……。さすがに男の血が入ってるのはまずいでしょ」
メウスは楽しそうに話しているけど。さっき魔族の魔力と神の魔力の相性悪いって言ったよね?
でも、血は大丈夫ってことは間接的だからなんだと、そうして解釈しておくことにした。
「早い方法はどちらですか?」
「それは……ぼくの血を混ぜた聖水だけど……」
「いや、メウス。それはやめた方がいい」
「セリン?」
セリンの割り込みにメウスが振り向いた。
「今のミカエラ嬢の髪はカモフラージュできる。早い段階で元に戻せば、見つかる可能性だってある」
「なるほど。ナイス! さすがはマイフレンド!」
「ただの腐れ縁だけどな」
セリンは言い捨てるように放った。メウスは、『そんなぁ』と期待はずれと言わんばかりに嘘泣きをした。
「そういえば。セリンさん。私のヘカートは?」
「できてる。ちぃと待て」
「はい」
セリンはバックヤードに入っていく。少しすると、私の愛銃が出てきた。だけど、フォルムが少し違う。
無駄な部分が無くなったというか。ものすごくスッキリしている。
「明らかにメウスが一人で作ったもんだってよ。余分な機能付けすぎだぞ」
「ごめんなさい……」
受け取ると、明らかに軽い。構えれば、扱いやすさが向上したことがしっかりわかった。
「セリンさん。ありがとうございます」
「そりゃどうも。ついでにこれも持ってけ」
セリンは、拳銃よりも少し大きめな銃を持ってくる。私が問いかけると、これはヘカートの余分な部品で作った魔導銃らしい。
「しばらくヘカートは持たない方がいい。戦う時はそっちを使え」
「わかりました。ヘカートはメウスに預かってもらうことにします」
「それが一番いい」
私はヘカートを台に乗せた。メウスがそれを受け取り、神の世界に一度戻る。帰ってくると、早速出発の準備が進められた。
シリルが同行してくれるらしいけど、敵の数がどれだけいるかすらわからない。もう一人欲しいけど、セリンは戦闘に不向きとパスした。
その時、天から一筋の光が落ちてくる。ドアをノックする音が聞こえると、間もなく開いた。
中に入ってきたのは、金髪で体格のいい男性。メウスは怖気付くように後退していく。
「あ、アダム先輩!?」
大声で叫ぶメウスに、金髪の男性アダムは鬼の形相で睨んでいるのがわかった。これは、ヤバい予感しかしない……。
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次回、メウスの上司再登場!!!




