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サイレンスキラー 〜動物すら殺せない転生公爵令嬢は、やがて救済の暗殺者となる  作者: 八ッ坂千鶴
第4章 相棒

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第137話 魂を繋ぐ者

 仲間にレヴェルさんが加わって、セリンの家は賑やかになった。


 最近の大輝とレヴェルさんは、昔話をよくしている。


 何より、私が知らないことがどんどん出てくることで、毎回大輝が顔を赤くしていた。


 どうやら、本人も気づいていない黒歴史が沢山あるようで……。


「それでだな。ダインはいつも失敗を繰り返すんだ」


「例えば?」


「そうだな……。よく女にフラれていた」


「あー。それ私も知ってるかも」


 大輝は女相手をするのが苦手だった気もする。


 そもそも、女に好かれる美形男子ではあるんだけど、中身がなぁ……。


 ちょっと雑っぽいっていうか……。扱いが下手っていうか……。


 まあ理想がデカすぎるんだよね……。料理出来ない癖に……。


 その代わり男友達が多かったのは、きっとややオタク気質だったからかもしれない。


「まあ、俺が本格的に興味持ったのは……」


「ちょっと。それ危ないこと言おうとしてない?」


「いや、まだ何も言ってねぇって」


 本人はヘラヘラしているけど、どこかで恥ずかしがっている。


 その様子を、レヴェルさんが父親のような顔で見守る。


 見た目は美青年。だけど、どこか風格がある。一番のしっかり者はレヴェルさんだと思う。


「ダインはな。非常に面白い」


「ってわけだ」


 レヴェルさんは話し疲れたのか、人の姿から剣に変わる。


 それにしても、ものすごく大きな剣だった。


 大きさは大輝の身長とほぼ一緒。


 存在感があるからか、相当目立つ。


「レヴェルが復活したってことは、そろそろ過去の仲間を集める頃合いだな」


「例えば?」


「そうだなぁ……。ゼノンだったか」


 英雄ゼノン。エレンが持っている剣。


 私は彼を見た。すると、エレンは『すぐ持ってきます』と言ってどこかへ行く。


 その間、大輝はレヴェルさんをずっと眺めていた。


 レヴェルさんもきっと久しぶりに動いたと思う。


 歩いている間、何度も背伸びをしていたから。


 セリンの家の前では、いろんな人が覗き込んでいる。


 私としては、それが気になって仕方ないんだけど……。


「お前は人気者だなぁ。みんなレヴェルが見たいってよ」


 大輝が独り言のようにつぶやく。


 そして、刃の方へ手をやった。


 指が切れていく。だけど、血が出る様子がない。


 大輝の血は全て、レヴェルさんに吸収される。


 それは本当のことだったらしい。


「大輝。血がなくて大丈夫なの?」


「ん? もう元に戻っているが……」


「でも、血が流れて……」


 彼は指を切った瞬間に吸収されていると説明してくれる。


 そういうことかと、私は納得できた。納得してはいけないんだろうけど……。


「持ってきました!」


「おかえりエレン。ちぃと見せてくれ」


「はい!」


 大輝はエレンからゼノンレグスレイブを受け取る。


 剣の上に展開される魔法陣。そこから、一つの石を取り出した。


 考え込む彼を見て、何か引っかかることがあったのか気になってしまう。


 それでも、大輝は細かい部分まで確認をしていった。


「これはマズいな……」


「え?」


「いや。この前は聞き流していたが、メウスがこの剣を〝二代目〟って言ってただろ? その原因がこれだ」


 大輝は取り出した石を見せてくる。純白に輝いているので、問題ないと思うけど。


 大きさは手のひらのサイズよりも小さい。これが何を示しているのだろうか。


「これはゼノンの魂石。だが、俺が精錬したときよりも劣化が進んでいる。このままだと……」


「ゴクリ……」


「この剣は完全に修復できなくなる」


 大輝が言うなら間違いない。それに、『俺が精錬した』と言っただけで確定。


 だけど不思議に感じる。レグスレイブができた時の記憶、それが戻った。


 やはり、レヴェルさんが戻ってきたのが一番なんだと思う。


 今の大輝には、どれほどの記憶が宿っているのか。


 きっと、数十年。いや、ドラゴニュートだったということを考えれば何百年。


 ものすごく、長い長い日々を思い出しているんだと思う。


「大輝さん。ゼノンさんの魂石が劣化するって、そんなに大変なことなんですか?」


「ああ。非常に厄介だ。俺の剣は俺自身の魂石を使っている純正。対して、ゼノンレグスレイブは俺の魂石とゼノンの魂石を複合して作ったもの」


「つまりは……」


 エレンがなにかを察したように、小さくつぶやく。


「そういうこった」


 どちらか片方が無くなれば、もう作り直すことはできない。


 大輝はそういうことを言いたいのだろう。


 一人考え込む彼を見て、物の寿命を知った。


 丈夫なものでも、いつかは壊れてしまう。


 それがどんなものであっても。


「この剣にはメウスさんの魂石が含まれていると、聞いたんですけど……」


「ああ、それが原因かもしれないな」


「え?」


 メウスの魂石が原因とはどういうことだろうか。


 大輝によれば、他人の魂石を使う時には必ず相性を見る必要があるらしい。


 それは、レヴェルさんが血で持ち主を判断しているのと同様とのこと。


 剣が気に入るものでしか、強くなることはない。


「エレンはこの剣に選ばれたんだったよな」


「は、はい! まだ、実感はないですけど……」


「ちょっと色々確認させてくれ。相性を確認する」


 大輝はさっきから立ちっぱなしのエレンに近づく。


 そして、指を首元に当てた。


「ブラドレア」


 血を採取して、詳しくチェックを開始する。


 最終的には大輝の身体に取り込まれた。


「近いな……」


「はい?」


「エレンの血は、ゼノンのものに限りなく近い。可能性としては近い」


 どうやら大輝は期待を感じたらしい。


 多分私が血を飲んでも理解はできないと思う。


 だけど、大輝はその些細な微小な違いをも見抜く。


 大輝は、前世に近づいてしまった。


 それでも、私の兄なのは変らない。


「僕の血がゼノンさんの血に近いっていうことは……」


「エレンの血が成熟して、よりゼノンに近づけばワンチャンあり得る」


 賭けに出ることにした大輝は、魂石を剣に戻した。


 彼によれば、まだしばらく使っても刃こぼれは問題ないそうで。


 私は今の大輝を誇っていいのかわからない。


 そんな彼の剣は、真っ赤な刃を輝かせて佇んでいた。

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― 新着の感想 ―
大輝パートもいいですね。ミカエラがお兄ちゃんとして見ているところも好きです。メウス推しではありますが、大輝に焦点をあてた今の章も好きです。
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