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暗殺者なのに動物すら殺せない公爵令嬢ですが、神様のイタズラで勇者の護衛を任されました。魔王討伐をお願いされましたが、正直難しいです  作者: 八ッ坂千鶴
第3章 王都にて

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第24話 聖女の覚悟

 メウスが私を見ている。それはまるで『やっと気づいたんだね』とでも言っているような、温かくも苦しみを含んだ視線。


 日が差し込んで、明るさが強くなった時。寝ていたセリンたちが目を覚ました。


「おはようございます。皆さん」


「おはよう。メウスは?」


 エレンが私に聞いてくる。それに私は首を横に振った。

 

「さっき目を覚ましたけど。かなり……厳しい状況ですね……」


「……そう」


「でも。大丈夫です。助かる可能性が出てきたので」


「ほんと!?」


 私はメウスの前に行った。手を患部に押し当てる。本に書かれていた記述には、神殺しの剣の作り方まで載っていた。


 それは、魔族という人種しか生み出すことができないらしい。ここでシリルが目を覚ます。


「シリルさん。おはようございます」


「おはようございます」


「シリルさんは魔族と接触したことはありますか?」


 私は騎士であるシリルに質問した。その質問に返ってきたのは――。


「言っちゃなんだけど……。ボクのお母さんが魔王だよ?」


「そうでしたね。シリル先生は人間と魔族のハーフなんですよ」


 シリルの言葉を遮るようにエレンが補足を加える。これは話が早い。有力な情報源を獲得できた気がする。


 シリルに協力してもらい、メウスの症状を確認する。神殺しの剣は魔族の骨と血で作るとのこと。


 神の弱点がその二つであるということ。神がその剣に触れると、本人でも解呪ができない状態になること。


 そして、その呪いを解けるのは聖女しかいないということ。


「皆さん。私の言ったことをしてください」 


「了解しました」「わかった」「ん」


「まずは、たくさんの聖水を持ってきてください。桶で大丈夫です」


 私は消毒の準備から始めることにした。三人はそれぞれ用意できるだけの聖水を持ってくる。


 それに、私の血をそれぞれ一滴だけ垂らした。これで聖女特有の効果を付与できるそうだ。


 よく聖水に馴染ませると、水の色が変わる。


「これは……金色……?」


「お前。マジか……」


 驚くメンバーを他所に、金色に光る聖水をタオルに含ませる。それを、メウスの傷に押し当てた。あとは、神語――英語で唱えればいいだけ。


 だけど、必要とする魔力が足りそうにない。


「魔力が……間に合ってくれれば……」


 思わず私の不安が口から零れた。すると、冷たい手が首元に触れた。後ろを向くと、シリルが優しく微笑んでいる。


「ボクので良ければ力を貸しましょう。ボクの親はたしかに魔族。魔力も純血の魔族よりは劣りますが、問題はありません」


「ありがとうございます」


 私の身体に魔力が流れ始める。これで準備が整った。エレンとセリンには、黄金の聖水タオルの準備にあたってもらう。


「では、始めます」


「はい!」「お願いします」

 

「聖女ミカエラ・シャーロットより命ずる。彼の者の呪いの付与対象を全て私とし。全ての苦しみから解き放て!」


 私は日本語で詠唱を唱える。そこから先は、英語だ。ディスペル。それを成功させるためには、何段階もの試行を繰り返す必要があった。


「ファーストリカバリー。セット。ファーストリヴァイヴ。セカンドリヴァイヴ。サードリヴァイヴ――」


「すごい……。何言ってるか分からないけど……」


「フォースリヴァイヴ。フィフスリヴァイヴ」


 全身に痛みが走る。これが今メウスが抱えている苦しみ。私は彼に語りかけるようにして、魔法を唱え続けた。


「ミカエラさん。髪が……」


 今はそれどころじゃない。シリルの魔力も借りて、解呪を進める。意識を全て、メウスに寄り添わせた。


 目を瞑る。そのまま、そのまま奥の方へと、気持ちを近づけていく。真っ暗闇の中。彼はそこにいた。


 ポツリ、中心で座り込むメウス。ひとりぼっちになって、寂しそうにしているメウスの姿がそこにあった。


「メウス――」


「ミカエラ……。信じてたよ」


「良かった……」


 私はメウスの近くへ急いだ。しかし、彼の周りには見えない檻があって、傍に寄れない。これを壊さないと、解呪が成功しない。


「メウス。なんでこんな無茶をしたの?」


 私は優しく語りかける。


「ぼくよりも、未来があるから。かな? ぼくは知ってた。ミカエラが聖女であること。それも、暗殺者という相反する天職と共に生まれる運命であること」


「そう……」


 メウスはゆっくり立ち上がり、私の近くに来る。それだけで気持ちが軽くなるが、彼の体調がよくなるわけではない。


「私。まだこの世界のこと一部しか知らない。メウスにはいなくなって欲しくない……」


「ミカエラ……。でも君が無理したら、君までいなくなるかもしれないんだよ?」


「それは……」


 この行為は自分の命までもを蝕む。メウスは遠回しにこれを言ったのかもしれない。私には、覚悟が足りない。


 動物の狩りもできず、エレンを助ける際も迷いがあった。それでも、助けたいという思いが、救いたいという思いが……。


「私はいなくなったりしない。メウスを連れて、元の世界に戻る。そう決めた。私はもう迷わない。約束する」


「それが……。君の答えなんだね。最後に問う。この儀式で君の命が失われる可能性だってある。それすらも凌駕する覚悟で、完遂できる自信はあるか」


「あります!」


「わかった。ぼくの手に触れて。ぼくにかけられた呪いを全て。君に託す」


 私はメウスの両手に触れた。直後視界が真っ白に染まる。メウスにまとわりついていた穢れが、私に吸い込まれていく。


 直後、激しい頭痛がした。耐えることも難しいくらいのものが……。


「うぅ……」


 私の口から嗚咽が漏れる。だけど、聖女であるということが、私の意識を繋ぎ止めてくれた。


 穢れが消えていく。私が目を開けた時にはメウスも目を覚まし、ゆっくり起き上がってベッドに座っていた。


「おかえり。メウス」


「ただいま。みんな……。成功したようで良かった」


 全ての儀式が終わった時。疲れ果てた私は、床に座り込んでいた。これでまた、私とメウス。エレンの三人で活動できる。


 二つの喜びに浸りながら、徹夜の疲れと共に眠りについた。 

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