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サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第2部 サブストーリー集

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第152話 大輝のレッツ激マズ道!

 収容所に来てから約一週間近くが経過。俺はその間、絶食をしていた。


 獣人の国の収容所は、他の場所よりも厳しい。


 罪状次第では餓死するレベルまで、食事を与えてくれない。


 まあ、俺は長期間絶食しても血さえあれば命を繋げられるが……。


「今日から食事が出るのか……。楽しみだ……」


「新入りさん?」


 俺の独り言に、近くの女性が反応する。


 狸のような耳。顔には光除けの黒いラインが引いてある。


 獣人の国の収容所は、集団で檻に入れられている。


 男女は問わない。双方が混ざって生活をしていた。


「なんだ?」


 俺は、女性の言葉に返答する。すると、女性は訝しげな表情を向けた。


 ここの食事は、拷問級に不味いことで有名。


 だから、収容所に入りたくない国ナンバーワンとも言われている。


 ここにいる人はみんなやせ細っていて、骨ばっている印象だった。


「その……。新入りさんは、どうしてそんなにも表情が明るいのですか?」


「ん? 単にここの食事が楽しみなだけだが……」


「や、やめた方がいいですよ。ここの食事は食べない方が天国ですから。餓死して消える方がマシですって」


 まあ、普通の人ならそう思うはず。だけど、俺にとってはわけが違う。


 俺自身激うまが好き。それ以上に激マズも好き。


 そんな過去を思い出したのも、相棒であるレヴェルを手にしてからだった。


「俺は普通に食うぞ? 今のここの飯がどれほどマズくなってるか知りたいからな」


「……」


「ん? どうした?」


「その……新入りさんは、変わっていらっしゃいますね……」


 たしかに俺は変わり者。自覚はなくはない。


 妹に知られたら、ただじゃおかれないと思うくらいに。


 収容所の檻から見える範囲を確認する。


 俺が入っている檻には、積極的に話しかけてくる女性以外に男が二人。


 二人とも、完全に肉落ちしていてまるで骸骨のようだ。


「もう……あっしは数か月食べてない……」


「同じくオイラもまともに食えてない……。なんでこんなことに……」


「そういうことか……」


 家を出る際、肉をいくらか持ってきた。調理はできるが、胃が完全に弱り切っている人には与えられない。


 ここは俺の血を使って栄養を少し修正した方が早そうだった。


 少しでも美味い飯を、彼らに食わせる。そして、ここにいる人全員を解放させる。


 まるでたらい回しの連鎖から離れ、自主的に行動するかのような感覚。


「ルスト」


 俺は自分の身体から管を発生させる。それを、ここにいる人全員に繋げた。


 まずはみんなの血を一滴分回収。対応する血を複製し提供。


 ここから、俺自身疲労でしかない地道な作業が開始される。


「その新入りさん!」


「ん?」


「この管……なんですか?」


「んーと、今ここにいる人たちに俺の血をな」


 女性は必死に外そうとしている。だけど、この管は俺の指示しか聞かない。


 無理に引っ張っても無意味だ。その後も俺は身体に負荷をかけ続ける。


 メンバーの筋肉量が増えていく。代償に俺の筋肉量が落ちる。


 俺の空間には、まだラディルの血がある。問題はない。


「その。新入りさんの身体が……」


「大丈夫だって。俺はこんなんじゃ死なない」


「……しかし」


 そうしていると、食事が運ばれてきた。


 お粥とは似ても似つかないドロドロとした液体。


 少し腐ったような臭いがする。非常に興味がそそられるものだ。


「君たちには常時俺の血を提供する。だから、君たちはこの飯食わなくていいぞ」


「その……本当に……食べ……」


 女性が話しかけてくる間にも、俺は必死になって食べる。


 口の中に張り付く感覚。癖の強い後味。異常なほどの苦味。


 まるでヘドロを煮たような、まとまりのない味。


 気が付けば四人分の食事を完食していた。


「ふぅ……。ちょっと食べすぎたな……」


「その……大丈夫なんですか?」


「ああ、問題ない。けど、もっと不味いのが食いたいな……」


 今のでも、満足。だけど、何かが物足りない。


 ここまで不味いものが作れるのなら、もっと上ができるはず。


 そして俺はそれの作り方を知っている。毒が強いやつだけど。


「食器を取りに……。おい新入り、そのガリガリの姿はどうした!」


「ん? ただ単に囚人らしく減量しただけだが」


「そ、そんな……っておい! 他のみんなの体格が……」


 警備員の言葉に、俺はメンバーを見る。


 全員肉付きはよくなった。そして、真っ白の顔は血の気がある。


 どうやら俺の即興作戦は成功したようだ。


 すると、女性が俺を指さした。


「ここ、この人がやったんです……。わたしたちを助けてくれるって……」


「ん? 俺はそんなことを言ってないが……」


「なに?」


「はいはーい。計三十人殺害容疑かけられている一般人でーす」


 ここは軽いキャラで素通りしておこう。


 俺がダインであることを伝えれば、どうなるかわからない。


 というよりも、この飯消化が早すぎる。もう腹が減ってきた。


「さっきの飯。他の残している人の分全部もらっていいか?」


「貴様は馬鹿か!」


「はいはーい。味覚音痴でーす」


「もういい。さっさと集めてこいつにやれ!」


 よっしゃ。俺のところにマズ飯が来る。


 俺の心拍数は軽く百を超えた。空腹で仕方ないんだ。


 ヘドロのような飯を俺は一心不乱になって食う。


 ひたすら、飯を口へ運ぶ。管の数はさらに増えていた。


 他の檻に入っている人の分。その全員に俺の血を提供する。


 それをただ、ずっと、延々と。


「ふぅー……。まだ足りないな……」


「新入りさん。本当に大丈夫なんですか? 無理して食べて……」


「ないな。むしろ大歓迎だ。この飯は飽きない。警備員さーん。追加お願いしまーす!」


 俺はその後もマズ飯を無限に近いくらい食べた。


 少量の栄養素。それを自分の血で補填し、時々魔王ラディルの血を飲み。


 全員に血が行き渡ると、俺は料理の準備を開始した。

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ぜひ第1話からご覧ください!!!!

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