第144話 さあ、種明かしの時間だ!
「じゃ、種明かしだ」
大輝とライガンの再会。だと思っていた空間は、大輝の言葉で覆される。
彼の眼は本気だった。それも、全てを理解しているかのような。
大輝の指を見る。少量の血が媚びりついていた。
もしかして、さっきの間に……。
「ミカエラは気づいたみたいだな。さっきライガンの血を少しもらった。情報を確認するためにな」
「わたくしの……ですか?」
「ああ。結果は不一致。俺の知っている味じゃない」
大輝はそう言って、少し不満そうな顔をした。
知っている味じゃない。つまり、親戚ではないということ。
そういえば、大輝がライガンを抱いている時、リフナも『孫』と言っていた。
叔母や叔父の時は、孫とは言わないはず。何かがおかしい。
「俺は血の味だけで全情報を得ることができる。前世から受け継いでいる能力だ」
「それで。大輝が記憶している全部の血と照合したってことね」
「ああ。俺のデータベースを甘く見たお前らが悪いな。特に、ライガン。いや、アラン・リゼルタス」
アラン・リゼルタス。聞いたことのない名前。
だけど、大輝に名前を伏せても意味がない。それが理解できた。
大輝は手で人の眼のような模様を宙に書く。
これは、バルダ語だ。すると、大輝の後ろに黒い光が現れる。
「レヴェル。出てこい」
「承知」
光から出てきたのは、大輝の相棒であるレヴェルさん。
彼も少し苛立っている様子だった。
だけど、この状況。相当ヤバイ気がする。
「まずは、アラン。お前はライガンという偽名を使っていた。俺のデータベースには、レーシス姓の血の情報はない」
「レーシス姓の血がない?」
「そうだ。血の情報と名前は全てリスト化してある。最近できた姓なら新たに追加される」
大輝は分析結果をどんどん明示していく。
そして、ライガンの不審な動きまでもを説明してくる。
「ライガンは俺との接触を避けていた。魔界でキャンプしていた時とかな。お前は俺の向かいに座っていたはずだ」
「……」
「そして、ラディルの城にいた時は、俺から距離を取っていた」
たしかに、大輝の言う通りだった。
特に目立ったのは、この国にいる時らしい。
ライガンは頻繁に家を出ていた。帰ってこない日もあった。
大輝の隣に座っていることなど、全くない。
「それと、血の記憶も辿らせてもらった。この手はレヴェルの得意技だな。レヴェル説明頼む」
「了解した。ライガン。いや、アランはリーファ家の方に忍び込んでいた。そこで、人を監禁した」
「はい」
レヴェルも解説を続ける。そこの時点でアランは私たちに目をつけていた。
だけど、彼は血を飲む大輝を見て以来、接触を控えていた。
ラディルの敷地で戦争を起こしたのも意図的。
他にもどんどん情報が出てくる。
「以上が俺とレヴェルの意見だ。異論はないな?」
「……」
「異論はないな!」
「まいった……」
ライガンの姿が変化していく。それは、頭に角を三本生やした、いかつい男だった。
顔は普通の人間だけど、やっぱり獣人族って面白い。
ライガン改めアランは、苦いものを食べたような表情を浮かべる。
どうやら、今回の勝負は大輝が勝利したらしい。
「そして、俺の前世は男だ。ミカエラの反応がまんま過ぎて笑いをこらえてたんだわ」
「ちょっと大輝……」
「いやあ、わりぃ。ま、作戦は上手く行ったみたいだな。レヴェルも協力サンキュ」
「ダインの演技。見事であった」
いや、プロの演劇役者よりは下手だったけどね。
むしろ、大輝は演劇部が向いていそうなんだけど……。
まあ、大学生だし。そんなことはどうでもいいか。
「ダインは元から男。それも、並み程度のナイスガイであった」
「な、並みのナイスガイってなんだよ。ってか、いつの間にナイスガイって言葉を覚えたのかよ……」
「ダインの記憶を辿らせてもらったまでだ。恥ずかしがることではないであろう?」
「いや、超恥ずかしいんだが……」
大輝の顔が真っ赤に染まる。それも、ゆであがったタコのように。
「それはそうとして、リフナさんは、大輝から見てライガンのことを〝孫〟と言いましたよね?」
「それがなんでしょう」
「ライガンは、ルーディス・グランダのことを叔母と呼んでいました。叔母から見てライガンは甥にあたります」
私もこの波に乗るため、問い詰める。
リフナの表情が変わっていく。この手の知識はあまりなかったようで……。
最終的に彼女は、陥落してしまった。私の大勝利と言っていい。
「レヴェルもなんか言ってやれ」
「うむ。アラン。リフナ。もうこのようなことはしないと言えるか?」
「……」
黙秘。こういう状況でのよくあるパターン。
でもこれでいい。ここからは、本題だ。大輝が筆頭となり続ける。
「ベッドし……」
「メウスね」
「そ、そうだ。メウスの居場所を教えてくれ。匂いからして、あいつの匂いがするんだ。ものすごく正確にな」
相変わらず名前を覚えるのは苦手らしい。久しぶりにベッド神という言葉を聞いた気がする。
そこへ、朝の買い出しに行っていたらしいエレンとシリルが到着する。
珍しくティアと零も一緒だった。最近この二人は武器の状態だったからね。
「ミカエラさん。大輝さん。何かあったんですか?」
「ああ、今メウスの場所を聞き出しているところだ」
「その……。誰もいないですけど……」
エレンの指摘で気付く。アランとリフナの姿がない。
こんなことになるなんて……。私たちとしたことが……。
それでも、大輝は問題ないという。血の匂いでわかるとのこと。
お前は犬か! って叫びたくなるけど、我慢することにした。
「血の方向からして。王宮付近だ。ミカエラ。その近辺にいそうな場所はわかるか?」
「うーん」
「大輝さん。もしかしたら、結晶がたくさんあるところかもしれません。そこには、生命の大結晶もあります」
「お、シリルやるな! んじゃ、朝飯食って早速向かうぞ!」
そうして朝食を済ませた私たちは、セリンが教えてくれた坑道を目指し歩き出した。
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