表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗殺者なのに動物すら殺せない公爵令嬢ですが、神様のイタズラで勇者の護衛を任されました。魔王討伐をお願いされましたが、正直難しいです  作者: 八ッ坂千鶴
第2章 森で出会った少年

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/50

第15話 兄の助言

 ◇◇◇ミカエラ目線◇◇◇


 私が見える景色は遠くに見える巨大な熊の背中。股の間から人の足が見える。あれから私は移動して、確実に熊を狙える位置にいた。


「だ、誰か! 誰かああああああああああああ!」


 少年の声が大きい。前世の知識によれば、大声は熊を刺激するやってはいけない行動。このままでは少年が……。


「助けないと……!」


 私には睡眠弾がある。問題はそれが図体の大きな熊に効くかどうか。もっといえば、巨大なものにはかなり強力な麻酔が必要。


 麻酔も何度も使えば耐性がついてしまう。一回で昏睡状態までしないと、すぐに無力化されてしまう。


「深読みしちゃダメ!」


 思考の回転が止まらなくなった私は、大声でそう叫んだ。広く反響する私の声は熊の耳に届いてしまう。


 熊がゆっくりこちらを向くのが見えた。怖い。怖すぎて、どうすればいいのか真っ白になる。


 のっそり、のっそりと歩いてくる熊。自分の心臓がバクバクと脈打つのが聞こえる。こうなったらと思い、ヘカートのスコープを覗き込んだ。


 緊張で照準が合わない。そもそもどこを狙えばいいのかわからない。


 サバゲーであれば弾が一定数当たれば倒せる。だけど、こんな相手は初めてだ。私は熊駆除の達人なんかじゃない。


「大丈夫……。大丈夫……」


 唇が震える。魔法を唱えたくても、呂律が回る自信すらない。それでも、私がやらないと、私もあの少年も――。


「大丈夫……」


 ――『美香。銃を撃つ時は気持ちがブレてはいけないんだ。銃と一つになることを考える』


「お兄ちゃん……?」


 ――『まずはどうやるんだったか、俺が教えたことを復唱してみて』


「まずは、深く深呼吸をする。銃は私の身体の一部として気持ちを合わせる。身体を固定し、軸足をしっかり土にめり込ませる……」


 心臓の音がどんどん遠ざかっていく。感情の暴走が消える。照準もしっかり熊の頭を捉えた。


「ヘカート。私の心に応えて……!」


「グォォォォォォオーーーーーーン!」


サイレス(無音の音で)! スウィン(眠れ)! ショット(解き放て)!」


 気づいた時には、私の詠唱は終わっていた。銃口から水色の光。それがどんどん大きくなって、発射される。


 解き放たれた時。軸足にしていた右足がより深いところまでめり込んだ。即座に〝エアー〟を逆噴射の要領で使用。反動を抑える。


 弾丸は空気を痺らせながら飛んでいった。熊に命中するまであと数十メートル。時間が止まっては動くを繰り返す。


「当たって……お願い……!」


 そう願った時。弾丸は熊に命中した。瞬間睡眠弾の効果が効いたのか、身体をよろよろさせて倒れる。


「や……った…………」


 ようやく全身の緊張が解け、私の身体は崩れ落ちる。それに気付いたのか、少年が駆け寄ってきた。


「す、すごい……汗……」


 彼の第一声はそれだった。隣に座って、背中を摩ってくれる。


「君……大丈夫……だった?」


 緊張が解れた影響で力を使い果たした私は、息を整えながらやっとの思いで紡いだ言葉を少年へ投げた。


「え、えーと……名前は……」


 少年が問いかける。


「私はミカエラ。ミカエラ・シャーロット」


「み、ミカエラ……さん。たた、助けてくれて……ありがとうございます……!」


「どういたしまして。あなたは?」


 私も少年に問いかける。


「僕はエレンです。エレン・ベルンライト」


「エレン。いい名前ね」


「ありがとうございます!」


 私は、光魔法の〝ライティス〟を使用し、周辺を照らした。〝ライティス〟もエアーと同様殺傷能力はなく、ただ光源として使える下級下位魔法。


 改めて少年エレンを見ると、とても綺麗な亜麻色の髪をしていた。顔はものすごく幼く、身体も華奢だ。


「ミカエラさんって、魔法使えるんですね……」


「まあね。一応、上級上位魔法はほぼほぼ使えるよ」


「じょ、上級上位……!?」


「うん」


 あまり自慢じゃないが、自慢になってしまったのは仕方ない。エレンは私にさらにくっつく。


「僕……。自分より大きいの見ると怖くて……」


「わかる。さっき私も感じた」


「え?」


「怖かった。失敗したら、エレンに当たってしまうんじゃないかって。上手く効果が出なくて、熊を刺激してしまうんじゃないかって」


「……」


 私の率直な言葉に、エレンは黙り込む。私はそんな彼を見守った。彼にも色々あって、この森に迷い込んだのかもしれない。


「熊が倒れた時。僕は熊が死んだのではないかっと思った。でも、ミカエラさんは〝スウィン〟って唱えたよね?」


「うん。もしかして知ってるの?」


「少しだけ……。僕の先生が教えてくれたんだ。でも、僕のせいなんだ。僕が心も身体も思考も弱いから……」


 エレンは暗い顔をして下を見る。そんな彼を、私は勇気づけたいと思った。かける言葉を考える。それだけで、二人の時間は長い気がして……。


「改めて言うけど。熊と対峙するのは今回が初めてだったの。ものすごく怖かった。大きな壁のように聳え立っていて、攻略できるか心配だった」


「でも……」


「私は、自分ならできるって何度も念じたよ。そしたら、見える世界が変わって。壁も少しだけ低くなって。飛び越えられるってところまで到達できなかったけど、気付いたら越えていたから」


 私は自分の頭に入っていることを全て吐き出した。すると、エレンの顔に明るさが戻っていく。


「ミカエラさんはすごいね。僕にはきっとできないや」


「できないと決めつけない方がいいよ」


「なんで?」


「だって、それって自分で自分の限界を決めてるってことでしょ。エレンにもきっとできる時が来るって!」


 私の助言にエレンは大きく頷いた。楽しい時間はあっという間に過ぎていき、遠くからカンテラの光が見えてくる。


「ミカエラ!」


 聞いたことのある声。メウスを先頭にして、お母様とお父様がやってくる。私は彼らに『ごめんなさい』と謝った。


 帰るところがないエレンは、私の家で預かることになった。ただ……。


「メウス! エレン! なんで私のベッドで添い寝してくるの!」


 何故か二人は私に対して、異常に懐いているのだった。

読んでくださりありがとうございます


いいねは賽銭箱に大事にしまっておきます

リアクションも別の賽銭箱に入れておきます


星は1から5どれでも大丈夫です


下の評価ボタンからぽちっとしちゃってください!


最高の励みになります!




次回。冒頭から事件が……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ