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サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第2部 サブストーリー集

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第159話 美味いフルコース

 王宮要塞で体力を回復させる日々。


 俺は毎日美味い飯を食って、リハビリを続けていた。


 布団をかぶっていた足は、信じられないほど細い。


 肉付きも非常に悪く、最初は数歩歩くだけでやっと。


 それでも、ステラが補助をしてくれて嬉しかった。


「ダインさん。もうこの辺で……」


「まだ……もう少し……」


 直近の俺はというと、仰向けになって下半身を浮かし足漕ぎをしている。


 そこまで負荷はかからないので、意外と簡単。


 それを俺は息が切れる寸前までやっていた。


 もちろん、腰の付け根は毎回痛い。


「本当は風呂の中でやった方が安全なんだけどな」


 その代わり、両手で上半身を浮かせる必要があるので肩も痛くなる。


 今の筋力では、到底難しいだろう。


 他人の肉付きをよくさせるのは楽だが、自分の筋力をあげるのは難しい。


「まあ、継続は力なりっていうだろ」


「それはそうですが……。毎回疲労とため込んでたら元も子もありません」


「あはは。妹からもよく追い込み馬鹿っていわれるよ」


「まさにその通りですね」


 一応今日は五百回ほど足漕ぎ運動をした。


 明日には、立ち運動を始める。まずは片足立ちから進める予定だ。


 筋力が落ちている時は、その状態に合わせた正しい運動過程がある。


 それを守らないと、骨折などの心配も出てきてしまう。


「ですが……、なんでダインさんは限界以上の力を出せるのですか?」


「んー。筋トレのやり方と限界を知っているから……かもな」


「筋トレ?」


 ステラは首を傾げて俺の顔を見る。


 俺は小さい時から身体を動かしていた。


 動画では運動系のものがほどんど。


 できることは何でもやった。


 ジムに行きはじめたのは中学生くらい。

 

 とにかく、きつさを求めて自分を追い込む。


「まあ、それくらいギリギリが好きでさ」


「そうなのですね」


「ああ。この世界にバーベルとかあればいいんだけどな」


「それなら、レヴェルさんを使えばいいのでは?」


 たしかに、レヴェルなら俺の指示で重さを変更できる。


 しかしそれは、彼が得た血の量の重さだけ。


 加えて古い血は加算されない。


 それなら大木を持ち上げた方が早いまである。


「それでも、今のダインさんでは無理なのでは?」


「そうか?」


 俺は右手で左の二の腕を握る。


 筋力は相変わらずで骨ばっていた。


 それでも、毎日摂取しているタンパク質と大量の白飯で最初よりはいい。


 野菜も根野菜と葉物野菜を中心に食べている。


 ビタミンも鉄分もそこそこ摂れるので、ちょうどいい。


 すると、ドアが開いた。部屋の外からミカエラたちが入ってくる。


「大輝。ご飯持ってきたよ」


「お、サンキュ」


 今日のメニューは、鶏肉のシチューと野菜スープ。


 そして、野菜ジュースだった。


 横にはイルハリナの球根が置かれていた。


「ミカエラ。このイルハリナは……」


「そのままだよ。毒抜きしてないやつ」


「そうか。ありがとな」


 毒抜きをしていないのは、本当に嬉しい。


 ひとつ気付いたが、イルハリナの球根を毒抜きした時の欠点がある。


 それは味が落ちること。毒物は甘い香りがするので、少し弱くなる。


 俺は香りは強いほうがいい。きっとこの考え方はありえるかもしれない。


「いただきます」


「どうぞ」


 まず鶏肉のシチューを食べる。使った材料はベッド神の実家からもらったようで。


 濃厚なミルクを使用しているのか、味がものすごく濃い。


 鶏肉とミルク以外は異世界の食材。だけど、バランスはとれている。


 次に野菜スープを飲んでみた。


「これ、塩だけで整えてないか?」


「うん。最初舐めたら塩辛かったから、胡椒いらないかな? って」


「なるほどな。やっぱり料理の腕はさすがだな」


「というよりも、大輝は塩分控えめが好きでしょ」


「そうだな」


 俺の平均血圧は上が大体百二十ほど。


 この世界には血圧計がないが、勘でわかる。


 できるだけ血圧が百四十いかないように、塩分は控えめ。


 カロリーもできるだけ控えめにしているのだが……。


「もともと俺は鶏ささみ生活が多かった」


「鶏ささみ?」


「簡単に言うと、鶏肉を蒸し焼きにしたやつだ」


 そう言いつつ、山盛りのご飯にがっついた。


 白米はベッド神のお得意先からで、野菜はミカエラの地元産。


 全部親戚つながりで、まるで天国だった。


「ミカエラ。シチューおかわりいいか?」


「って言っておいて、ご飯大盛り二杯目も要求するんでしょ」


「バレたか……」


 ミカエラはご飯の器とシチューの器を持って部屋を出る。


 しばらくして戻ってくると、マンガ盛りのご飯が出てきた。


 さすがにそれはやりすぎなんだが……。


「あ……」


「もしかしてこんなに必要なかった?」


「え、あ、その……。責任もって食べます……」


 俺の目の前の超大盛ご飯。その隣には小さい鍋ごとシチュー。


 どれだけ食わせようとしているんだ。一応病人だぞ……。


「大輝なら余裕だよね」


「それ冗談だよな……」


「さあどうでしょう?」


 俺はご飯を食べる。食べても食べても減らない。


 だけど、胃に溜まった気がしないのはなぜだろうか。


 美味い料理は腹に錯覚を起こすと言われている。


 食べすぎて体調を崩すほどハマらせる狂気。


 まるで、その迷宮に閉じ込められているようだった。


「あら。ダインさん」


「アラン!?」


 どこからともなく聞こえてきたアランの声。


 キョロキョロ探すが見当たらない。


 だけど、彼の気配は感じ取っていた。


「こっちですよ。ダインさん。よく食べると聞いたので……」


「ったく、アランも神出鬼没やめろよ……」


 姿を現した彼は、普段着を着ていた。


 彼は変装の達人だ。次いでにステラを探しておく。


 とりあえず、変装はしていないようでよかったんだけど……。


「ダインさんにこれを……」


 アランは俺に袋を渡してくる。中を開くと黒いソリアが入っていた。


 どうやらミカエラが説明してくれたとのこと。


 食事を一通り終わらせると、ソリアとイルハリナの球根を食べる。


 監獄での食事が不味いフルコースなら、これは美味いフルコースだ。


「ダインさん。吐かないでくださいね」


「大丈夫だ。これくらい問題ない」


 無事完食した俺は、酷い眠気に襲われそのまま寝た。


 翌日起きた時には、元に戻っている。そう願いながら。

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主人公の活躍がみたい方は!!!!!


ぜひ第1話からご覧ください!!!!

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