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サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第2部 サブストーリー集

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第160話 隠し事の祝福

「大輝さん。復帰お疲れ様です」


 早朝。エレンが挨拶をしてきたので、俺は礼を返した。


 リハビリを始めて一ヵ月。体力が戻った祝いが開かれるらしい。


 筋力も全部元に戻り、今から王宮要塞の広間へ向かうところ。


 なのに、かなり騒がしい。あらゆるところから声が聞こえる。


「今日は大輝さんに会いたいって方が多くいるみたいです」


「そうか」


「それよりも、今日の料理は豪華みたいですよ。僕の大好きなチーズナンも用意してくれているらしいです!」


 エレンの大好物の話は聞いてないんだが……。


 王宮要塞の中は美味しそうな匂いがしていて、空腹を誘う。


 それでも、俺が療養に使っていた部屋からは少し距離がある。


 早く食べたい。なのに、歩かないといけない。


 一週間前に、長距離移動ができるようになったばかりだけど……。


「ダインさん。おはよう!」


「おはようステラ」


「ふふふ。今日はわたしも料理したので、ぜひ食べてほしいです!」


「ありがとな」


 階段を下りていく。広間まであと少し。


 少し足がおぼつかなくなるが、支障はない。


 収容所の時とは違い、美味しい料理を頬張る毎日。


 そんな中でも、ミカエラの料理スキルが光っていた。


 異世界では薬しか作れない俺だけど、材料の知識は彼女が上。


 その次にステラだろうか。ステラは毎日本を読んでくれた。


「それにしても、勇者魔王伝説は面白かった」


「ダインさんのことは、かなり端折ってましたけどね」


「ま、あれはゼノンが主役の作品だしな」


「それもそうだな」


 本当に俺は伝説になってしまった。


 生まれ変わったというのを伝える前に、死んだことになっている。


 本物(・・)はここにいるのに。やはり姿が違うからだろうか。


 それでも、俺は嬉しかった。自分の過去が過去として消えなくて。


「ダインさん。おかしなところで笑ってましたよね」


「あはは。それはだな」


 勇者魔王伝説では、作り話がいくつかあった。


 それも、変なところがやけに装飾されていた。


 同行していた俺が笑うんだから、俺の記憶は間違いない。


 広い廊下を歩く。そこには、料理を運ぶ使用人の姿。


 全員が獣人というわけでもなく、新人とみられる人もいた。


「そこのエルフさん。わたしの知り合いですよ」


「エルフが知り合いか……。ちょっと気に……」


「誰でもかんでも血を求めないでください。まあ、最近ろくに飲めていないのは知ってますが……」


 俺の悪い行動に関してステラにも伝わっていたか。


 本当は血を存分に飲みたい。それくらい、血に対する喉の渇きが異常だった。


 廊下を抜けると、大広間に出る。大勢の客人が椅子に座り、俺の登場を待っていた。


 少し……。いや相当恥ずかしい。俺はそんな大層なことをしていないのに。


「あそこにいる人は、時詠みさんの両親だそうです」


「ほほう……」


「ちょっと、ダインさんヨダレが……」


 あまり自覚はなかったが、今俺は血に対する空腹が来ているようだ。


 部屋中には様々な血の匂いがしている。


 そんな中で、やはり目につくのはミカエラの血だった。


 彼女は聖女だからこその絶妙な味わいがある。


 血を飲まないでいた俺からすれば、フルコース後の付け合わせだろうか。


「だーいーきー!」


 そう考えている時、ミカエラに見つかった。


 これは仕方ない。きっと彼女も感づいている。


 必死に我慢するとしよう。飲みたいのはやまやまだけど……。


 俺の席はステラと同じテーブル。


 そこには、グリルチキンや、牛肉のステーキ。なぜか酢豚が並んでいる。


 香りはどれも懐かしい。とくに酢豚は思い出が深かった。


 ミカエラが初めて覚えた料理。何度も失敗し、俺が毎回片づけていた。


「今日は成功したよ」


「そうか。ミカエラありがとな」


「こちらこそ」


 すると、ここで懐かしいメンバーが揃う。


 俺の後ろを陣取るように、収容所では超絶ガリガリだった二人組がいた。


「大将! 復帰お疲れさんっす!」


「大将のおかげで、あっしも家族と再会できました」


「そうか。元気そうで何より」


 短い会話をしたあと、二人は席に戻っていった。


 と思ったら、子供獣人を連れてくる。


「ダインさん! お久しぶりです!」


「ん?」


「リクですよ! 収容中に伸びた毛をカットしてもらったんです!」


「そうか、印象が違い過ぎてわからなかった」


 その言葉は、相手が求めていなかったのかしゅんとする。


 俺はゆっくり立ち上がり、リクの背中をさすった。


 ゆっくり手を上へずらし、頭を撫でると優しく笑う。


「なんか、俺の弟みたいだ」


「そうですか? 自分兄がいないので、嬉しいです」


「そうかそうか。じゃ、俺たちと行動するか?」


「いいんですか?」


「おうよ」


 ミカエラたちに許可はもらってないが、きっと大丈夫。


 全員が席に戻り、大きな長テーブルを囲うと壇上に誰かが上った。


 残念ながら、俺の席は壇上の目の前。足音は聞こえるが誰かはわからない。


 椅子を持ち上げて後ろを見ると、そこにはアランがいた。


「本日は集まっていただきありがとうございます。ダインさんの行動のおかげで、違法に収容された方々の解放は終わりました。ここにいるのは、その被害に遭った方々と親族の皆さんです」


「ステラそうなのか?」


「はい」


 アランは続ける。そして、宴会の音頭をとった。


 こんなサプライズがあったなんて、みんなは隠すのに必死だったはず。


 生きていてよかった。大切な仲間がいるってものすごく最高だ。

読んでくださりありがとうございます


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主人公の活躍がみたい方は!!!!!


ぜひ第1話からご覧ください!!!!

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