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サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第2部 サブストーリー集

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第155話 理解不可能な恋心

 ミカエラには、俺からしか連絡が取れない。


 俺は連絡ができるが、ミカエラ側からはできない。


 そんな一方通行なシステムをどうにかしたい気持ちはある。


 だけど、なかなか上手くいかないのが現状だった。


「この収容所も金欠か……」


「ダインさんの好物。何も来なくなりましたね……」


「ああ」


 購入するにも高額なイルハリナの球根。


 さすがに、相当量を要求した俺のせいだ。仕方ない。


 不味い飯も出てこなくなり、俺はただ空腹に耐えていた。


 俺が肉を食べ始めたら、きっとみんなの分がなくなる。


 美味いものにはそんな中毒性を持っている。


 だからこそ、俺は脱獄するまで絶対に食べないと決心した。


「ダインさん。本当に食べなくて大丈夫なんですか?」


「問題ない。最悪の場合は自分の血を使えばいいだけだからな」


「でも、今ダインさんはレヴェルさんに血を……」


 ステラは俺を心配そうな目で見てくる。


 その瞳は憂いに満ちていた。ものすごく、儚く小さな光が差し込む。


 余所目を向けると、俺とステラを見守る他の囚人たちは釘付けになっている様子。


 どうやら、俺とステラは恋人に見えるらしい。


 ステラは俺に恋心を抱いているのだろうが、俺にはちっぽけもない。


 どうしても、ステラの気持ちを汲み取ることができない。


「ダインさん」


「あ、ああ……。なんだ?」


「無理しないでくださいね」


「お、おう……。わかってる」


 ステラはどんどん近寄ってくる。顔が目と鼻の先。その距離数センチ。


 ここまで距離を詰めてきた人は、彼女が初めてだった。


 俺の鼓動が早まっていくのを感じる。血が巡ってなくても、それくらいはわかる。


「そこのカップルさすがにやるのか?」


「かかか、カップルじゃねぇって……」


「そう言わずに、ものすごくお似合いでっせ」


「ダインさん。もし脱獄したら。あーんしてあげましょうか」


 この女、距離感わかってない。っていうか、あーんはありえない。


 俺の頭は混乱を繰り返した。なんで女は、こんなにも熱が強いんだ。


 全く理解ができない。そもそも、理解すら不可能かもしれない。


 女の一方的な行動には、何も抗うことはできないようだ。


「ステラ……! わかった。わかったから……。そろそろ離れてくれ」


「まだまだですよぉー。わたしはもう少しだけ……。うふふ……」


 これが発情期か。完全に酔っている。俺に酔っている。


 こういう時、どう対応すればいのかわからない。


 完全に追い詰められた。俺の背中にステラの腕が回ってくる。


「だ、抱き着くな! 近い。近いんだって!」


 ――「大輝? どうしたの?」


「な……。ミカエラ。今はそれどころじゃない」


 なんでこんな時に妹と繋がるんだ。俺は無意識にヘルプ信号でも出してたのか。


 ――「それどころじゃないって……。あ、リュウグの球根を共有空間に入れたから」


「あ、ありがとう……」


 要件を言えなかった。俺の心の拠り所と切れてしまった。


 俺は空間から聖水を出す。そして、強制的に血を用意する。


 共有空間を開く。リュウグの球根を一個だけ毒抜き開始。


 完了すると取り出して、ステラの口に突っ込んだ。


「これで我慢しろ!」


 これで、落ち着いてほしい。そう願っても、叶わないかもしれない。


 しかしここでしくじってしまった。毒抜きを一個したはずが、複数してしまったから。


 毒が移らないように、毒抜き済みだけ外へ出す。


 すると、ステラが一個持ち上げた。


「ダインさん。あーんしてください!」


「は?」


「あーんですよ。あーん」


「あ……」


 ここは従うしかないかもしれない。


 俺は口を開ける。そして、ステラの持つ球根を食べた。


 なんだろうこの感覚。ミカエラの時とは全く違う。


 俺はステラを好きになったことは無い。あくまでも気になる程度。


 だけど、初めて彼女の本当の気持ちを理解できたかもしれない。


「ステラ……。もしかして、俺のこと好きなのか?」


「さあ、どうでしょう。ふふふ」


「な、なんで笑うんだよ」


「その前に、妹さんとの会話途中だったでしょ」


 そうだ。ミカエラとの情報共有ができてないんだ。


 俺はミカエラの血の情報を取り出し、彼女に繋げる。


 ミカエラにはすぐに繋がった。


「ミカエラ。聞こえるか?」


 ――「うん、聞こえてる」


「よかった。さっきはすまない」


 ――「大丈夫。実は今日大輝のことを知っている龍の翼を生やした人が来てね。リュウグの球根を大量に持ってきてくれたの」


 だから、共有空間の容量が限界寸前だったのか。


 どうやら俺が残したメッセージは届いたようだ。


「またその人たちが来たら、俺が礼を言いたがってることを伝えてくれ」


 ――「わかった。じゃ」


「じゃ」


 今度は正常に接続を切った。ステラも『よかったですね』と言ってくれる。


 毒抜き済みは全部他のみんなに渡す。俺は未処理を食べる。


 これで食事のレパートリーも増える。


「よし! 今日も肉焼くぞ! リクエストあれば言ってくれ」


 俺は、リュウグの球根をかじりながら肉を焼く。


 肉を焼いては、リュウグの球根の毒抜きをする。


 自分の血をおろし金替わりにして、毒抜き済みの球根をおろす。


 それを半焼きの熟成牛肉に塗りたくり、しっかり火を通す。


 これで、今日のメインディッシュが完成した。


「配るぞ!」


「『おおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーー!』」


 血をおろし金にする提案をしたのは、ステラだった。


 俺自身できるとは思わなかった。だけど、これが役に立つ。


 全員に配り終えると、俺はただ一人猛毒を蓄える。


 自分でもなぜ死ぬことがないのかわからない。


 だけど、これが俺とステラを引き合わせてくれた。


 レヴェルが回復するまでのパーセンテージ。


 残り、十パーセント。明日には作戦決行だ。

読んでくださりありがとうございます


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主人公の活躍がみたい方は!!!!!


ぜひ第1話からご覧ください!!!!

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