第163話 ただの女子会のはずが……
大輝が店から出てきた時。彼は少し疲れた顔をしていた。
さすがにあの量の毒を蓄えれば、解毒も追いつかないはず。
そもそも、大輝は普通の人間なのに毒を無力化できている。
だけど、こんな体調を悪くしている彼を放っておけるわけがない。
「大輝。大丈夫なの?」
「あ、ああ。実はだな、あれ食ってる時レヴェルとの接続を切ってたんだ」
「そういえば、イルハリナの毒は血液量を急激に上昇させるものでしたね」
つまり、大輝の体内にある血液量が限界を超えているのかもしれない。
まあ、それでも問題なさそうなのは、気のせいだと思うけど。
本当は苦しいのかもしれない。だけど、相手の内面的な体調はわからない。
「大輝さんは、もう少し普通の食事をしたらどうかしら?」
「い、いやあ。俺ああいうのが好きだから。不味い飯も美味い飯も、数百万通りある。それが俺の考えだ」
たしかにその通りではあるんだけど……。
大輝は『走ってくる』と言って消えていった。
きっとこのあとに、参加型運動をするのだろう。
その前の血液量調整だろうか。すぐに帰ってくると思う。
「行ってしまったわね」
「そうですね」
「だねぇ」
女子三人。なんか一応私もお金は持ってきている。
そういえば、近くにパフェを売ってる店があるんだった。
私はステラとルアンナを誘う。すると、すぐに頷いてくれた。
「じゃあ、案内しますね。私についてきてください」
「はい」
「わかりましたわ」
私は二人をパフェの店へ案内して、店内へ。
そこは多くの女性客で埋め尽くされていて、順番待ち中。
他の人種も来ているので、人口密度も増えた気がするんだけど。
約三十分待って席につくと、三人でメニューを確認。
「私はミルのパフェにします」
「ミカエラさん。即断即決ですね」
「ミルは大好物ですから。そういえば、ラディルさんっていう魔王から続報が来たんです」
ラディルは私とルアンナの故郷ゼレスリシア周辺に住む魔王。
魔族の中で唯一人間と結婚し、ハーフデーモンのシリルを子供に持っている。
ラディルからの情報は全てシリルに行くので、そこからの受け売りだけど……。
「秋季のミル生産が安定し始めたそうで……」
「ミルって、栄養果実として認定されているものよね」
「はい。ここでの事件が解決したあと、アランさんがラディルの城に向かったそうです」
それは三日前のことだった。遠出していたアランが帰ってきて、真っ先に私のところへ。
結果報告をした上で、戦争の件は解決。そして、シリルのところに続報が来た。
戦争直後からミルの生産をスタートさせたようで、ゼレスリシアへの流通も再開したとのこと。
一番嬉しかったのは、ミルの提供をストップさせていた獣人の国でも販売されたことだろうか。
つまり、私が頼んだパフェはリバイバルメニューということになる。
「では、私はこのソリアのパフェにするわ」
「ソリア美味しいですよね。わたし大好きです」
「ステラさん。ソリア好きなんですね」
ただのパフェだけでここまで盛り上がるなら、大輝がいなくてよかったかもしれない。
こんなところに男を連れてきたら場違いだ。そこは避けておきたい。
最後はステラだけになった。前の店ではあっという間に頼んでたのに……。
「わたしもソリア狙ってたのに……! 決まりません……!」
「ステラさん……」
この中でただ一人長考していた。そんなに長く考えることじゃないのに。
むしろ、なんで被るのを嫌うのかわからない。
私の前世では、兄妹全員が同じものを頼むことが多かったのに。
加えて、私の友達も同じものを頼むことが多かった。
「じゃ、じゃあ、これにします……!」
「メリグの実のパフェね。店員さん。注文をしたいわ」
「かしこまりました」
そうして、三人三様のメニューを頼むとすぐに出てくる。
まるで最初から注文内容を理解されていたかのように。
前はものすごくゴタゴタしていたイメージだったけど。
「ご注文の品は以上でしょうか?」
「ありがとうございます」
「ごゆっくり」
店員がいなくなると、一つのテーブルに三人だけ。
周囲では色んな人が談笑をして……。
「アネキ。食い過ぎだ。いい加減にしてもらいたい」
「だ、だってぇー。ものすごく美味しんだもん!」
「まあ、よいではないか。ティア殿も満足するまで食べるといい」
な、なんでティアと零とレヴェルさんがいるの。
三人は三人で楽しそうに話をしている。
武器であるはずの三人なのに、普通に食べている。
そもそも、食事に興味がない零もケーキを食べていた。
「あの方たちはお知り合い?」
「は、はい……。あの三人は……。私と大輝の武器たちです……」
「『武器?』」
理解はできないかもしれない。しかし、これも私の普通だった。
武器は人の姿になる。そして、その人は食事もする。
こんな不思議な状況に直面すると、説明も難しい。
「本当に武器なのよね?」
「はい……」
とりあえず、自己紹介だけでもしてもらおう。
私はティアたちのところへ向かう。そしてティアの肩を叩いた。
「あ、ミカエラお姉ちゃん! 来てたんだね!」
「それよりも、これどういう状況?」
「アネキがパフェが食べたいってうるさかった。黙らせるために来た。支払いはレヴェルのジジイがやるって言っている」
じ、ジジイって。零の毒舌がものすごく明確になった気が……。
まあ、見た目年齢的にもそうなのかもしれない。
そもそも、レヴェルさんはティアと零の大先輩だから。
ところで、レヴェルさんは赤いケーキを食べていた。
これは何なのだろうか。
「レヴェルさん。そのケーキは……」
「うむ。これはダインの好物であるギリスっていう実のケーキ。我も大好きでな」
ギリス。初めて聞く名前の果物だった。
どこかでページをめくる音。私が元々いた席を見ると、ステラが本を開いていた。
あれは植物の本だろうか。魔眼を利用して確認するとメウスと書かれている。
「ありました! ギリスという木の実は中毒性の高い実とのことです。メリグの実よりも高い苦味を持っていて、一度食べると止まらなくなるそうですね」
そんな実があったんだ。レヴェルさんはケーキを切って食べる。
ものすごく満たされたような表情をしていて、嬉しそうだった。
やっぱり、大輝も呼んだ方がよかったかもしれない。
なんか、悪いことをしてしまったかも。
「あ、あそこの大衆席が空きましたよ。せっかくですし、六人で食べましょう!」
ステラの提案で、六人席に移動する。
なんやかんや、いい方向に繋がったかもしれない。
ところで、大輝は今何をしているんだろうか。
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