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サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第4章 相棒

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第139話 極秘訓練と忘れられていた人

 エレンの特訓は約三十分か一時間くらい続いた。


 疲労をため込んだエレンは今、私の隣に座っている。


 対して、未だに体力が有り余っている大輝は、レヴェルさんと向かい合っていた。


 これから何をするのか。最初はわからなかったけど……。


「レヴェル、例のやつは持ってるか?」


「うむ。これであろう」


 レヴェルさんが取り出したのは、一本の鎖。


 そして、大輝もサブの剣を握った。


「昔の時と同じようにグルグルにな」


「承知した。失礼する」


 レヴェルが大輝に近づいていく。


 そして、足の方から腕、肩までを鎖で巻き付けていった。


 完全に拘束された身体。この状況では、大輝は身動きが取れない。


 これをどうしようというのか。


「大輝だいじょ……」


「レヴェル、今日は特別メニューに変更してくれ」


「承知」


 大輝は口を開けた。そこにも鎖を入れていく。


 呼吸まで困難な状態にして、完全に追い込み過ぎている。


 そもそも、鎖が胃に入れば、胃酸で溶けてしまう。


 レヴェルは、どんどん入れていく。最終的には、塊までもを飲み込んだ。


「準備はいいぞ!」


「では始める」


 空間全体に魔力が発生する。鎖が赤く染まっていく。


 熱を帯びている? やけど案件?


 大輝の顔色は少しずつ変化を始める。なんだか、苦しそうだ。


「大丈夫……なのかな?」


「うむ。問題ない。ダインは昔こういう訓練を好んでいてな」


「好んでいた?」


「うむ。これを乗り越えて、最強に至ったと言ってもいい。どんな状況でも。それは、いかなる拷問だとしても」


 私は大輝を見守った。だけど、そこに大輝の姿はない。


 どこにいるのか探す。瞬間、誰かの手が肩に触れる。


 振り返るとそこには……?


「大輝!?」


「驚いただろ? レヴェルあれ簡単すぎる」


「そうか、ではさらに難易度を上げるとしよう」


 これのどれが感嘆なのか。大輝の基準がわからなすぎる。


 そもそも、飲み込んだ鎖はどこへ行ったのか。


 どう見ても高温の鎖。それをどう対処したのか。


 死んでもおかしくなかった。だけど、大輝を見れば無傷。


 ただ、右手に握られた剣に刃こぼれを見つけた。


「大輝。どうやって脱出したの?」


「ん? 簡単に、鎖を全部粉砕しただけだが……」


「ふ、粉砕……」


 それって、簡単にできるものじゃないよね!


 どうやれば、粉砕できるの。しかも一瞬で……。


 本当に大輝の普通がわからない。


 大輝はその種明かしをするため、レヴェルさんに追加の鎖を用意させた。


 本日二度目の拘束。レヴェルさんは、慣れた手つきで完了させる。


「今回は飲み込まないでおく」


「承知」


「その……。飲み込むって……」


 私は大輝に問い掛けた。


「かなり痛いぞー? レヴェルの鎖は棘付きだからな。ま、その痛いのが好きなんだけどよ」


 いや、そういう問題じゃない気が……。


 その後も大輝の身体が巻いていかれて、完全に棒状態になった。


「よし、準備完了。カウントするぞ、三、二、一……」


 私は魔眼を発動する。鎖の方を見るとヒビが入っている。


 そして、まるで砂になったように粉砕された。


 やっぱり、仕組みがわからない。


「ふぅ。じゃ、これでウォーミングアップは終わりだな」


「大輝。まだやるの?」


「おん。全然疲れてないな……」


 大輝はまだ汗ひとつかいていない。


 そもそも、彼は汗をかくことを忘れている。


「ほんと、大輝は昔から疲れ知らずだよね」


「まあな……。体育会系といってはそうだけど……。不向きだったからな」


 そういえば、中学の部活で剣道をした時に相手を骨折させたんだっけ。


 野球部では、バットが折れる惨事。他にも黒歴史が多い。


 そんな中で、彼は帰宅部に入ったと思った。


 まあ、それが一番よかったのかもしれない。


「大輝。運動部系あまり馴染めなかったみたいだしね」


「だな。俺としては普通だったが……。力加減が難しいんだ」


「それ、昔もそうだったの?」


「おうよ! なんせ最強の殺し屋だからな!」


 そこ誇るところなんだ。殺し屋って、ものすごく悪い人なんだけど……。


 ただ、それだけ当時の肩書を気に入っていたんだと思う。


 それならそれでいいんだけど、きっと日本だったら捕まってるね。


 むしろ、こっちに来て正解だったんだと思う。


「よし、レヴェル次だ」


「うむ」


「エレン、剣をレヴェルに貸してやってくれ」


「は、はい! わかりました!」


 エレンは、レヴェルさんにゼノンレグスレイブを貸す。


 剣を構える姿は、まるで剣聖のよう。


 かっこよく、ものすごく型にはまっていた。


「よし、来い!」


「容赦せんぞ!」


「それでこそ、俺の相棒だ!」


 ガキン! 鈍い音が響く。二人の攻防は約二十分続いた。


 どちらも手加減無し。に見えて、大輝は清々しそうな顔をしている。


 本当に身体を動かすのが好きなようで。


 そこから、大輝が反撃に入った。


 一歩、一歩と後ずさる。そこから、一気に踏み込むと……。


「ここだ!」


 大輝はレヴェルさんの脇腹目掛けて剣を振った。


 これで決着。と思ったら、レヴェルさんの剣が大輝の身体を貫いている。


「我の勝ちだ」


「クソ! レヴェル、いい剣筋だった」


「其方もであろう。しかし、本領発揮には時間がかかるな……」


「だな」


 これで、今日の訓練は終了。


 みんなで水を飲む。そんな時だった。


「なんか、血の匂いがするな……」


「血の匂い? 私はわからないけど……」


「この方向は……。王宮の方か……」


 王宮。あ!


「メウス! メウスが帰ってきていない!」


「そうか。メウスの血か……」


「そうしている場合じゃないって! 大輝、エレン、レヴェルさん! 明日からメウスを探す準備をするよ!」


 そうだ。メウスのことをすっかり忘れていた。


 これは大輝の手柄だと思う。


 急いで宿屋に向かうと、運動後の食事をした。


 まあ、大輝は相変わらず私の血だったけど。


 明日からは、メウスのことを考える。そう心に決めて、眠りについた。

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