第16話 迷惑な二人と無償の愛※イラストあり
後書きにキャライメージ画像あります
翌日。私の下半身と上半身はそれぞれ別の負荷を受けていた。下半身にはメウスの足が。上半身にはエレンの腕が乗っかっている。
もはや脱出不可能。どちらか片方を起こしても意味が無い。私は、どう対処しようか悩んだ。その結果……。
「ハイネスト……」
威力調整をした風魔法の上級上位魔法を唱え、エレンとメウスをベッドから落とした。その反動で二人とも目を覚ます。
「二人とも、寝相考えて!」
私は真っ先に二人を怒った。
「ミカエラごめんなさい……」
「すみません……」
とりあえず、一つ目の問題は解決した。男性陣は別室に移動させて、私はパジャマから普段着に着替える。
次の問題。私は食卓に行くと、そこにはメウスとエレンが着替えた状態で座っていた。それも、メウスが私の右横。エレンが左横。
なぜこうなったのかというと……。
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「エレン! ミカエラはぼくのものだ!」
「違う。ミカエラさんは僕のものだよ!」
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昨夜私を巡って一悶着あった。結果、私が両サイドに座ればいいんじゃないかと提案し、今がある。
そして、解決したこともあった。今日は香りが引き立つ照り焼きチキン。味は感じられないだろうと食べてみたら、味覚が戻っていた。
メウスに聞くと、殺しはしなかったものの、熊を撃ったことによって克服したからとの見解。
私はエレンを助けることに夢中だった。それが、私の自信にも繋がった。不安が消え去ったから、味も感じられるようになったと。
「お母様。ごめんなさい……。パーティの時味の感想を伝えられなくて……」
「急にどうしたのよ……」
「今に至るまで、味がわからなくなってしまって……」
「大丈夫。気にしてないから」
「え?」
私はお母様の発言に違和感を抱いた。私の隣では、メウスとエレンが黙々と食べている。
「私は味とかの感想は一つも求めてない。ミカエラやレイラ。メウスさん。エレンさん。そして、エルヴィンが食べてくれるだけでそれはとても嬉しいのよ」
「お母様……」
知らぬ間に目元が熱くなっていた。私は静かに食事をとる。それは、今まで以上に短く、そして長く感じた。
その後。私とエレンは各々で訓練をする。私は指導係に変わってメウスが担当することになった。
彼は右手に魔法書を持ち、左だけでヘカートを持っている。というか、浮かせて停止させている。
ヘカートは一つしかないので、二人で交互に使う状態。メウスは複製はいつでも可能と言うが、本音は膨大な魔力を消費するそうでめんどくさいらしい。
「じゃあ。次は麻痺の魔法銃弾行くよ!」
「お願いします!」
「パリス! バーン!」
メウスは裏手にいる馬を相手に、魔法を唱え銃弾を発射する。馬は一瞬痙攣を起こしたが、すぐに魔法解除して復帰した。
「メウスさんは、どうして魔法で銃弾を?」
「うーん。実はぼく。銃が大好きでね。天界には、ぼくのコレクションがあるよ。もちろん、別邸にもね」
「別邸?」
「うん。まあ、基本的には拳銃系だけど……」
メウスはそう言いつつ、私の家に入っていく。追いかけると、着いたのは書斎のある階段下だった。
「ここをこうして……。開いた!」
「これは……」
「ぼくの別邸だよ。各公爵家に近道を用意してもらってるんだ」
私は中に入る。そこはものすごくシックな内装で、壁にはたくさんの拳銃が飾られていた。
「これがこの異世界でぼくが作った自作拳銃」
そう言って見せられたのは、引き金のない拳銃だった。ボディはワインレッドで、カラーバリエーションも豊富だと説明される。
私はその拳銃を持って一発放ってみることにした。メウスが快く貸してくれたので、来た道を戻り外へ出る。
「メウスさん。私の銃弾研究の成果見てください!」
「了解!」
「サイレス パリス ホーミングショット!」
私が詠唱をすると、ここから数十メートル先にいる羊に当たった。羊は痙攣を起こし、地面に倒れる。
「ミカエラすごい!」
「ありがとうございます!」
「じゃあ、今度はエレンさんの様子を見に行こうか」
「はい!」
私は拳銃をメウスに預け、ヘカートを受け取った。そういう自分はヘカートを持つ時、エアーを使わないようにしている。
いつまでも魔法に頼ってはいけないと思ったから。
エレンは、近くの小さな訓練場で剣の素振りをしていた。しかし、その動きはレイラ未満くらいキレがない。
素振りというよりも、ただ振っているだけの状態だった。指導係はお父様。メウスに聞くと、エレンは勇者養成学校の生徒らしい。
自分に自信がない彼は勝手に抜け出して、森に迷い込み熊に襲われた。それが、昨日の出来事のようだった。
私は、近くの木の棒を手に取る。剣術なんて合わない私だけど、型は覚えているつもりだ。
「エレン。見てて!」
「は、はい! ミカエラさん!」
「せぇい!」
私は木の棒を勢いよく振った。すると、強風が吹き荒れて、エレンの髪が揺れる。
「ミカエラさん。すごい……」
「ありがと。ここからは三人で同じ訓練をしましょ」
「はい!」「ぼくも賛成!」
そうして、私たちは、お昼の時間まで訓練を続けた。




