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サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第5章 獣人の世界とこれからの未来

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第144話 さあ、種明かしの時間だ!

「じゃ、種明かしだ」


 大輝とライガンの再会。だと思っていた空間は、大輝の言葉で覆される。


 彼の眼は本気だった。それも、全てを理解しているかのような。


 大輝の指を見る。少量の血が媚びりついていた。


 もしかして、さっきの間に……。


「ミカエラは気づいたみたいだな。さっきライガンの血を少しもらった。情報を確認するためにな」


「わたくしの……ですか?」


「ああ。結果は不一致。俺の知っている味じゃない」


 大輝はそう言って、少し不満そうな顔をした。


 知っている味じゃない。つまり、親戚ではないということ。


 そういえば、大輝がライガンを抱いている時、リフナも『孫』と言っていた。


 叔母や叔父の時は、孫とは言わないはず。何かがおかしい。


「俺は血の味だけで全情報を得ることができる。前世から受け継いでいる能力だ」


「それで。大輝が記憶している全部の血と照合したってことね」


「ああ。俺のデータベースを甘く見たお前らが悪いな。特に、ライガン。いや、アラン・リゼルタス」


 アラン・リゼルタス。聞いたことのない名前。


 だけど、大輝に名前を伏せても意味がない。それが理解できた。


 大輝は手で人の眼のような模様を宙に書く。


 これは、バルダ語だ。すると、大輝の後ろに黒い光が現れる。


「レヴェル。出てこい」


「承知」


 光から出てきたのは、大輝の相棒であるレヴェルさん。


 彼も少し苛立っている様子だった。


 だけど、この状況。相当ヤバイ気がする。


「まずは、アラン。お前はライガンという偽名を使っていた。俺のデータベースには、レーシス姓の血の情報はない」


「レーシス姓の血がない?」


「そうだ。血の情報と名前は全てリスト化してある。最近できた姓なら新たに追加される」


 大輝は分析結果をどんどん明示していく。


 そして、ライガンの不審な動きまでもを説明してくる。


「ライガンは俺との接触を避けていた。魔界でキャンプしていた時とかな。お前は俺の向かいに座っていたはずだ」


「……」


「そして、ラディルの城にいた時は、俺から距離を取っていた」


 たしかに、大輝の言う通りだった。


 特に目立ったのは、この国にいる時らしい。


 ライガンは頻繁に家を出ていた。帰ってこない日もあった。


 大輝の隣に座っていることなど、全くない。


「それと、血の記憶も辿らせてもらった。この手はレヴェルの得意技だな。レヴェル説明頼む」


「了解した。ライガン。いや、アランはリーファ家の方に忍び込んでいた。そこで、人を監禁した」


「はい」


 レヴェルも解説を続ける。そこの時点でアランは私たちに目をつけていた。


 だけど、彼は血を飲む大輝を見て以来、接触を控えていた。


 ラディルの敷地で戦争を起こしたのも意図的。


 他にもどんどん情報が出てくる。


「以上が俺とレヴェルの意見だ。異論はないな?」


「……」


「異論はないな!」


「まいった……」


 ライガンの姿が変化していく。それは、頭に角を三本生やした、いかつい男だった。


 顔は普通の人間だけど、やっぱり獣人族って面白い。


 ライガン改めアランは、苦いものを食べたような表情を浮かべる。


 どうやら、今回の勝負は大輝が勝利したらしい。


「そして、俺の前世は男だ。ミカエラの反応がまんま過ぎて笑いをこらえてたんだわ」


「ちょっと大輝……」


「いやあ、わりぃ。ま、作戦は上手く行ったみたいだな。レヴェルも協力サンキュ」


「ダインの演技。見事であった」


 いや、プロの演劇役者よりは下手だったけどね。


 むしろ、大輝は演劇部が向いていそうなんだけど……。


 まあ、大学生だし。そんなことはどうでもいいか。


「ダインは元から男。それも、並み程度のナイスガイであった」


「な、並みのナイスガイってなんだよ。ってか、いつの間にナイスガイって言葉を覚えたのかよ……」


「ダインの記憶を辿らせてもらったまでだ。恥ずかしがることではないであろう?」


「いや、超恥ずかしいんだが……」


 大輝の顔が真っ赤に染まる。それも、ゆであがったタコのように。


「それはそうとして、リフナさんは、大輝から見てライガンのことを〝孫〟と言いましたよね?」


「それがなんでしょう」


「ライガンは、ルーディス・グランダのことを叔母と呼んでいました。叔母から見てライガンは甥にあたります」


 私もこの波に乗るため、問い詰める。


 リフナの表情が変わっていく。この手の知識はあまりなかったようで……。


 最終的に彼女は、陥落してしまった。私の大勝利と言っていい。


「レヴェルもなんか言ってやれ」


「うむ。アラン。リフナ。もうこのようなことはしないと言えるか?」


「……」


 黙秘。こういう状況でのよくあるパターン。


 でもこれでいい。ここからは、本題だ。大輝が筆頭となり続ける。


「ベッドし……」


「メウスね」


「そ、そうだ。メウスの居場所を教えてくれ。匂いからして、あいつの匂いがするんだ。ものすごく正確にな」


 相変わらず名前を覚えるのは苦手らしい。久しぶりにベッド神という言葉を聞いた気がする。


 そこへ、朝の買い出しに行っていたらしいエレンとシリルが到着する。


 珍しくティアと零も一緒だった。最近この二人は武器の状態だったからね。


「ミカエラさん。大輝さん。何かあったんですか?」


「ああ、今メウスの場所を聞き出しているところだ」


「その……。誰もいないですけど……」


 エレンの指摘で気付く。アランとリフナの姿がない。


 こんなことになるなんて……。私たちとしたことが……。


 それでも、大輝は問題ないという。血の匂いでわかるとのこと。


 お前は犬か! って叫びたくなるけど、我慢することにした。


「血の方向からして。王宮付近だ。ミカエラ。その近辺にいそうな場所はわかるか?」


「うーん」


「大輝さん。もしかしたら、結晶がたくさんあるところかもしれません。そこには、生命の大結晶もあります」


「お、シリルやるな! んじゃ、朝飯食って早速向かうぞ!」


 そうして朝食を済ませた私たちは、セリンが教えてくれた坑道を目指し歩き出した。

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