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サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第2部 サブストーリー集

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第153話 正体バレと協力者

 激マズ料理を食べるようになってから数日。


 それでも俺の興味は尽きなかった。


 他の囚人たちもこの様子に慣れ始めたらしい。


 そんな激マズ料理を食べたその日から、俺にもうひとつの仕事ができた。


「新入りさん。それはなんですか?」


「豚肉のブロックだ。熟成されてるから美味いぞ? お、そろそろ焼きあがる頃合いだ!」


 それは、美味しい肉料理を全員に配るというもの。


 実は一度材料が切れかけたことがあった。


 そこを、共有空間魔法を利用して毎日妹から肉をもらっている。


「まだ料理はできないのか?」


「もう少し、仕上げの焼きを入れて……っと……」


 妹から追加でお願いした胡椒を振りかける。


 そして、人数分に切り分けて、魔法で移動させた。


 毎日肉料理ではあるが、俺の味付けがどうやら飽きないらしい。


 ちなみに今日のメニューは豚肉をただ焼いたもの。


 素朴な味にはなってしまうが、それでも嬉しかった。


「新入りさんは、料理上手なんですね」


「まあな。しばらく前までは妹の料理を毎日食べていた」


「妹さんがいるのですか?」


「ああ。今は血縁関係じゃないけどな」


 今も俺は自分の存在を隠している。


 俺がダインの生まれ変わりと知られてしまえば、きっと彼らは死を選ぶ。


 妹のミカエラからは、散々命の大切さを学ばされた。


 妹が初めて死んだ狸を連れてきた時。俺はそれをゴミに入れようとした。


 それを止められて以来、彼女の優しさに気づき始めたんだ。


 一人で家の畑に穴を掘って、一人で狸を入れられる箱を探して。


 しっかり入れて埋葬する姿は、本当にすごい人だと思わされる。


「妹さん。本当に優しい方なんですね……」


「そうだな。実際こうして食材を提供してくれるくらいだ。あっちも上手くやっているはずだ」


 今のところ俺は何も食べていない。それは、警備員に見つからないようにするため。


 ここの部屋のドアは、俺の血を強固に接着して警備員が入れないようにしている。


 そして、匂い消しの魔法もかけた。肉の匂いは外には絶対漏れない。


 全員食べ終わるのを確認すると、ドアの接着を解除する。


 警備員が入ってくる。そして、俺のところだけに料理を置いていった。


「今日も新入りさんはそれを食べるのですか?」


「もちろんだ。これだけでも俺はフルコース並みに嬉しいからな」


「その不味い料理が……フルコース……ですか……」


「おうよ!」


 そうして、俺はその激マズ料理にがっつく。


 口の違和感なんか関係ない。ねばねばしていようがなんだろうが、食ってこその楽しみ。


 周囲もそれをただ見ているだけで、誰も首を突っ込まない。


「味は……どうですか?」


「ん? いつも通りだが……」


「いつも通りって、やはりかなり不味いんですね……」


「だな。けど、一度も飽きない。もっと食いたいくらいだ」


 俺は警備員を呼んで追加をお願いする。


 最近では一日に百人前を食べるくらい、気に入っていた。


 それでも、まだ何か足りない。この料理は、もっと不味くアレンジできる。


 せめて、動物のフンくらいの不味さが欲しい。


 と言われても、フンにまでなれば俺でも食わないが……。


 しかし、それを求めても興味は尽きないかもしれなかった。


 美味さが数百万通りあるのなら、不味さも数百万通りあるに違いない。


「新入りさん。誰か来ましたよ」


「ん?」


 収容エリアのドアが開く。そこから、俺が頼んだ料理が運ばれてくる。


 いや、それだけじゃない。警備員の後ろを歩いている男性。


 少しやせ細っていて、俺でも心配になる姿。


「レヴェル!」


「うむ。会いに来た」


「ってか、なんでそんなやせっちょになってんだよ」


「それは其方からの血の提供が途切れたからであろう」


 まさかここにレヴェルが来るとは思わなかった。


 そもそも、なんでレヴェルがここにいるのか。


 謎だった。俺が捕まった当時、レヴェルは出かけていたから。


「ミカエラ殿から教えてもらった。探すのに苦労したもんだ」


「そうか。レヴェルすまない」


「問題ない。ダインも元気そうで……」


「ちょっ!?」


 しくじった。レヴェルは俺のことをダインって呼ぶんだった。


 それに、他の囚人たちが後ずさっていく。


 俺から離れていく音が、あらゆるところから聞こえてきた。


「新入りさんって……。あの伝説の……」


「ダイン……」


「……ルーディス」


「ああ。そうだ。けど、もう足は洗った。無作為で合理的でない殺しはしない」


 俺の正体が完全にバレてしまった。


 ここまで上手くやってきたのに、もう後戻りはできない。


 追加の料理を食べる。それを否定する人は誰もいない。


「そんな……。ダインの料理を……」


「で、でも! みなさん! ダインさんのおかげで、わたしたちは命を繋げているんですよ! 優しい世界で新たに学び直して、わたしたちを生かしてくれているんですよ!」


 狸獣人の女性が、必死に俺を庇う。彼女はこれまでも俺のことを気にかけてくれた。


 俺が助けた人が、俺を助けようとしている。その感情がなぜかわからない。


 俺は永遠の罪人だ。前世の記憶を持っている以上、それは変らない。


 だけど、そんな俺が助けようとしている人たちがいる。


「みなさん。考え直してください! ダインさんは……! わたしたちのために行動してくれているんです! ダインさんが怖い気持ちはわかります。だけど、それだけでは……! ダインさんがここからいなくなったら、誰が命を繋ぐんですか!」


「……そうだ。あっしたちは、彼のおかげでここまで生きてこれたんだ」


 狸獣人の強い意思が、波のように広がっていく。そして、全員の意識が一致した。


 彼らはもう、俺の味方。そして、俺が救うべき仲間。


 俺は彼らと共にここから抜け出すことを考え始める。


 きっと犠牲者が出てくるかもしれない。


 それは、俺に歯向かう敵かもしれない。


「自分も、ダインさんに従います! 鍵開けが得意なので任せてください!」


 子供の獣人が手を挙げる。年齢はミカエラと同じくらいの少年。


 その後も、自分もと協力の表明をしていく。


 しかし、この会話は警備員にも筒抜けだ。俺が全て排除するしかない。


「とりあえず、レヴェルは俺の血を蓄えておけ。レヴェルが回復次第で行動を開始する」


「うむ。無理するでないぞ」


「おう」


 レヴェルは剣の姿になる。そして、俺の身体の中で眠りについた。


 きっとかなりの血が必要かもしれない。


 今の俺では間に合わないかもしれない。


 それでもいい。生きて帰ることができるのであれば。

読んでくださりありがとうございます


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主人公の活躍がみたい方は!!!!!


ぜひ第1話からご覧ください!!!!

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