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サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第5章 獣人の世界とこれからの未来

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第147話 血の系図

 それから先の生活は、ものすごく平坦なものだった。


 メウスも無事に目を覚まし、今は通常通り生活をしている。


 今日も、私たちはセリンの家にお邪魔して、一日を過ごしているところだった。


「それにしても、あのライガンが偽物だったとはね……」


「ぼくは知ってたけどね。そろそろ帰ってくるんじゃないかな?」


「メウス。何か知ってるの? もしかして、本物がいるとか?」


「さあ、どうでしょう。それよりも、みんなありがとう。これでこの国も安泰だね」


 メウスがそう言っているなら大丈夫なんだと思う。


 それでも、大輝の分析力がなければ意味がなかったかもしれない。


 彼の能力は本当に計り知れないと思う。本人曰く、まだ全体の二十パーセント程度らしい。


「大輝が本気出したら、どれくらいの感度でできるの?」


 気になったことはまず聞く。私は大輝の返答を待つ。


 しかし、今彼は別のことに夢中だった。


 というのも、最近はエレンを巻き込んで筋トレをしているようで……。


 現在は、大輝がエレンの足を押さえる形で、腹筋をしていた。


 今回はエレンの希望だったらしい。本当に大輝に懐いてしまったようだ。


「エレン。ラスト一セット!」


「は、はい……!」


「二人ともほどほどにね」


 エレンが苦しそうな表情をしながら、上半身を起き上がらせる。


 今日のメニューは腹筋を三十回らしい。


 大輝によれば、エレンは当初十回も行かなかったとのことで……。


 筋トレ魂を激しく刺激したとのことだった。


「ラスト五回! 三、二、一。よし終了。ゆっくり休んでくれ」


「は、はい……。三十回。ものすごく……きつかったです……」


「そりゃそうだ。けど、前よりは安定しているな」


「ありがとうございます」


 ようやく筋トレが終わったようなので、少し様子を見ることにした。


 それにしても、外からの視線が気になる。


 きっと原因は大輝とエレンにあるのだろう。


 二人はここに来てからずっと、筋トレだけに力を入れていた。


 食事もとり肉を中心に置いて、ご飯を大盛。


 野菜もしっかり沢山食べて、食休み後にはランニングに出かける。


「エレン。完全に大輝色に染まったね」


「だね。ところでメウスは運動しないの?」


「ぼくはいいかな。元々ぼくは魔法特化だから、身体動かすの慣れてないんだよね」


「そうなんだ」


 ちょうど休憩が終わったエレンと大輝。


 二人して、ご飯にがっついている。


 実は、大輝にも少し変化があった。それは、本能任せで血を求めなくなったこと。


 エレンがアラン相手に熱弁したことで、考え直したらしい。


 それでも、血を欲しがるんだけど。根本的な部分は治ってなかった。


「それで、大輝。血の解析。本気出すとどれくらいの感度になるの?」


「ん? んーとな……。あまりやったことないからな……」


「そうなの?」


「ああ。ま、レヴェルよりは劣るが……。中の細胞情報まではいけるな。もしかしたら俺、この世界で医者になれるかもしれない」


「大輝が医者って、想像できないけどね」


 血を飲む医者って正直ありえない気がする。


 まあ、彼なら即座に特効薬を調合して即時治療をするかもだけど。


 ほんと、大輝は良いところを持ってくる。そしてかっさらう。


 でも、そんな彼を好きでいたいと思う。


「大輝。ご飯おかわりする?」


「おう。もらう。あと、牛肉のステーキ二枚くれ」


「了解!」


 メウスが台所でひたすらご飯を炊いては、肉を焼いている。


 隣に立つシリルも、野菜の追加をしていた。


「大輝さんも、とても多く召し上がるのですね」


「まあな」


 私でも、こんな彼を見たことがない。


 いつも『食事制限だ』って言ってごく少量しか食べないのに。


 大輝は焼きあがったばかりのステーキにかぶりつく。


 ナイフをそもそも使わないスタイルが、野生児らしくて彼らしい。


「大輝さん、もう少し食べ方考えてください」


「ん? んーんーん―」


「く、口の中入れすぎ……」


 そんな彼を余所に、私はパンを食べる。


 彼らみたいに大食漢ではないので、これくらいで十分だった。


「それで大輝。あのライガンさんの血に関してだけど……」


「ん。うっく。ああ。じゃ、追加の種明かしをしようか」


「まだあったの?」


「そうだ」


 大輝は、魔法紙を用意する。


 そこに、自身の血を垂らした。


「これは、アランの血を複製した血だ。これで全情報が見れる」


「うん」


「ここからは、五割くらい本気で解析する。さらに垂らせば……っと」


 すると、魔法紙の文字が大きく浮かび上がった。


 そこから、家系図のようなものが展開されていく。


 その量は膨大で、どこをどう見ればいいのかわからない。


「あ、ミカエラさん。ここにライガンさんの名前があります!」


「本当だ。名前もライガン・レーシスって書いてある」


「ああ。ま、前回は数パーセントしか本気出してなかったから、あとで気付いた」


 つまり、レーシス姓の人がいないというのは、大輝の誤算。


 いや、そもそもレーシス姓の血がデータとしてなかったから?


 ということは……。大輝がこれに気づき、メウスが知っているとなると……。


「お、お邪魔します……」


 誰かが家に入ってくる。それは、私たちが見たことのある見た目だった。


 頭には角が生えている。たしかに、魔族なのは間違いない。


 だけど少しだけ腰が引けている。気のせいだと思うけど。


「ようこそ、ライガンさん」


 珍しく、メウスがさん付けで名前を呼んだ。


 彼はそれだけすごい人なのかもしれない。


 見た目はアランと変わらない。ただ、角は二本だけだった。


 でも、きっと彼は何かを知っている。そんな気がする。


「は、はい……。ちょっと緊張しています……」


「まあ、無理しなくてもいいよ。ぼくたちは味方だからね」


「ありがとうございます」


 この男性が本物のライガンなのだろうか。


 服装はものすごく貧相で、どこか弱弱しい。


 どう見ても、私たちの知っているライガンではなかった。


「ライガンさん。普段通りでいいんですよ」


「で、ですよね……。今は、落ち着かせて下さい」


 まだこれが現実だとは思えない。だけど、こうして、本物が現れたなら。


 また少し良くなるかもしれない。ここからは、ゆっくり話を聞かせてもらうことにした。

残り3話で完結します。


ついに現れた本物のライガン。そんな彼を次回は紐解きます!

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