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サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第4章 相棒

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第138話 真夜中の公園

 その日の夜。私たちは街を歩いていた。


 夜の世界は少し冷たく、なんか物寂しい。


 大輝としては鍛錬にピッタリの時間のようで……。


「昔な……ここでゼノンに出会ったんだ」


 過去を語りながら歩いていた。


 残念ながら今レヴェルさんは寝ていて、武器の姿。


 大輝の身長と同じ大きさだからか、剣先が地面につきかけている。


「大輝。その剣大丈夫なの?」


「ま、問題ないだろ」


「いや、そういうことじゃ……ないと思うけど……」


 それよりも、この剣の重さが知りたい。


 普通に持っている大輝は、多分考えたこともないんだろうけど……。


「大輝さんはすごいですね」


「何がだ?」


「いえ、何でもないです。僕も自分のことを理解できてないので、大輝さんのことを理解したくても、難しいと思いますし……」


 エレンは少し顔をピンクに染めていた。


 多分見間違いだとおもうけど……。そんな感じがする。


 剣の実力では、たしかに大輝が上だった。


 エレンの目標はきっと大輝を超えること。


 しかし、それは自分の実力に合っているのか。それが不安なんだと思う。


「まあ、俺もまだまだ剣筋悪いけどな……」


「それでも、大輝さんは強いですよ。動きにも無駄はないし……」


「前回の訓練でのやつだろ。あれは、たまたまだ」


 剣が苦手な私にはわからない。それでも、二人は楽しそうだった。


 人のいない道を進む。大輝についていけば、どこへでも行ける。


 前世の記憶は、少しずつ、たしかに戻ってきているらしい。


 それを、元々血縁だった私が喜んでいいのか悪いのか。


 自分の感情が、シーソーゲームのように上下している。


 この異世界にはシーソーなんてものはないけど……。


「着いたぞ!」


 大輝が案内してくれた場所は、小さな公園だった。


 とはいえ、遊具と言えるものはあまりない。


 先ほど言ったシーソーも置いてなかった。


「これだけ広ければ問題ないな……」


「特訓ですね!」


 私は今行動している三人の中でたった一人の女性。


 目の前の男二人にはついていけない。


 だけど、ただ見学するのもそこまで退屈じゃない。


 前世でも、弟たちのチャンバラごっこは見ていた。


 毎日傷だらけで手当てを任されていたっけ。


「おーい。レヴェルー?」


 大輝がレヴェルを起こそうと叩いている。


 そこまでしなくてもいいのに……。


 本人に確認すると、どうもこだわりがあるようで……。


「ったく。こいつも……」


「大輝。口が悪いよ」


「し、仕方ないだろ。俺自身感覚を戻したいんだ」


「わかるけどー」


 それから、数十回近く剣を叩く大輝を見守る。


 何も起きない。だけど、ようやく目を覚ましてくれたらしく。


 大輝はダインレヴェナントを持って構えた。


 本当に大きい剣。どこが中心となって支えているのか、わからない。


「やっぱり、レヴェルはこうじゃなきゃな」


 そこから、大輝は剣のサイズを調整した。


 少しだけ短くなり、バランスがよくなる。


「大輝さん。よろしくお願いします!」


「おうよ!」


 エレンが剣を構え、大輝に接近する。


 まずは大輝が守備。エレンが攻めのようだ。


 それでも、少し違いが分かった気もする。


 エレンの動きの無駄が少し減っていた。


「前よりは良くなったな」


「ありがとうございます!」


「んじゃ、これでどうだ!」


 大輝は守りに使っていた大剣を少しだけずらす。


 すると、エレンの剣が当たらなくなった。


 これは魔法? だけど、魔力を感じない。


 ではこれは一体……。


「大輝さん。なんで当たらないんですか?」


「自分で考えろ」


「あ、はい!」


 大輝はエレンの攻撃を避けるように、剣でガードしていく。


 その動きはものすごく滑らかで、隙という隙を見せない。


 一瞬。大輝の動きが止まった、そこを狙う剣先が、大輝の頬を刺す。


「お、やるな」


「偶然ですよ」


「あはは、偶然で片づけるくらいならまだまだだな。必然だと思えるくらいになれ」


「はい!」


 大輝とエレンの笑顔。それを見ていると、やっぱり前世の風景を思い出す。


 私がいなくなりさえしなければ、日本でも見れていただろうか。


 そう考えると、なんか虚しい。空虚に取り残されたようで……。


 二人は休憩すると言って、ベンチに来た。


 ここのベンチは木製で、形状は違うけど地球と同じだった。


 少しだけ豪奢な見た目。機械都市だからこその歯車の彫刻。


「昔はこんなのなかったな」


「それってどういうこと?」


「あ、ああ。昔はベンチすらなかったんだ。みんな地面に座ってたな」


 前世含め、ベンチというものを知ったのは日本に来てから。


 一応、似たようなものもあったらしいけど……。


「椅子って言うよりは切り株が近かったな、足も直角にはできなかった」


「そうなんだ」


 そこを直角と表現するのは、そもそも大輝の語彙が少ないからだろう。


 簡単に負担のない座り方ができないものだった。と言えばいいのに……。


 ほんと、角度とか気にする準理系男子。数学ができないのに不思議だ。


 休憩が終わった二人は、再び剣を交えた。


 私だけ座って見る。それだけでも、楽しい。


「エレン、もっと来い!」


「で、ですが……!」


「俺には本気で来い! じゃないと、戦場で殺されるぞ!」


 こんな状況でも、兄は兄だった。


「エレン! 頑張って!」


「は、はい! ミカエラさん!」


 初めて会った時よりも、エレンは確実に強くなっている。


 だけど、私はまだ恐怖でいっぱいで……。


 ゼレスリシア北の魔王リザークの時はよかった。


 しかし、今の私には根拠がないと、殺すことができない。


 今後、どうしていけばいいのか。私は迷宮に入りかけていた。

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