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サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第2部 サブストーリー集

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第158話 孤独と仲間とアイ

 暗闇の中。俺はただ一人そこに立っていた。


 外界が騒がしい。少しでも時詠みの回復速度を早めたいのに……。


 自分なんて、本当はどうでもいいんだ。


 もう少し、もう少しだけ一人にさせてほしい。


 どんなことがあっても、俺は孤独が一番なんだ。


 レヴェルとただ二人きりで、ひっそり暮らす。


「これを言ったら、ミカエラが怒るだろうな」


 正直、もう会えなくてよかった。あれで、お別れでも……。


 思考が行ったり来たりを繰り返す。長考と自問自答。


 表では、心臓も何もかもが止まった俺を見ているのだろう。


 止まったとしても、生きていることは可能。


 だから、何も考えることなく命を捨てることができる。


 全てが変わったのは、龍であるリンの血を飲んでからだ。


 今では彼の血が身体に馴染みつつある。


「俺は……。ミカエラに心配されてばっかだ」


 ミカエラ。いや、美香はものすごく心配性だった。


 息が細い動物を見付ければ、どんなことがあろうと病院につれていく。


 そして、弟の体調が悪い時は一日がかりで看病をする。


 俺は見ているだけ。戦いの知識はあれど、救いの知識がない。


 人を排除することしか、俺にはできない。


 なのに、なんであの時は足が動かなかったのか……。


「お兄ちゃん! 大輝お兄ちゃん!」


「美香! 美香どこにいる!」


「こっち! 襲われてる!」


「……!?」


「助けて!」


 フラッシュバックする恐怖心。俺は前世でも似たようなことがあった。


 それは、両親を失った時。その頃には俺はレヴェルを持っていた。


 両親は凶暴化した魔族に襲われ死んだ。俺なら助けられたのに。


 大切な人ほど、俺は救い方を忘れる。そんな自分が、大嫌いだった。

 

 一人で暮らすようになって、俺はただイルハリナだけを食べていた。


 毒抜きをしていない、イルハリナの球根を……。


 そんな暮らしが、寂しくも優雅だった。


 謎の幸福に操られ、自分が自分ではなくなっていく感覚。


 不死に似た身体となり、天命を待つ。


「あの時……俺が助けていれば……」


 少しずつ、意識が昇っていく。


 奥の方にまばゆい光。それはどんどん強く暖かく照らす。


 もうすぐ、一人の空間から抜け出す。


 こんな俺を、許してくれるだろうか……。


「大輝! 大輝!」


「ダインさん!」


 名前を呼ぶ二人。ゆっくり目を開けると、そこにはミカエラとステラの顔。


 見慣れない部屋。俺はベッドに横たわっていた。


 首を横に向ける。そこには、赤いレースをふんだんに使ったカーテン。


 身体を起こそうとしても起き上がらない。


 まだ、瞼が開ききらず重だるい。


「ステラ……ここは……」


「国王の寝室です。アランさんが貸してくれました」


「ここに運んだのはライガンさんだよ。事情は全部ステラさんが説明してくれた」


「そうか……。二人ともありがとな」


 それよりも、時詠みの人の容態が気になる。


 彼女の身体状態を全て俺に付与させたため、今は歩けそうにない。


「ステラ……」


「あの人なら、目を覚ましましたよ。大丈夫です」


「よかった……」


 自分の上半身を見れば、塗り薬の跡が消えていた。


 あとは、俺が回復すればいいだけ。少しずつ運動もしていく。


 それよりも、お腹が空きすぎて倒れそうだ。


 もう一度、孤独の世界に潜りたい。


 まあ、そんなこと妹が許してくれるわけがないのだけど……。


「そうだ。大輝。熟成肉のジャンボステーキあるけど……食べる?」


「ジャンボステーキ?」


「うん。メウスが特大肉を用意してくれてね。大体、一キロかな?」


「食べる!」


 欲には負けてしまうものだ。ミカエラと再会したから、我慢は必要ない。


 ミカエラは走ってステーキを取りに行った。


 ステラと二人きり。なんか、初めての感覚。


 今までよりも、胸が高鳴り締め付けられる。


「ダインさんと、二人だけになってしまいましたね」


「だな」


「ミカエラさん。あまりダインさんのことを心配していなかったみたいです」


「心配していなかった?」


 あの心配性の美香。いや、ミカエラが俺を心配していなかった。


 不思議なことだと思ってしまう。俺の予想が外れてしまった。


「ダインさんの身体の心配よりも、食事面を心配していたみたいです」


「まあ……。俺はマズい飯とイルハリナが基本だったからな」


「はい。そのことをお伝えしたら、ミカエラさん。爆笑してましたよ。『大輝らしい』ですって」


「そうか」


 しばらくして、肉の匂いがしてくる。


 ドアが開くと、ミカエラとエレン。ベッド神の三人が入ってきた。


 一キロのステーキはベッド神が持っていて、ものすごくでかい。


 だけど、焼き入れをしていないようで完全な生だった。


「大輝。ちょっとテーブル作ってもらってもいい?」


「お。おう……」


 俺はミカエラに言われるがまま、血で作る。自分の血を消費できるのはこれが最後。


 テーブルの上に置かれる生肉。ベッド神が魔法を唱えると、焼き目が入った。


 それにしても、ものすごく大きい。食いきれるだろうか……。


「よし。大輝さん、焼けたよ!」


「ありがとな。べ……」


「メウスだよ!」


 即ツッコミしてくるベッド神に、みんなが笑う。


 俺はナイフとフォークを使って細かく切りながら食べた。


 中の大部分が赤身。だけど、しっかり火は入っている。


 いうなら、レアよりもレアなスーパーレアみたいな。


「美味い!」


「よかった……」


 安心の声を漏らすミカエラ。兄として申し訳ない。


 ふと、足の方に重さが乗っかる。


 肉への視線を正面へ向けると、ナイフとフォークを持ったステラ。


「ダインさん。わたしもご一緒してもいいですか?」


「え。あ、ああ……」


「では、いただきます!」


 俺の目の前で肉を食べるステラ。


 ほんと短い間で俺に懐くなんて……。


「女にフラれてばかりの大輝が、ラブラブじゃん」


「羨ましいです! あと、ミカエラさんも僕の護衛なんですから。大輝さんよりも僕の方を注視してくださいよね!」


「はいはい。ここは二人だけにしましょ」


 ミカエラがエレンとベッド神を回収し部屋から出ていく。


 今の俺は、ステラに恋をしているのだろうか。


 なんだか、抱いている感情を言語化できない。


 今この時間を、いつまでも。愛情にずっと浸っていたい。

読んでくださりありがとうございます


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主人公の活躍がみたい方は!!!!!


ぜひ第1話からご覧ください!!!!

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