第138話 真夜中の公園
その日の夜。私たちは街を歩いていた。
夜の世界は少し冷たく、なんか物寂しい。
大輝としては鍛錬にピッタリの時間のようで……。
「昔な……ここでゼノンに出会ったんだ」
過去を語りながら歩いていた。
残念ながら今レヴェルさんは寝ていて、武器の姿。
大輝の身長と同じ大きさだからか、剣先が地面につきかけている。
「大輝。その剣大丈夫なの?」
「ま、問題ないだろ」
「いや、そういうことじゃ……ないと思うけど……」
それよりも、この剣の重さが知りたい。
普通に持っている大輝は、多分考えたこともないんだろうけど……。
「大輝さんはすごいですね」
「何がだ?」
「いえ、何でもないです。僕も自分のことを理解できてないので、大輝さんのことを理解したくても、難しいと思いますし……」
エレンは少し顔をピンクに染めていた。
多分見間違いだとおもうけど……。そんな感じがする。
剣の実力では、たしかに大輝が上だった。
エレンの目標はきっと大輝を超えること。
しかし、それは自分の実力に合っているのか。それが不安なんだと思う。
「まあ、俺もまだまだ剣筋悪いけどな……」
「それでも、大輝さんは強いですよ。動きにも無駄はないし……」
「前回の訓練でのやつだろ。あれは、たまたまだ」
剣が苦手な私にはわからない。それでも、二人は楽しそうだった。
人のいない道を進む。大輝についていけば、どこへでも行ける。
前世の記憶は、少しずつ、たしかに戻ってきているらしい。
それを、元々血縁だった私が喜んでいいのか悪いのか。
自分の感情が、シーソーゲームのように上下している。
この異世界にはシーソーなんてものはないけど……。
「着いたぞ!」
大輝が案内してくれた場所は、小さな公園だった。
とはいえ、遊具と言えるものはあまりない。
先ほど言ったシーソーも置いてなかった。
「これだけ広ければ問題ないな……」
「特訓ですね!」
私は今行動している三人の中でたった一人の女性。
目の前の男二人にはついていけない。
だけど、ただ見学するのもそこまで退屈じゃない。
前世でも、弟たちのチャンバラごっこは見ていた。
毎日傷だらけで手当てを任されていたっけ。
「おーい。レヴェルー?」
大輝がレヴェルを起こそうと叩いている。
そこまでしなくてもいいのに……。
本人に確認すると、どうもこだわりがあるようで……。
「ったく。こいつも……」
「大輝。口が悪いよ」
「し、仕方ないだろ。俺自身感覚を戻したいんだ」
「わかるけどー」
それから、数十回近く剣を叩く大輝を見守る。
何も起きない。だけど、ようやく目を覚ましてくれたらしく。
大輝はダインレヴェナントを持って構えた。
本当に大きい剣。どこが中心となって支えているのか、わからない。
「やっぱり、レヴェルはこうじゃなきゃな」
そこから、大輝は剣のサイズを調整した。
少しだけ短くなり、バランスがよくなる。
「大輝さん。よろしくお願いします!」
「おうよ!」
エレンが剣を構え、大輝に接近する。
まずは大輝が守備。エレンが攻めのようだ。
それでも、少し違いが分かった気もする。
エレンの動きの無駄が少し減っていた。
「前よりは良くなったな」
「ありがとうございます!」
「んじゃ、これでどうだ!」
大輝は守りに使っていた大剣を少しだけずらす。
すると、エレンの剣が当たらなくなった。
これは魔法? だけど、魔力を感じない。
ではこれは一体……。
「大輝さん。なんで当たらないんですか?」
「自分で考えろ」
「あ、はい!」
大輝はエレンの攻撃を避けるように、剣でガードしていく。
その動きはものすごく滑らかで、隙という隙を見せない。
一瞬。大輝の動きが止まった、そこを狙う剣先が、大輝の頬を刺す。
「お、やるな」
「偶然ですよ」
「あはは、偶然で片づけるくらいならまだまだだな。必然だと思えるくらいになれ」
「はい!」
大輝とエレンの笑顔。それを見ていると、やっぱり前世の風景を思い出す。
私がいなくなりさえしなければ、日本でも見れていただろうか。
そう考えると、なんか虚しい。空虚に取り残されたようで……。
二人は休憩すると言って、ベンチに来た。
ここのベンチは木製で、形状は違うけど地球と同じだった。
少しだけ豪奢な見た目。機械都市だからこその歯車の彫刻。
「昔はこんなのなかったな」
「それってどういうこと?」
「あ、ああ。昔はベンチすらなかったんだ。みんな地面に座ってたな」
前世含め、ベンチというものを知ったのは日本に来てから。
一応、似たようなものもあったらしいけど……。
「椅子って言うよりは切り株が近かったな、足も直角にはできなかった」
「そうなんだ」
そこを直角と表現するのは、そもそも大輝の語彙が少ないからだろう。
簡単に負担のない座り方ができないものだった。と言えばいいのに……。
ほんと、角度とか気にする準理系男子。数学ができないのに不思議だ。
休憩が終わった二人は、再び剣を交えた。
私だけ座って見る。それだけでも、楽しい。
「エレン、もっと来い!」
「で、ですが……!」
「俺には本気で来い! じゃないと、戦場で殺されるぞ!」
こんな状況でも、兄は兄だった。
「エレン! 頑張って!」
「は、はい! ミカエラさん!」
初めて会った時よりも、エレンは確実に強くなっている。
だけど、私はまだ恐怖でいっぱいで……。
ゼレスリシア北の魔王リザークの時はよかった。
しかし、今の私には根拠がないと、殺すことができない。
今後、どうしていけばいいのか。私は迷宮に入りかけていた。
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