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サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第2部 サブストーリー集

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第151話 薬剤調合師ダイン

第2部サブストーリー。スタート!

 ◇◇◇大輝目線◇◇◇


 あれから一ヵ月。アランたちは予定通り食肉提供禁止令の一部を解除した。


 それからは、俺たちの仕事が嘘であってほしいくらい、忙しくなった。


 早朝。夜間の時間を利用して肉を調達してくるベッド神。


 それを、セリンの家の台所で調理する妹。


 初心者でも、楽しく美味しく。これをテーマに掲げての普及活動。


「さて、今日の俺の仕事はっと」


 比較的オールラウンダーの俺。最近は薬づくりに使う薬草や木の実集めが基本。


 ミカエラが作る新作料理を食べて、そして味の評価をし。


 それが終ったら魔界の方へ出ていく。


 薬草と木の実は、魔界の方が豊富で確実に欲しいものが手に入る。


 ただ、昔と違い求めているものが見つからないことだってある。


「んーと。今日調合予定のは……っと、胃の薬関係か……」


 肉の普及は少しずつ進んでいる。しかし、胃酸の濃度が対応しきれていない。


 肉を消化するのに時間がかかってしまい、小児に限っては吐き戻しが多い印象。


 蓄積する量を胃が処理しきれず、それで胃もたれを起こす事例も増えていた。


 それは、難易度が低い鶏肉でも五人に一人はそうなっている。


「まずは、これだな……」


 前世の記憶を頼りに、木の実をもぎ取っていく。


 見たことのない草を見つけたら、資料としての採取。


 迷わず口に入れて、毒性の確認を行う。毒が効かない俺にしかできないこと。


 そういえば、日本にいた時も毒のある食べ物に興味があった。


 ただ死にたかった。日本が嫌いだった。


 それでも、可愛い妹や弟で引き戻されていた。


 俺の心が弱いのは、俺が一番知っている。


 魔界の空を見る。真っ赤な世界。


「あとは、イルハリナだけか……」


 イルハリナはバルダ語でリュウグの実を意味している。


 リュウグの実の見た目は小さな蛇龍の形。


 ドラゴンやドラゴニュートの大好物で、俺も好きだった。


 しかし、このリュウグの実はものすごく希少性が高く、なかなか見つからない。


「どうすっかなぁ……。俺一人でも群生地には行けるが……」


 リュウグの実の群生地はよく知っている。


 ドラゴニュートは他種族とは違い、幼少期でも魔界に出ることができた。


 魔族とも親和性が高く、全体をまとめる役割を担っている。


 そして、リュウグの実の場所は幸いにも獣人の国近辺にあるので、寄り道も可能。


「行ってくるか……」


 五百万人分作れる量の薬草と木の実を採取し終えると、移動を開始。


 そろそろお昼の時間。しかし、弁当を忘れてしまった。


 こんなこともあろうかと、ラディルからもらった彼女の血がある。


 魔族の血は、まるでエナジードリンク張りの独特な風味があって、個人的にお気に入り。


 だからか、エナドリ感覚でガバガバ飲めてしまう。


「ふぅ……。よし」


 獣人の国から五キロほど離れた場所。そこには、魔界の物々しい雰囲気に似合わない花畑。


 そこに、目的の実がたくさんある。ここに来るのも、久しぶりだった。


 この花畑はドラゴニュートが管理している。


 リュウグの実はそこで厳重に育てられていた。


「よし、ここにバルダ語で……っと。〝リュウグの実を拝借します。ダイン・ルーディス〟。じゃ取りますかね」


 俺はリュウグの実の採取を開始する。どれも美味しそうに熟していた。


 しかし、薬に使うのは種になりかけているもの。


 リュウグの実は、熟すと緑色になる。種になる時には、青く輝いている。


 俺はその青い実だけを取っていった。


「これだけあれば十分だな」


 だいたい三百個ほど。これだけあれば目標の数薬が作れる。


 そうして、俺は花畑から出てセリンの家へ向かった。


 獣人の国の門をくぐる。家に着くと調合の準備を開始。


 使用する臼は、ラディルの城下町で俺が使ったもの。


 俺の特殊な処理方法で、劇毒の毒性は除去済みなので問題はない。


 それでも、結局は俺が引き取ることになってしまった。


「今日もよろしくな……」


 俺は臼の中に薬草とリグの実。リュウグの実を入れてすりつぶす。


 リグの実は特効薬を作るのに重要な木の実。


 ドングリのような見た目だが、組み合わせ方で効果を強くする。


 そして、リグの実と似たもので、メリグの実というもある。


 完全な食用木の実のメリグ。見た目も一緒で、見分けがつかない。


 そういえば、妹が作り直したカレーはそんな味だったかもしれない。


「えーと、こうやって……っと。できた」


 最初に作ったのは整腸薬。次に胃腸炎や食道炎を改善する薬。


 次に俺は、新作づくりを開始する。どんどん新しく準備していき、全て丸薬に変えておく。


 丸薬の方が安全だし、俺もこの方が飲みやすい。


 そもそも、俺は胃腸系で体調不良になったことはないが……。


「大輝。帰ってたんだ」


「おうよ。ミカエラ。そっちは準備どうだ?」


「いい感じ。今日は鶏肉を細かくしてお粥に入れたものを提供したよ」


「お、いいな。それなら消化も楽そうだ」


「でしょ」


 今日のミカエラは本当に嬉しそうだった。


 どうやら成功したようだ。これで、味の良さを知ってもらいたい。


 すると、外が急に騒がしくなる。俺の勘が誰かの気配を察知した。


「失礼する」


 入ってきたのは警備員。それも、日本人で超高身長クラスの俺よりも大きい。


「ダイン・ルーディスに逮捕状が出ている」


「は? 俺に!?」


「そうだ。直近で計三十名の殺人容疑。元殺し屋のダインであれば可能だろうと見た」


「まあ。可能っちゃ可能だけど……。最近は薬づくりで忙しいんだ。それに、俺の薬は毒物不使用だぞ?」


 もちろん毒薬を作るのもできる。だけど、今は毒薬からは離れしっかりした薬しか作っていない。


 むしろ、毒薬を作る気すらない。国民に安心して肉を沢山食べてほしいから。


 なのにも関わらず、警備員は俺を拘束した。まあ、問題ない。


「事情は収容所で聞くとする」


「ならちょっと待ってくれ」


 俺はできたばかりの丸薬を少しと、ミカエラが使わなかった鶏肉を空間の中に入れた。


 治験ができるかもしれない。そんな気がしたから。


 そうして俺は、警備員に連れられ収容所へと移動する。


 もう、慣れ過ぎていた。慣れてはいけないんだろうけど。


 俺的に、収容所のマズい飯は大好きだったから。

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