第146話 思考交渉暗殺
大輝のところに着いた時。問題の二人は、メウスの血に夢中だった。
そりゃ神様の血だからね。興味を持つのも無理はない。
その奥には、アランが目を丸くしていた。まあ、気持ちはわからなくもない。
「アランさん。私の兄がすみません!」
「い、いや……その……。これは一体……」
「うちの兄は血に目がなくて……。すぐにどっか行ってしまうんです……!」
「は、はぁ……」
アランの隣に立ちリフナも、ドン引きしている。
そんな彼女たちも無視して、大輝は大きな容器に入った金色の血を眺めている。
もしかしたら、どうしたら飲めるかを考えているのかもしれない。
そりゃ、そうなるわ。大輝のことだもん。もう私たちも、そんな彼が当たり前。
そんなことも知らないアランたちの反応が、本当の正解だと思う。
できなくなってしまったのは、完全に慣れたからかもしれない。
「大輝。もう少し待って」
「……。早く味見したいんだけどな……」
「ダイン。そう焦ることではない。ミカエラ殿がなんとかしてくれるはずだ」
「はぁ……こっちは腹ペコなんによぉ……」
いや、今朝大輝は黒ソリアを百個食べてたんだけど……。
というか、毒を盛られたうえで追加の毒を投入するって、頭どうかしてるよね?
体調不良にならない彼が、少し心配になる。
むしろ耐性がありすぎて困る。本当に死にたい気持ちはあるのだろうか。
そもそも、彼にとっての死の価値観はどれほどのものなのか。
「そんなことを考えても仕方ないよね。アランさん。話したいことがあります」
「なんだ?」
「なんで、アランさんは国民からお金を横領したりとか、食肉の提供を禁止したりとかしたんですか?」
単刀直入に言ってみたけど、少し緊張する。
上手く言えているかはわからない。私だって、会話が上手いわけじゃない。
誰かと歩調を合わせるなんて、誰でもできるわけじゃない。
大輝が羨ましい。彼はたった一滴の血だけで、相手に合わせた発言ができる。
本物のチートを持っている彼は、私ではなれない。
「私は、こんな場所を平和な場所とは呼べません。もっと、国民を最優先にした。国民ファーストの政策じゃないといけないと思います」
「それはどういうことだ?」
「クリスタルを動力としてインフラ整備をするのは、私も画期的でいいと思います。しかし……」
言葉に詰まる。思考と言葉がなかなか上手く併走してくれない。
誰かが肩に手を置く。振り返ると、エレンがいた。
「ミカエラさん。頑張って」
そう、エレンが耳打ちでエールを送ってくれる。
私は深く息を吸って吐いた。ぐちゃぐちゃになった考えを整理し直す。
「しかし、人の魔力を動力とするのは、いかがなものだと思います。動力になるものは、決してクリスタルだけじゃない。機械都市で、他の国よりも発展しているこの国なら……。もっといい方法があると思います」
「ふむ。では、食肉の禁止についてはどう考える」
「それは……」
「ここからは僕が言ってもいいでしょうか」
「エレン!?」
さっきまで支える側についていたエレンが、挙手をする。
もう、彼は初めて会った弱気な人じゃない。
少しずつ、意思も強くなっている。そんな気がした。
剣豪である大輝相手にも、怖気づくことなく食らいつくくらい。
「ここに来て、僕は気づきました。国民の皆さんの筋肉量がものすごく低いからです」
「へ?」
「大輝さんが教えてくれました。筋肉を構成する栄養素として、せめて鶏ささみが必要だと。ここは、鶏ささみも売ってないですよね?」
な、なんで筋肉の話になるの!?
いや、間違ってないんだけどね。ものすごく合ってはいるんだけど……。
「アランさんは、筋肉を構成する三大栄養素を知ってますか?」
「さ、さ……」
「三大栄養素です。タンパク質。炭水化物。脂質。それに、野菜を加えると、人は元気になります」
だ、誰か止めて……。なんか、エレンが暴走しているんだけど。
これには、血に夢中の大輝も興味を示したらしい。
ティアはコクコクと寝落ちしかけているし、零は頭を抱えている。
「ここには、炭水化物はあります。ビタミン豊富な野菜や果物もあります。ですが、肉や魚に含まれる脂質やたんぱく質が不足している。それでは、栄養が偏りすぎます!」
「な、なるほ……」
「パンに使用可能な卵も、生食やスクランブルエッグとなれば提供できない。それもなんかおかしい気がします。僕、タマゴかけご飯を十杯食べたいです! 今すぐ! 今すぐに!」
結局食への欲求を満たしたいだけだったエレン。
だけど、食に関してこんなにも正当に怒る彼は初めてだった。
なんか変なところが大輝に似てしまったのかもしれない。
そう考えてみると、たしかにエレンの身体は大きくなっている。
「もしかして……」
「あとで説明しますから、ミカエラさん」
そんなやり取りの中で、アランは茫然としていた。
気持ちはわからなくもない。彼は食肉禁止に関して質問していたから。
なのに、エレンはなぜか筋肉の話ばかり話している。
たしかに、繋がりはあるかもしれない。
エレンにも、それなりの考えがあって発言したんだと思う。
「食肉禁止……。撤廃を検討なさいますか? アラン様」
「……」
「アラン様」
「もう少し、考えさせてもらえないか。リフナ」
「かしこまりました」
エレンはぜぇぜぇと息を荒くしている。
だけど、アランが考えを改めようと考えてくれることになった。
エレンの気持ちは、しっかり伝わったらしい。
「もう帰っていい。それと……、ダイキ。血が欲しいのか?」
「あ、ああ。この血の色は見たことないからな。味を覚えて資料にしたいんだ。だろ? レヴェル」
「うむ。我も興味がある」
「では、それを全て与えるとしよう」
こうしてタンク四本分のうち二本のメウスの血は、全て大輝とレヴェルの腹に入っていった。
残った血は、私が火力発電の燃料になると説明したところ快諾。
そうして、今回の件は全て綺麗に終わった。と思いたい。
セリンの家に着くと、大輝が記憶したデータでメウスの血を複製。
輸血も無事完了し、あとはメウスが目を覚ますのを待つことになった。
残り4話で完結!!!!!!
第2部サブストーリー準備中です!!!
☆☆☆☆☆をいくつでもいいのでぜひ投げてください!!!




